Skip to content

八弥子編 注釈


奈岐編と異なり、割と未整理な状態。
いずれ手直ししたいと考えている。


 

  4-1-1
状況
動揺する鼎。気持ちの整理がつかぬまま、廊下に立ち尽くす。
八弥子が現れ、部屋へ誘う。悩みがあるなら話を聞くという。
鼎の様子から、奈岐と何かあったのかと問う。ぼかしながらも答える鼎。
鬼子にどんな秘密があろうとも、奈岐は奈岐だという八弥子。
鼎の手を取り、立ち上がる八弥子。鼎と八弥子、奈岐の部屋へ。
奈岐、鼎に様子を見に行く所だったと言う。何故八弥子がいるのか、
目で問う奈岐。神住との取引を語る奈岐。神住の由布への偏愛に対し
口を閉ざす事と引き換えに、処分を最も軽いモノにさせたという。奈岐を諌める鼎。震える奈岐。
八弥子に八つ当たりする奈岐(⇒本当は妬いていただけ、と後に判る)。
八弥子のあやめた人数を口にし、詰る奈岐。奈岐の頬を叩く鼎。
八弥子と神住に謝ろうと言う鼎。部屋を飛び出す奈岐、目には涙を浮かべる。追いかける鼎。八弥子は寮内を探す事に。
その前に、奈岐の言葉が気になるかと問う八弥子、無理に話してもらう事じゃない、と、鼎。
時間
二十八日目・
場所
寮・廊下 ~ 寮・八弥子の部屋 ~ 寮・奈岐の部屋
設定
・八弥子がこれまで手に掛けた人の数は、二十人以上
・八弥子は薄々勘付いていた、見鬼について
伏線(大)
 
伏線(小) 八弥子の力、境遇 / 八弥子と奈岐

八弥子“「ねえ、カナカナ、鬼子にどんな秘密があったとしてもさ、ナギっちはナギっちだよね?」

「他の人の話に左右されてたら、カナカナまでこの島の人達と同じになっちゃうよ?」

鼎「同じ……ですか?」

八弥子「鬼子ってだけで変な目で見ちゃう。それって寂しいよ?」”
テキスト
推論 八弥子は見鬼を知っているか

“八弥子さんは見鬼のことを知っているんだろうか?

理事長は学園でもごく一部の人間しか知らないと言っていた。

ただ……そのごく一部に含まれていそうな遠山先輩も知らない様子だったし、八弥子さんが知っている可能性は低そう。”

鼎への想い / 八弥子の力、境遇 / 八弥子と奈岐 / 見鬼

八弥子“「二人ともストップ! カナカナもナギっちも、ちょっと落ち着こうよっ」

そう言われて、自分が熱くなっていることに気付いた。

奈岐は窓を背にしたまま震えている。

恐怖と悲しみが入り混じったような瞳が揺れていた。

鼎「奈岐……ごめん、言い過ぎた」

奈岐「…………」

奈岐が息を呑んだ後、ギッと奥歯を鳴らした。

揺れる瞳はそのままに、どこか怒りの火が宿る。

そして、それが向けられたのは私ではなく、仲裁に入った八弥子さんだった。

「禰津、お前からも鼎に何か言ったのか?」

八弥子「何かって……ナギっち?」

奈岐「私について知っていること、知らないこと、鼎に話したのか?」

八弥子「えっ……何の話? ナギっち、落ち着いて、なんでそんな話になってるの?」

奈岐「私は落ち着いている。この目でお前を視ているぞ」

奈岐が大股で歩み、八弥子さんに詰め寄る。

「卑怯なやり方をした私に鼎が怒っている、そう考えたな」

八弥子「えっ?」

奈岐が理事長と同じことを八弥子さんにしていた。

その考えを覗き見て、言葉にして――晒す。

奈岐「禰津、鼎にいったい何を言った?ここに来る前、何をして、何を話した?」

八弥子さんを捉える奈岐の両目が細くなった。

「……私と鼎の間に何かがあったから、間を取り持つ?随分とお節介なことを考えられるな」

八弥子「…………」

八弥子さんが何も話していないのに、奈岐が考えを口にしていた。

見鬼のことを知らない八弥子さんは驚きを隠せず、まばたきを繰り返す。

鼎「待って、奈岐。どうして八弥子さんにそんなこと言うの」

その光景が八つ当たりに思えて私は声をあげていた。

奈岐「……鼎は奈岐のことが嫌いになった?」

振り返らずに奈岐が私に問いかける。

鼎「奈岐……?」

奈岐「奈岐は鬼だ。人の心を覗く鬼だから……」

鼎「……そんなことないよ」

奈岐「でも、事実だ。鼎は奈岐に会うことを怖がった」

奈岐が知っているはずのないことを言葉にしていた。

まさか八弥子さんの考えを読んだ……?

奈岐「……禰津、勘付いてはいたな?」

奈岐は再び八弥子さんに向かっていた。

八弥子「薄々……だけどね。でも、ナギっちはナギっちだし、ヤヤもカナカナも今まで通りだよ?」

奈岐「でも、奈岐は違う……」

奈岐は一度まばたきをし、再び鋭い視線で八弥子さんを見る。

「鬼子のことは知られたのに、お前は何も知られていないな。それを言葉にされても、まだそんな綺麗事が言えるか?」

八弥子「ナギっち、綺麗事とか、そんなんじゃないよ」

奈岐「じゃあ、聞いてやる」

「禰津八弥子、今までに何人殺した?」

八弥子「…………」

耳を疑うような質問が奈岐から投げかけられていた。

何人……殺した?

八弥子さんが?

奈岐「――二十人までは数えたな、そこで考えるのを止めた。それは正確な数を思い出すことが出来ないからだ」

八弥子「ナギっち……ホントに頭の中を覗けるんだね」

苦笑混じりに八弥子さんが答えるけれど、その声音は震えていた。

怒りでも恐怖でもなく……どこか悲しげに。

奈岐「巫女の力に特化しすぎた血の定め、か……お前も随分と苦しんでいるようだな?」

「禰津、教えてやる。お前が殺した奴らの顔を忘れても、殺された者は、お前の顔を霊魂となっても忘れない」

「そうして呑気に過ごしている姿を見たら、さぞ恨めしいだろうな?」

八弥子「……それは……分かってる……」

八弥子さんの視線がつま先に落ちたタイミングで、奈岐の手が素早く動いた。

八弥子さんの首を両手で掴み、締め付けるようにして――。

鼎「奈岐っ!?」

奈岐「両腕をへし折られる覚悟だったが……獣としての牙が折れたか、それともわざと避けなかったか」

八弥子「っ……」

本気で首を絞められているのか、八弥子さんが苦しげに呻く。

奈岐「――後者か」

奈岐が手を離し、平静な様子で呟いた。

静かな部屋に八弥子さんの咳き込む音が響く。

そんな様子をただ見ていることが出来なくて、私は気付くと奈岐に詰め寄っていた。

鼎「奈岐っ、どうして八弥子さんにそんなことするのっ!」

奈岐「コイツは生き血をすするような獣だ。人の皮を被った獣だ。そういう家に生まれている」

「これでも、今まで通りなんて綺麗事を言うつもりか?」

喉元を抑えた八弥子さんが頭を小さく振る。

八弥子「ナギっち、そんなこと言ったらダメだよ? せっかくカナカナと友達になれたのに……」

八弥子さんの家がどういうところか分からないけれど、今は考えなくても答えが見えていた。

鼎「奈岐、歯を食いしばって。 ちゃんと言ったからね」

警告の後、私は平手で奈岐の頬を打っていた。

パンッ――と乾いた音が鳴り、奈岐が目を瞬かせる。

奈岐「…………」

鼎「遠山先輩のこともだけど、八弥子さんにだって……人の気持ちを無視するようなことしちゃダメ」

「奈岐、八弥子さんと遠山先輩に謝ろう?」

私に叩かれた頬をさすると、奈岐は視線を落とす。

そして、僅かに首を振るう。

奈岐「…………っ……」

奈岐の肩が大きく震え、声を詰まらせる。

それと同時に奈岐が床を蹴っていた。

鼎「奈岐っ!?」

奈岐は長い髪を揺らし、振り返らずに部屋から飛び出していく。

開け放たれたドアが半開きになり、僅かに軋む音を立てる。

鼎「…………」

八弥子「……ナギっち、泣いてた」

飛び出した奈岐を心配して、八弥子さんが呟く。

鼎「八弥子さん、奈岐に言われたこと……平気なんですか?」

八弥子「あはは……平気じゃないけど、いつか言われるって思ってたし、全部ホントのことだからね……」

どこか弱々しくも苦笑混じりに八弥子さんが言う。

全部、ホントのこと――。

例えそうだとしても、奈岐があんな風に八弥子さんを責めていい理由になんてならない。

鼎「私、奈岐を追いかけます」

八弥子「えっ、カナカナ? ちょ、ちょっと――」

私が奈岐の友達なら、彼女を取っ捕まえてでも、ちゃんと謝らせないといけない。

そうでもしないと、彼女の居場所がどこにも無くなってしまう気がした。

廊下に出てみるが、もう奈岐の姿はどこにも無かった。

手すりから身を乗り出すようにして、ロビーを見下ろす。

入口の扉は閉じられたままで、ロビーには人気が無い。

外には出ていない?

それとも、いつもの空き部屋から外に出た可能性もある。

八弥子「カナカナ、寮の外はヤヤが捜してみるよ」

奈岐の部屋から出てきた八弥子さんがそう言ってくれた。

鼎「それ、逆でお願いします。八弥子さんパジャマなんで」

自分は私服です、とパーカーを両手で摘んで広げてみせる。

八弥子「でも、外は危ないよ?」

鼎「危ないのは慣れっこですよ」

八弥子さんに笑って見せてから周囲をぐるりと見渡す。

鼎「連絡手段が無いんで、朝には八弥子さんの部屋に行きます。それまでに奈岐が見つかってなかったら、また考えます」

どこを見ても、この階には人気を感じない。

やっぱり奈岐は外に出た? それとも私が見落としている?

八弥子「カナカナ、ナギっちがヤヤに言ってたことだけどさ……」

鼎「……?」

八弥子「カナカナは気になる?」

何人殺した――そんな質問が投げかけられる八弥子さんの家。

気にならないといえば嘘になるけど、そう言ってしまえば、奈岐に思考を誘導されたみたいに思える。

鼎「その話をされた時、八弥子さんは辛そうな顔をしていました」

「だから、無理に話してもらうようなことじゃないと思います」

八弥子「カナカナ……うん、そっか……」

鼎「それじゃあ、行ってきます。寮内はお願いします」

八弥子「――分かった、まっかせて!」

八弥子さんに小さく手を振ってから、私は廊下を走っていく。”

⇒後に判るが、奈岐は八弥子に妬いていた
脚本
⇒八弥子の核心に鋭く切り込む事で、読み手の関心を一気に八弥子へと引き寄せた
演技
 
演出  
作画
 
補足
 




  4-1-2 4-1-3
状況
奈岐を探すも、徒労に終わる。
寮の玄関に座り込んでいた八弥子と話す。
友達だから怒っているのだという鼎、なだめる八弥子。
神住が現れる。奈岐の事で謝る鼎。火事と落石の理由を話す鼎
何故そこにいたのか問う神住、焦る鼎、フォローする八弥子。
奈岐が言った事(取引)を取り下げるよう頼む鼎、
どんな処分でも受けるという。奈岐が知ってること(神住の偏愛)を
口外しないともいう鼎。酌量の余地はあると神住。
謹慎処分が下るとの事。
由布と自分の事は忘れて欲しいという神住。応じる鼎。
午前中に処分の通達がなされる、と、神住。登校する神住。
鼎に休憩するようにと、八弥子。渋る鼎。諭され、
八弥子と共に朝食にする鼎。
八弥子、登校。鼎、自室へ、由布と入れ違いになる。
鼎、ベッドに横になる
目を覚ます鼎。葉子によって
課題が届けられている事に気が付く。
奈岐を探しに行く鼎。
島の北を目指す鼎、足跡を見つける。
森の奥深くには、岩山があり、麓には洞窟があった。
二人分の足跡故、奈岐のものではないが、
手掛かりを得る為に奥へ進む鼎。
穢れのような気配を感じ、
鉱石に何かを見出しかける鼎。
入口から末来と櫻井が入って来る。
鼎、末来に諭され頭を撫でられる。
神社に寄り、奈岐と話してくるという末来。
別れ際に鼎の髪をとかす。鼎を櫻井に頼む末来。
末来に後で学園長室へ来るように言う櫻井。
櫻井に質問し、その度に小言を受ける鼎。
それを受け流し、寮へ
時間
〃 ~ 二十九日目・ 二十九日目・
場所
寮・廊下 ~ 森 ~ 寮前 ~ 寮・自室
寮・自室 ~ 寮前 ~ 森 ~ 祠
設定
  ・港は島の南側にある
・洞窟は、日の光が届かないように作られている
伏線(大)
  巫女の真実 (洞窟へ入った際に)

“それに、人を拒むような冷たさは、
穢れの気配に似た感覚だ。”

“鼎「不思議……こんな鉱石があるんだ」

自然と発光する石は身近な何かを連想させてくれる
けど、その正体まで思い出せない。”

巫女の真実 末来の真実
末来と櫻井の協力関係
末来の実力 親子関係
鼎の資質

櫻井“「あの様子では……
それほど長く持たないでしょう」

末来「そうだね。キミの読み通り、
反応していると考えていい」

どこか不安が混ざった学園長の声に対して、
末来さんはいつものように淡々としていた。

櫻井「しかし、まだ巫女の用意は調っていません。
他の対応策を考える必要が……」

末来「その他の手段が通じる状況だと思う?」

「…………」

末来「ボクに一案ある。
それを伝えたいところだったけど」

末来さんが言葉を区切った後――。

「盗み聞きは感心できないよ、鼎?」

しっかり隠れていたにも関わらず、
言い当てられてしまう。

鼎「……あはは」

頬を掻いてから、岩陰から立ち上がる。

櫻井「高遠さん、こんなところで何を?
今朝、謹慎処分を通達したはずですよ」

末来「待って。ボクから話すよ」

耳が痛くなる学園長の言葉を遮って、
末来さんが歩み寄ってきた。

「鼎、ここはどんな場所だと思う?」

鼎「どんな……ですか?」

末来「思ったことを言ってみるといい」

抽象的な質問に少し困りつつも、
考えながら口を開く。

鼎「ええと……普通の洞窟じゃないと思います。
外と中じゃ空気が違うように感じるんです」

末来「どんな風に?」

鼎「冷たくて……まるで穢れがいるような……
そんな感覚です」

私の答えを聞いた末来さんが息を漏らす。

末来「……危ないという認識はあったんだね。
でも、鼎はここへ入ってきた」

「鼎の感覚は正しい。だから、ダメだよ」

末来さんの視線はいつもと同じく優しいもの
だったけど、怒られていることぐらいは分かる。

こうして諭すような怒り方はお母さんに
そっくりで……姿もあいまってか、
その面影が重なってしまいそうだった。

鼎「……ごめんなさい」

末来「うん。次は気を付けるんだよ」

そして、末来さんの手が私の頭を撫でてくれた。

そんなところまでお母さんと同じで……
胸が締め付けられた。

「それでどうしてここに来たのかな?」

鼎「奈岐を捜して……」

末来「奈岐を? どこかへ行ったの?」

鼎「昨日の夜に飛び出したまま、戻ってこないんです」

櫻井「はぁ……向山さんも謹慎処分の
はずなのですが……」

学園長の重いため息が洞窟内に響いた。

末来「分かった。奈岐はボクが連れて帰る。
鼎はここから離れて、寮へ戻るといい」

さらりと末来さんがそんなことを言うので
耳を疑ってしまう。

鼎「連れて帰るって……
奈岐の居場所が分かるんですか?」

末来「うん、奈岐が隠れていそうな
場所は一つだからね」

鼎「一つ……それって、どこですか?」

末来「学園より北側に位置していて、
身を隠せそうな場所――ここ以外に
もう一つだけある。どこだと思う?」

ここ以外――この洞窟が例の祠だとすると。

鼎「神社ですか?」

末来「そうだよ。ボクはそこへ寄っていく。奈岐とも
少し話がしたい。学園長、鼎を頼めるかな?」

末来さんが学園長に振り返り、そう問いかけていた。

櫻井「……分かりました。片倉さんは
後で私の部屋へ来て下さい。
あなたの案を伺う必要があります」

末来「そのつもりだよ。それじゃあ、先に行くから」

最後に末来さんが私の髪を手で優しくとかしてくれる。

末来「ちゃんと部屋で待ってるんだよ、鼎」

鼎「あ、はい……」

末来さんが口元に笑みを残し、
洞窟を出口の方へ歩いて行く。”

櫻井“「……そうです。ここは織戸伏島で禁足地と
される場所、学生が無暗に立ち入ってはなりません」”

⇒自分が礎となる事を考えている末来さん

⇒ルート切り替え後の、伏線の素早い配置に注目
伏線(小)   葉子の実力

鼎“「あ……謹慎処分って書いてある」

三日分の謹慎処分を伝える旨と、
その横にメモが張り付けてある。

メモには綺麗な字で『気持ち良さそうに
寝ていたから、起こさないでおきました。
葉子先生より』と書かれていた。

寝入っていたからか、気配すら感じなかったよ……。”

⇒これは鼎の注意力より、
葉子の技量にあると思われる

祠 神社

“奈岐の話を思い出す限り、祭りで使う祠と、
誰も管理していない神社があるんだったかな?”
テキスト
八弥子の力、境遇 / 八弥子と奈岐 / 奈岐への想い

鼎“「……八弥子さんはあんなこと言われても、
やっぱり奈岐の味方なんですね」

八弥子「カナカナはナギっちの友達じゃないの?」

鼎「友達ですよ。だから、ちょっと怒ってるんです」

そう言いながら八弥子さんの側まで歩いて行くと、
不意に頭を撫でられてしまう。

八弥子「どうどう、カナカナ。カナカナが怒ってると、
ナギっちが帰って来られないよー?」

鼎「そうかもですけど……」

こうして撫でながらなだめられていると、
自分が子供みたいに思えてくる。

というか、実際に子供みたいな怒り方をしてるかもしれない。

鼎「……八弥子さんは怒らないんですか?」

八弥子「んー? なんで怒るの?」

私の頭を撫でたまま、顔を傾けられてしまう。

鼎「だって、酷いこと言われたじゃないですか。
あんまり口にして欲しくないようなこと……」

八弥子「カナカナ、なんだかヤヤの分まで怒ってない?」

鼎「それは……そう、かもしれないです」

八弥子さんが笑顔でいる分だけ厳しくないと、
自分にそう言い聞かせている気もした。

それに気付いたからといって、
すぐに怒りが静まってくれるわけもない。

鼎「でも、ちゃんと遠山先輩と八弥子さんに謝るまで、
私は奈岐に怒り続けますから」

八弥子「あはは、カナカナ、思ってたより頑固だねえ……」”
奈岐への想い

“謹慎といっても寮内は自由に歩けるらしく、
違反を重ねれば、停学や退学といった
不穏な単語も見当たらない。

思ったよりも緩い。多少のイレギュラーは
一度か二度ぐらいなら、目を瞑ってくれる――はず。

なんて考えるのは、
奈岐の悪癖がうつったかな……?

でも、休んで体力が回復したし、
奈岐を捜しに行く時間もある。

これだけの条件が揃っていながら、
大人しくしている選択肢を選べるほど
出来た人間じゃない。

鼎「よーしっ、放課後までに捕まえてやるっ」

声を出して気合を入れた後、謹慎処分
なんのその、私は奈岐を捜すために、
再び部屋から飛び出していく。

奈岐を放課後までに捕まえて、八弥子さん達の前に
突き出して――それから、ちゃんと謝ろう。もう一度。”

“奈岐がまだ私と友達でいてくれるなら、
見つけられる可能性を残していてくれるはず。”
脚本
   
演技
   
演出    
作画
   
補足
神住“「私と由布のことは、高遠さんも忘れて頂けると助かりますわ」”

⇒鼎に対する牽制
 







  4-1-4
状況
寮に戻ってきた鼎。末来と櫻井が祠にいた理由は聞けずじまい。
櫻井に謹慎中だと釘を刺される鼎、自室へ。櫻井、校舎へ。
課題に取り組む鼎、本土より進んでいる問題集にうなだれる。
由布が御花会から帰室。由布の着替えを眺める鼎。
由布、神住に呼ばれているという。鼎、由布を鈍感だという(神住の事)。
神住の元へ向かう由布。疲労から思わず眠ってしまう鼎。
八弥子が部屋に来る。末来が奈岐を捕まえたという。
奈岐、部屋に立てこもっているという。奈岐の部屋に向かう鼎達。
反応無し、奈岐を想う鼎と八弥子。とりあえず夕食に。
人知れず部屋を出る奈岐。夕食を終え、奈岐の分を持って行く。
葉子の話題で怯える八弥子。奈岐の部屋へ。返事無し、夕食を置いておく。
奈岐へ、また明日も来ると伝える鼎。奈岐におやすみ、と、八弥子。
何か方法を考えておくと、鼎。無理しないようにと、八弥子。課題もある為。
踵を返し、奈岐の部屋に再度向かう鼎。待ち続け、消灯の時間となる。
葉子の見回り。謹慎の身故、避けたい鼎。奈岐、鍵を開ける。
真剣な様子で、奈岐、鼎に勾玉を使わないで欲しいという。
鼎、応じるが、八弥子と神住に謝るように、と。早速八弥子の部屋へ向かう二人。
奈岐に対し気にしていないと、八弥子。八弥子、奈岐が妬いていた事を口にする。慌てつつ謝る奈岐。
ややあって、もふもふされることに。ようやく仲直りが出来た。
勾玉の事で先行きを心配する鼎。奈岐、翌朝に一人で神住に謝りに行く
時間
〃 ~ 二十九日目・夕 ~ 夜
場所
寮 ~ 寮・自室 ~ 寮・廊下 ~ 寮・食堂 ~ 寮・廊下 ~ 寮・奈岐の部屋 ~ 寮・八弥子の部屋
設定
・寮の三階に、鼎と由布・奈岐・八弥子・恵と縁子の部屋がある(⇒神住と真琴は分からない)
・寮内はペット禁止
伏線(大)
 
伏線(小) 葉子の実力

鼎“「もう一度、奈岐のところに行ってみましょうか」

八弥子「そうだねー。最悪、あのドア外しちゃう?」

鼎「外す? ですか?」

八弥子「ドーン、って!」

八弥子さんが両手を突き出す仕草の後、カラッと笑う。

鼎「八弥子さん、それ、先生に怒られますよ?」

八弥子「うっ……ヨーコ先生が出てくるのはゴメン」

すぐに手を引っ込めてしまう八弥子さんに私も笑みを零す。

鼎「ふふっ、八弥子さんって葉子先生が苦手なんですか?」

八弥子「に、苦手……じゃないよ……?」

と言うものの八弥子さんの声は上擦っていた。”
テキスト
八弥子と奈岐 / 奈岐への想い
八弥子の力、境遇

八弥子“「ナギっちはああ見えて怖がりだしね。特に人の感情とかそういうの」

鼎「見鬼、人の心を除く鬼……そう言ってましたね」

きっと見なくていい悪意も見てきてしまった。だからこそ、人の感情を畏怖する気持ちは分かる。

八弥子「特にさ、この島の人達がナギっちに向ける気持ちって、想像するだけでも嫌になりそうだしね」

鬼子として、見鬼のことを知る者からは遠ざけられ、類い稀なる才智はさぞ多くの敵を作ってきたことだろう。

鼎「普通ならこの島のことが嫌いになりそうですけど、奈岐は巫女の力で出来ることを探してる……」

八弥子「巫女の力で出来ること?」

あ……と思わず口を開いてしまう。そういえば、八弥子さんには詳しい事情を離していなかった。

そんな私の様子を見た八弥子さんは目の前で手をぱたぱたと振る。

八弥子「カナカナ、話しにくい秘密なら話さなくていいよ。ヤヤもカナカナには無理するなーって言われてるしね」

鼎「……八弥子さん。そうですね、じゃあ今はお言葉に甘えて」

私の言葉に八弥子さんがニコリと微笑んでくれた。”

奈岐への想い

八弥子“「カナカナ、怒られないぐらいに開けちゃう?」

鼎「奈岐のへんてこな鍵は壊してもいいかもしれませんけど、ドアに何かしたら危ないですよ」

八弥子「鍵だけ壊すのは、ちょっと器用だなぁ……」

それは困ったと八弥子さんが頬を掻く。

あと無理やり開けたりしたら、また逃げ出しそうな気もする。

それも今度は戻ってこないオマケ付きで。”

“朝行ってみた時、ご飯がそのままだったらどうしよう……?

何も食べずに閉じこもり続けていたら、心だけじゃなくて、身体まで弱ってしまいそうだ。”

“鼎「ねえ、どうしたら返事してくれる? 私が怒ってるのが怖い?」

「……奈岐と友達じゃなかったら、ここまでしない。友達だから言わないといけないことがあるんだよ」

「そういうのって大事なことだと思う」

ドアの向こうにいると思う彼女に語りかける。”

鼎の出生と勾玉の秘密 / 奈岐への想い
巫女の真実 / 末来の真実 / 見鬼
言霊、呪い / 八弥子と奈岐 / 八弥子の力、境遇
鼎への想い / 変わる奈岐


奈岐“「その勾玉の力を使うことを止めたほうがいい」

鼎「勾玉の力って、どうして急に……?」

奈岐「松籟会はその力を禍々しいと言っていたが、あながち間違いでは無かったのかもしれない」

禍々しい――確かに何度か耳にした記憶があった。

奈岐「……その勾玉の力、島に封じた災いに反応している。この目で確かめてきた。嘘ではない」

鼎「それって……祠に行ったの?」

昼間、学園長と末来さんが祠から出てきたのを覚えている。

確か、あの時――。

(以下、回想4-1-4)

櫻井“「あの様子では……それほど長く持たないでしょう」

末来「そうだね。キミの読み通り、反応していると考えていい」

櫻井「しかし、まだ巫女の用意は調っていません。他の対応策を考える必要が……」

末来「その他の手段が通じる状況だと思う?」

「…………」


(回想終了)

二人は奈岐と同じように反応していると言っていた。お母さんの勾玉が島の災いと関係している……?

奈岐「祠には行った。勾玉がどういう仕組みで反応しているか……それが分かるまで、力の使用を控えて欲しい」

鼎「どうしてそんなことを急に……?」

奈岐「奴ら急でな、向こう側から私にコンタクトを取ってきた」

「私と同じモノ――理事長が直々に解説してくれた。鵜呑みにするつもりはないが、この目で見たものは確かだ」”

“「それは言えないことになっている。口にしてはならないし、鼎が関わるべきじゃない」”

“「関連性は調べてみる。だから、それまで待って欲しい」

とても今まで立てこもっていたとは思えないほど、強い意志が混ざった言葉だ。

鼎「私達が調べていた穢れのことも関係しているの?」

奈岐「それは確実だ。しばらくは接触しない方がいい」

事態は知らぬ間に深刻なものへ――。

学園長と末来さんの話し、奈岐が理事長と話した結果、雲行きが怪しくなっているのは分かる。

鼎「勾玉のこと、分かった。善処する。でも、いくつか条件」

奈岐「……条件?」

鼎「八弥子さんと遠山先輩にちゃんと謝ること――あと、私とも仲直りすること」

「深刻そうな問題が見つかっても、まずはそこからスタートだよ」

奈岐は戸惑うように視線をそらす。

奈岐「……だけど、それは……」

鼎「だけど、じゃないよ。奈岐が鬼子だとしても、人を傷つけていい理由にはならない」

「悪いことをしたら謝らないと。そういうの、全部自分に返ってくるものだと思うし」

奈岐「…………」

「そうしないと……鼎は奈岐のことが嫌いになる?」

怯えるような奈岐の瞳が私を捉える。

それに対し、私は首を横へ振るう。

鼎「嫌いにはならないよ。でも、悪いことをしたら、謝れる友達でいてほしい」

私はそう言ってから奈岐に微笑みかける。

奈岐は迷っているのか、私から再び目をそらしてしまう。

奈岐「奈岐は……そういうの慣れていないから」

鼎「慣れていけばいいよ。ほら、今が切っ掛けになる」

私は奈岐に歩み寄り、その手を取った。

僅かに震える手を握りながら、もう一度微笑みかける。

「まず、私と仲直り、それから八弥子さんのところに行こ。八弥子さん、ずっと奈岐の心配してたから」

奈岐「でも……奈岐は禰津のことを酷く言ってしまった」

鼎「だから合わせる顔が無い……じゃなくて、だから謝らないとね」

奈岐「…………」

鼎「奈岐、私は友達でいるから。嫌いになったりしない。仲直りしたい。引っぱたいてごめんね」

奈岐「あれは……痛かった。でも当然だと思う」

奈岐は頭をあげると、私の肩に目元を押し当てた。

「鼎、ごめんなさい……見鬼のことを言われて……取り乱した」

鼎「うん、私もごめん。すごく繊細なことなのに、土足で踏み込むようなことをした」

奈岐「そんなこと……」

鼎「でも、事実だから。素直に受け取って」

奈岐「…………」

私は奈岐の手を離し、彼女をぽんっと叩く。

鼎「よし、仲直りだね。奈岐、いつものマントはどこに?早速、八弥子さんの部屋に行こう」

奈岐「ホントに……今から?」

鼎「こういうのは早い方がいいんだよ。気持ち的にも、ね」

私の言葉に迷いながらも、奈岐はベッドに脱ぎ捨てられていたマントを見やる。

「あとは奈岐も私も謹慎中だから先生に見つからないように」

奈岐「……鼎には敵わないな。頭の中まで真っ直ぐだ」

呆れたように言いながらも、奈岐は微笑んでマントに手を伸ばす。

鼎「あはは……考えてることと言ってること、同じだしね。私、器用なことは出来ないから」

奈岐「フッ、それでいい。その方がいい」

マントを羽織った奈岐は行こうと視線を入口へ向ける。

私は奈岐に頷くと、先ほどまで頑なに侵入を拒み続けていたドアに手をかけた。

忍び足で八弥子さんの部屋までやってくると、静かにノックを繰り返す。

ドアの隙間から僅かに明かりが漏れており、どうやら八弥子さんはまだ寝ていないらしい。

八弥子「はいはーいって、カナカナと――」

ドアを開けた八弥子さんが奈岐の姿を見て固まる。

「ナギっち……? あれ、このナギっち、本物?」

鼎「偽物とかあるんですか……とりあえず詳しくは中で」

八弥子「そうだね、二人とも入っちゃってー」

八弥子さんに招かれ、私と奈岐はそそくさと部屋に入っていく。

部屋に入ると、奈岐の足元にガジが駆け寄ってくる。

八弥子「ガジもナギっちのこと心配してたってさ」

いつも通りの八弥子さんに、奈岐は何かを言いかけて口を閉じ、どうにも落ち着かない様子だった。

鼎「奈岐、八弥子さんと話に来たんだよ」

軽く背中を叩くと、奈岐の身体がビクンッと跳ね上がる。

奈岐「っ……!?」

鼎「そ、そんなに驚いた……?」

奈岐「いや……へ、平気だ」

奈岐はマントの裾を掴んだまま、八弥子さんへ向かった。

八弥子「ナギっち? もう平気なの?」

八弥子さんはガジを抱き上げて、いつもの位置にセットし終えたところ。

奈岐は咳払いをした後、緊張気味に話を切り出した。

奈岐「禰津……この前のことだが、気にしているか?」

八弥子「この前? ナギっちが飛び出した時のこと?」

奈岐「そうだ、お前が知られたくないことを私が話した」

うーん、と八弥子さんが目を伏せて考え込む。

八弥子「ねえ、ナギっち。アレってさ、よく考えたんだけど……八つ当たりとはちょっと違うよね?」

八弥子さんの問いに私は首を傾げる。

でも、奈岐は図星でも指されたかのように、まばたきを繰り返していた。

「鬼子のことは知られたのに、ヤヤのことは何も知られていない。確か、そんなこと言っていたよね?」

奈岐「っ……分かった、禰津。分かったから、それ以上言うな」

八弥子さんの考えに気付いたのか、奈岐が慌てて止めに入る。

「すまなかった。悪かった。だから、それ以上は……」

八弥子「いやいや、カナカナも気付いてないみたいだし、言っておこ」

奈岐「禰津っ……」

八弥子さんが楽しげな表情を浮かべたまま、私へ振り返った。

八弥子「カナカナ、アレってヤキモチなんだよ? ナギっちがヤヤに嫉妬してたの」

鼎「えっ……?」

奈岐「…………」

頬を上気させた奈岐が明後日の方向を向いてしまう。

背中を向けられてしまっては、その表情が読み取れない。

八弥子「カナカナが頼ったことに妬いたんだよねー?」

だから、八弥子さんに必要以上に突っ掛かった……?

特に知られたくないような――嫌われるかもしれないようなことをわざわざ口にしてみせた?

鼎「えーと、それを知ってたから、八弥子さんは怒らなかったんですか?」

八弥子「んー? そうじゃなくても怒るようなことじゃないし、ナギっちが言ったことはホントだしねー」

心が広いというか、何というか……。

「それに、あの事に関してはヤヤが怒られる側にいると思うし。怒っちゃダメだと思うんだ」

「ナギっちにも言われちゃったけど、こうして呑気に過ごしてるわけだしね」

奈岐「禰津、アレはお前を動揺させようとして言っただけで……」

八弥子「でも、ざっくり来た。だから、事実なんだよねー」

八弥子さんがあっさり言ってのける。

それから、奈岐のもとへ歩み寄ると、髪の毛に手を伸ばす。

「ナギっちはね、間違ったこと言ってないから、あんまり気にしないの」

八弥子さんが奈岐の髪をもふもふと遊び始める。

どうにも抵抗出来ないのか、されるがままの奈岐は眉間に皺を寄せていた。

その様子を見ていると、一つアイディアが思い浮かぶ。

鼎「うーん、八弥子さんが全面的に許したとしても、奈岐が悪いことをしたのは事実です」

八弥子「お? どしたの? カナカナ?」

奈岐「……それについては反省している」

もふもふされながらも、奈岐が八弥子さんに謝るが……。

鼎「なので、ここは八弥子さんと……ついでに私にもちょっとお得な罰ゲームを奈岐に受けてもらおうかと思いまして」

奈岐「罰ゲーム……?」

ふふんっと笑みを浮かべながら、私は奈岐に歩み寄った。

鼎「題して――奈岐をもふもふし放題ですっ」

奈岐「…………」

内容を悟ったのか、奈岐が露骨に顔をしかめてくれる。

八弥子「カナカナ、それ、グッジョブ!」

奈岐「待て、鼎。し放題って何だ? 制限時間はあるんだろうな?」

鼎「……んー?」

バレた、と内心で舌打ちすると、奈岐がため息をついてくれた。

奈岐「やるにしても、五分だけだからな。ただし、今回は私に非があるからであってだな――」

鼎「はい、奈岐。面倒なことはそれ以上言わないの。今から五分間、奈岐はもふもふされるのです」

奈岐「…………はぁ」

諦めた奈岐が肩をすくめながら息を漏らす。

奈岐「一つお前達に聞いておく……楽しいか?」

鼎「猫毛に癖毛、そしてボリュームのある髪――その加減が絶妙なんだよ」

八弥子「うんうん、もふもふだよね。ガジよりもふもふしてる」

その絶妙な混ざり具合は一度触れると、ずっと撫でていたくなる魔性の髪だ。

触れれば離れられなくなる危険性を伴うけれど、こんなチャンスはそうそう訪れない。

鼎「では、八弥子さん……私からお先にっ」

奈岐の髪に触れると、恐ろしいまでのもふもふが私の手を呑み込んでいく。

「も、もふもふっ……!」

奈岐「何なのだ……」

何をどうしたら、この柔らかさを作り出すことが出来るのだろうか?

高級な低反発素材をしのぐ、この吸い込まれる感触……。

八弥子「ナギっち! もふもふー!」

腕まくりまでした八弥子さんが奈岐の髪に触れ、ここぞとばかりに掻き混ぜ始めた。

奈岐「この、お前達は……」

鼎「奈岐、狼もこんな風にもふもふなのかなー?」

奈岐「私は、ただのくせ毛だ……」

八弥子「でも、猫毛なんだよねー。あとすっごくふわふわ!」

鼎「ひょっとして、このもふもふか神狼なんでしょうか……?」

八弥子「そうかもしれない。このもふもふ……神様っぽいもんねー」

奈岐「神様っぽいもふもふとは何なのだ……はぁ」

奈岐の盛大なるため息を無視しつつ、私と八弥子さんは時間の許す限り――
正確には五分間だけど、もふもふと髪を堪能していく。

だた、もし制限時間を設けていなかったら……そう思うと、背筋が寒くなってしまう。

それほどまでに、もふもふがもふもふで――もふもふだった。

手が離れないようにも離れない。それこそがきっと神狼の業の一つで――。

奈岐「そんなわけがあるかっ! もう五分だぞ、五分っ!」

鼎「延長で!」

八弥子「ヤヤも!」

奈岐「却下だっ! ええぃ、はーなーせーっ!!」

奈岐がジタバタと暴れ、私と八弥子さんの手から逃れていく。

そして、手が離れた途端にハッと意識が戻ってくる。

鼎「また意識が飛ぶぐらいもふもふしてたっ……」

八弥子「……ヤヤも危なかったよ。あのまま、もふもふし続けていたら、きっと朝になるどころか、数日間は……」

八弥子さんの恐ろしい言葉にうんうんと同意しておく。

奈岐「はぁ……まったく、髪がぐしゃぐしゃだ……」

鼎「ん? といてあげようか?」

奈岐「も、もうしばらく誰にも触らせないっ!」

そんな姿を見ては、私と八弥子さんは顔を見合わせ、声を上げて笑ってしまう。

ようやく仲直りが終わり、明日からはきっと日常が――。

鼎「あ、課題……」

その日常の前には、まだ大きな壁があることを最後に思い出す。

翌朝、奈岐が一人で遠山先輩に謝りに行ったことを聞き、また一つ胸を撫で下ろす。

二人とも謹慎処分は変わらないけれど、これでようやく騒動の幕引きとなってくれた。

ただし、代わりとばかりに発生した問題は、底が知れないほど厄介な気がする。

勾玉のこと――どうにも嫌な予感が拭えなかった。”

⇒要請を受けたとはいえ、奈岐が調査を進めたのは、神狼になろうとすることが、鬼子という存在を否定する事に繋がる為。
見鬼の一件での鼎の対応が、それに拍車を掛けた。
[頼継の狙いは、鼎だけでなく、鼎を使って奈岐を利用する事にあった。]
脚本
 
演技
 
演出  
作画
 
補足
 





  4-2-1 4-2-2
状況
学園長に呼び出される鼎。
緊急で伝えなければならないことがあるという。
巫女候補の座から離れてもらうとのこと。
勾玉の力の影響で、封印の儀を早める必要があるという。
封印の力が弱まっていて、巫女の選出も急ぐとのこと。
それを危険視する松籟会の介入にあたっては、
末来か葉子を頼るようにと。学園長室を後にする鼎。
末来に相談しようとするも、危険に巻き込みたくない鼎。
寮へ戻る事に。鼎、課題に取り組む
朝から呼び出される鼎。理事長室へ向かう。
課題の為に徹夜をした鼎、ロビーで八弥子に遭う。
明日は模擬戦だという八弥子。棄権を促す。
謹慎明け故、顔だけは出すと言う鼎。
八弥子、朝食に誘う。鼎を一人で行かせる事を
気にする八弥子。鼎にガジを連れていくように、と。
嫌な予感がするという八弥子、鼎を見送る。
真琴、鼎を横目にする。
鼎、理事長室へ。昌次郎に案内され、食堂に。
頼継、ガジを見て戯けてみせる。
またも、勾玉の使用しないようにと言われる鼎。
松籟会もそれを注視していて、強行策に出るという。
自身で勾玉を守るか、誰かに頼るか、身を隠すかを
促す頼継。それを自分に伝える事を訝しむ鼎。
それに答えて、松籟会が嫌いだからと言う頼継。
挨拶の後、カフェを出る鼎。真琴の事で、
昌次郎を向かわせる頼継(⇒八弥子に伝達した)
時間
三十日目・朝
三十一日目・朝
場所
学園・学園長室 ~ 学園・学園長室前の廊下 ~ 寮・自室
寮・ロビー ~ (理事長室) ~ カフェテリア
設定
   
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
鼎の強い意志、母への想い
鼎の出生と勾玉の秘密 / 巫女の真実
松籟会の危険性

櫻井“「結論から申し上げると、
高遠さんには巫女候補の座から離れて頂きます」

鼎「巫女候補の座からって……それ、巫女になれないってことじゃ」

櫻井「理由はあります。ただし、この事は内密にして下さい」

学園長が声を低くして、どこか私を脅すように言う。

鼎「理由を知った上で内密にするかどうか判断します」

櫻井「そのような子供の理屈に付き合っている状況ではないのです。
私とて理由なく処分を告げるようなことはしたくありません」

櫻井「高遠さん、約束して頂けますか?」

鼎「…………」

強気に出てみたものの、見事に一蹴されてしまった。

「何を言われても、巫女のこと、諦められないですよ」

櫻井「……あなたのその考えが島に災いをもたらすとしてもですか?」

鼎「災い……? まさか、私の勾玉のことですか?」

私の質問を受けた学園長の眉が僅かに動く。

櫻井「どこでそのことを?」

鼎「鬼の付く人達です」

少し戯けてみせるが、学園長は重いため息をついた。

櫻井「はぁ……ある程度は知っているということですね」

鼎「勾玉の力が危ない、ということぐらいまでは」

櫻井「ええ、その力は大変危険なものです。 その力の影響で、
封印の儀を早め、巫女の選出を急ぐ必要が出て来ました」

学園長の話に、今後は私が眉をしかめる番だった。

封印の儀を早めて、巫女の選出を急ぐ……?

鼎「それって……どういうことですか?」

櫻井「巫女を選出するのは、本来は夏の祭りの前ですが、
封印の力が弱まった結果、急がねばなりません」

「巫女に関しては、現時点で力のある者から選び、
一対の組合せも変える必要があるでしょう」

鼎「……そうしないと、儀式を行えないからですか?」

櫻井「ええ、祓うべき穢れに敗北してしまうことでしょう」

期間が短いからこそ、力の及ばない巫女もいる。

祭りの日に現れる穢れに敗北してしまえば、
巫女の命はそこまでだろう。

櫻井「高遠さん、出来れば勾玉を学園に預けて欲しい
ところですが、それは難しい話でしょうね。」

「お母さんのお守りですし……」

櫻井「そこまでは強要しません。 ですが、勾玉を所持していることが
危険な状態であることは理解しておいて下さい」

鼎「……力を使うこと以外で、ですか?」

櫻井「ええ、この事態に気付き次第、動く者もいることでしょう」

鼎「…………」

頭の中で嫌な単語が過っていく。

松籟会――手段を選ばない人達。

勾玉のことが知られれば、私をまた狙う可能性がある。

櫻井「彼らの動きがただならぬ場合、学園側であなたを保護します。
その時は私達の言葉に従って下さい」

鼎「それ、勾玉を渡さないといけないって意味ですか?」

櫻井「儀式が終わるまで、そうして頂く必要があるかもしれません。
非常に危険な事態だと認識しておいて下さい」

学園長はそう言い終えた後、椅子に腰を下ろす。

桜「話は以上です。 くれぐれも周囲の動向には気を付けて下さい。
何かあれば、金澤先生か片倉さんへ伝えて下さい」

鼎「保護してくれるんですか?」

「ええ、学生を守ることが学園の役目ですから」

この言葉、どこまで信用出来るのだろうか?

奈岐がこの場にいれば、学園長の真意が分かるかも
しれないけど、それは無い物ねだりだ。”

“祠で聞いた学園長と末来さんの会話からして、
事態は深刻なのは間違いないみたいだけど……。

でも、勾玉を失って、巫女になることも出来ないとしたら、
私がこの島に来た意味が無くなってしまう。

お母さんを見つけるという目的――。

勾玉を無くしたら、そこへは辿り着けない気がした。”
守る為の力

八弥子“「朝一番から理事長に?
カナカナ、それこそサボっちゃえば?」

鼎「あはは……でも、行かないと
怒られないそうなので」

八弥子「そういえば、
あの人もナギっちと同じなんだよね?」

思い出したかのように八弥子さんがそう言う。

鼎「そうでしたね。
私に見鬼のことを教えたのもあの人ですし」

八弥子「うーん……ナギっちなら別に
いいんだけどさ、あの人に考え読まれるのは
抵抗あるっていうか」

八弥子さんが難しい顔をしながら腕を組んでいた。

鼎「それ、分かります。男の人っていうのもあると
思うんですけど、何考えてるのか分からない感じ
がして……怖いんですよね」

八弥子「うぅん、そんな人のとこにカナカナを
一人で行かせるのは気が引けるぅ」

鼎「大丈夫ですよ、私って考えてることと言ってる
ことが同じですし。若干、抵抗はありますけどね」

八弥子「ね、カナカナ、あれって目で
見ないと分からないんだよね?」

鼎「詳しいことは分からないっですけど、
そうだと思います」

八弥子「じゃあ、ガジの出番だっ!」

ガジ「ニャーン?」

八弥子さんが頭に噛み付いていたガジを
抱きかかえると、私に向かって突き出してきた。

鼎「わわっ……って、なんでガジなんですか?」

八弥子「ふふっ、こうしてカナカナがガジを抱いて
おけば、理事長の目もガジが防いでくれるはず!」

おー? と思ったけど、仕組みが分からないので、
役に立ってくれるのかどうか……。

八弥子「あとカナカナに何かあったら
ガジが知らせてくれるしね」

鼎「あはは、それは頼りになります」

そっちの方が本命に聞こえたので、
八弥子さんからガジを預かっておく。

八弥子「んー、よく分かんないけどさ、
嫌な予感がするんだよね。
肌にぴりぴりって来る感じ」

鼎「私は平気ですけど……何かありそうです?」

ガジを抱きかかえ直して、八弥子さんに訊ねる。

八弥子「ヤヤの勘って結構当たるんだよねー。
でも、何だろうななぁ?さっきからずっとなんだよね」

鼎「ふふっ、ガジがいてくれるんで私は平気ですよ」

八弥子「んー、そうだねー。ガジ、ちゃんとカナカナ
を守らないと、朝ごはん抜きになっちゃうぞー?」

ガジ「ニャーン……」

通じているのか、実にしょんぼり
とした声をガジがあげた。

鼎「あはは、遅刻するとまずいんで、
そろそろ行きますね」

八弥子「うんー、いってらっしゃーい」

手を振ってくれた八弥子さんに微笑んでから、
私は寮の外へ向かっていく。

そんな私を見送る視線が
もう一つあることも気付かずに――。

真琴「――――」”

松籟会の危険性 頼継の計画
鼎の出生と勾玉の秘密
疑問,松籟会に背く頼継に対し

頼継“「わざわざ朝一でキミに
来てもらった理由は二つだ」

理事長はまず一つと人指し指を立てた。

「一つ目は、キミが持つ勾玉の危険性だ。
これがなかなか困ったものだ、
ってもう聞いているかな?」

鼎「学園長と……あと向山先輩からも」

頼継「うん、伝言が行ってくれたようで何よりだ。
ま、危険なんだよ。内容は聞いての通り、
島で封じてるものに影響を与えてしまう」

「で、松籟会も学園もその力を使わせたくない。
当然の反応だね。ただ時既に遅し、
儀式を早める必要が出てしまった」

「そこで僕からも一言。あまりその力を
使わないで欲しい。 なぜなら、これは
二つ目の用件に繋がる」”

“「松籟会がさ、これ以上の勾玉の使用を怖がって
てね。ここで、またキミの身が危険になったわけだ」

鼎「松籟会の人が……私に何かするんですか?
まさかとは思いますけど、取り上げるとか……?」

頼継「ご明察。そう、勾玉を奪いに来るんだ。
そこでキミには選択肢が生じる」

「勾玉を今ここで僕に渡すか、
自分で守り抜くか――」

鼎「…………」”

頼継“「ただキミとしては勾玉を手放したくない
だろうし、僕も無理強いをするつもりはない」

鼎「……?」

勾玉を渡すように言われると思っていたら、
そんな言葉が聞けて、若干拍子抜けする。

頼継「だったら、どうするか。答えは一つだ。
高遠鼎、キミが勾玉を守り抜けばいい」

「ただし、キミ一人の力じゃ松籟会の人間には
敵わない。友達を頼るか、身を隠すか、
そこは好きにするといい」

「相手は実に狡猾だ。そこにいる猫が狩りを
する時と同じさ。身を隠して、得物に忍び寄り、
突然襲いかかる」

理事長が手先をばくばくと動かして、
何かを齧る仕草を真似してみせた。

鼎「…………」

でも、私の反応が今一つなのを見ると、
やれやれと肩をすくめてしまう。

頼継「話はそんなところさ。 ちなみに松籟会が
動き出したって話は今朝
入手したばかりの新鮮な情報さ」

「奴らはもう動いている。 キミがその勾玉を
守りたいなら、充分に気を付けることだ」

「ただし、あまり力は使わないでおくれよ?」”

鼎“「……どうして私にそんなことを
教えてくれるんですか?」

「最もな質問だ。だから、最もな回答を返そう」

理事長が唇の端をつり上げ、
どこか不敵に思える笑みを浮かべた。

「僕は松籟会が大嫌いだからさ」

鼎「えっ……」

頼継「おっと、今の発言は秘密にしておいてくれよ。
松籟会の老人達の耳に入ると面倒になる」

理事長自身も確か松籟会に
属しているはずなのに……。

でも嫌いだから松籟会の考えに背く行動を
取ることに疑問は……無いような、あるような?

「内部から食い破るために僕は松籟会にいる。
そういうことだ。おっと、今のも秘密だよ」

鼎「えっと、私にそんな
秘密を教えてもいいんですか?」

頼継「んー、いいんじゃないかな。 今のキミが
松籟会と仲良くすることは考えられないし、
向こうも考えていない」

随分とアバウトな考えを披露されてしまい、
再び呆気に取られてしまう。

「だから、僕は味方だ、なんて胡散臭い
ことは言わないよ。ただキミが
告げ口をする理由が無いだけさ」

鼎「まあ、確かに……
わざわざ言う必要は無いですね」

頼継「そういうこと。 さて、質問は終わりかな?」

鼎「あ、はい……ええと、ありがとうございました」

頼継「あっはは、律義だね。 いいよ、気にしない。
気にするべきは、今のキミ自身の安全だ」

鼎「……分かってます。それでは、失礼します」

頼継「それじゃあね」”

“「んー、言ったか。昌次郎、中村家がもう
動いているはずだ。彼女の味方に
連絡を入れてあげるといい」

「もう気付いているかもしれないけどね。
ただ、手遅れになってからじゃ遅い」

昌次郎「かしこまりました」”

⇒頼継が松籟会を嫌う理由は七年前の敗戦にある
脚本
   
演技
   
演出    
作画
   
補足
   







  4-2-2 4-2-3
状況
学園中庭を通り、寮へ向かう鼎。寝ているガジ。
校門で真琴が歩み寄ってくる。
嫌な予感がするが、話しかけてみる鼎。
一蹴し、付いて来いという真琴。鼎への母が
真琴の母を死人同然にしたという。
逡巡した後、真琴を追う鼎。学園の南にある森へ。
真琴、鼎の母について語る。
勾玉をよこすように迫る真琴。断る鼎。
実力行使に出る真琴。霊石を投げ捨て、砂を蹴り上げ、
鼎の目を遮る。横薙ぎ一閃、虚を突かれるも間一髪で躱す鼎。
逆袈裟が予想以上に伸びる。柄元の左手を離し、右腕を伸ばした。
刀を振り上げる真琴、八弥子の介入。
八弥子と交渉の後、撤退する真琴。
寮に戻り、八弥子の部屋へ
八弥子の部屋で事情を話す鼎。
母の事についても。特に驚いたりはしない八弥子。
真琴が鼎を狙うなら、八弥子が守るという。
迷惑を掛けてしまうと、八弥子を気遣う鼎。
今は鼎の安全を優先しようと言う八弥子。
鼎を抱きしめる。八弥子の胸に
思わず引き寄せられる。何故か揉む事に。
奈岐が現れ、呆れる。奈岐から、
明日の模擬戦が中止になり、巫女が内定した
事が語られる。そのペアとは、神住と真琴である。
それを疑問に思った鼎。
末来は別件で動いている、と奈岐は言う。
八弥子、自身の家柄について口にする。
頼継と一時、行動を共にするという奈岐。
奈岐、鼎を八弥子に託す。
この日は以降、特別な事は起きず、
夜を迎え、食事を取り、ベッドに入る。
食事の際は、他の巫女候補の様子から、
内定の話は知らされていないよう
時間

〃 ~ (夜)
場所
学園・中庭 ~ 学園・校門 ~ 森(学園の南)
寮・八弥子の部屋
設定
・真琴が言うには、鼎の母の所為で、自分の母が犠牲となった
・災いとは、島が多くの穢れで溢れることである
・島の封印について、八弥子もいくらか知っている
(⇒礎の事は知らず、穢れの大量発生までと思われる)
 
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
鼎の優しさと強さと公平さ 鼎の強い意志、母への想い
守る為の力 巫女の真実 頼継の計画

真琴“「お前に話がある。ついてこい」

鼎「わ、待ってっ……それ、物騒な予感しか
しないんだけどっ」

踵を返そうとした中村さんを慌てて呼び止める。

松籟会の人間かつ私を狙った前科一犯な人に
ついていけるほど、お人好しには出来ていない。

真琴「……高遠未来がこの島でやったことを一つ教えてやる」

中村さんが振り返り、鋭く私を睨み付けてくる。

どうしてそこまで恨まれるのか……そう思っていたけど、
次の言葉を聞いた瞬間、胸に突き刺さるものがあった。

真琴「高遠未来は私の母を死人同然にした」

鼎「えっ……?」

真琴「高遠未来が巫女の掟を破り、
島に災いをもたらそうとした。
母さんはそれを防ぐため――犠牲となった」

「私が嘘を言っているように見えるなら。
このまま寮に帰って好きにするといい」

「ただ自分の母がしたことに、
少しでも責任を感じたなら、私についてこい」

中村さんがそう言い残すと
校門の外へ向かって歩き出す。

鼎「お母さんが……災いを、って……」

理事長の話の後だからか、嫌が応でも
勾玉のことを意識してしまう。

お母さんがこの島で何かした……?

型破りな人だと思うけど、
誰かを傷つけることを望む人じゃない。

本当に災いをもたらそうとしたら、
その過程で何かあったはず。

でも、たとえ何かがあったとしても、
中村さんのお母さんをそんな状態に
したとしたら……。

「ガジ、寮に戻ってて。私、行かないと」

ガジ「ニャン……?」

ガジを地面に下ろし、中村さんの背中を目で追いかける。

私を連れ出すための嘘かもしれない。

だけど、嘘ならもっと上手な嘘があるはず。

それにたぶん……中村さんは嘘をつけない人間だと思う。

鼎「うーん……ガジ、私って甘いかな?」

「でも、お母さんが何かしたって言われるとひけないよね」”

(真琴の後を追い)

真琴「殊勝な心がけだな、高遠鼎。私を信じたか」

鼎「中村さん、あんまり嘘は得意じゃないみたいだし」

真琴「否定はしないな。それで話がある」

早速と――もう嫌な予感しかしない。

勾玉の力に頼る事態だけは避けて欲しいところだけど……。

真琴「その勾玉、こちらへ渡してもらおうか」

やっぱり、と内心で頭を抱える。

鼎「それ、断ったら実力行使だよね……?」

真琴「話が通じるようになったな」

中村さんの行動は松籟会からの指示だけでなく、私怨もあった、

しかも、それは私のお母さんがしでかした結果のこと。

鼎「ねえ、災いって何?」

真琴「私が聞いたのは島が穢れで溢れかえることだ。
学生だけでなく島民にも危険が及ぶ」

「島を取り仕切る松籟会としては避けなければならならい」

だから、中村さんのお母さんに何かがあった?

鼎「ここで勾玉をあなたに渡したとして……
私、無事に帰れる気がしない」

真琴「フッ、素直な奴だ。しかし、その通りだな」

「命までは取らない。だが、母さんと同じ目には遭ってもらう」

本気でそんなことを言われ、顔が引きつるのが分かる。

今から殺さない程度に痛めつけるなんて宣告されて、
平然としていられるのは……それこそお母さんぐらいだろう。

鼎「どちらにしても、だったら……勾玉は渡せないよ」

「お母さんは島にいる。見つけ出して、何をしようとしたのか、
ちゃんとお母さんの口から聞きたい」

「どうして災いを引き起こすようなことをしたのか……
聞いておかないといけない。何か理由があるはず」

真琴「理由があったとしても、母さんは殺されたも同然だ。
私には積もり積もった恨みがある」

「勾玉を渡さないと言うなら、奪えという指示が出ている。
それを実行させてもうだけだ」”

(真琴の強襲)

八弥子“「カナカナッ!!」

八弥子さんの怒声が聞こえ、
刀が当てずっぽうな方向へそれていく。

真琴「くっ!」

八弥子さんが中村さんに肩からぶつかり、
体勢を大きく崩していた。

八弥子「ふぅ、間一発……これ、どういう状況?」

八弥子さんが私と中村さんを見比べる。

刀を手に再び構えを取る中村さん、
片や顔を蒼くしているであろう私。

だいたい察してもらえると思う。

真琴「禰津先輩、邪魔をするつもりですか?」

八弥子「んー、物騒なものを持って、そんなこと言われてもねえ……」

真琴「……私の行動は松籟会の意向があってのことです。
妨げるということは、それ相応の措置が下ります」

八弥子「でも、目の前で刀振り回されてる邪魔もしたくなるよ」

「あとカナカナの意見も聞きたい」

こんな時でも余裕の様子で八弥子さんが私に振り返る。

鼎「えーと、私、八弥子さんに勾玉の話をしました……?」

八弥子「んー? 聞いてないよ?」

鼎「勾玉を使うと、島が封印してるものに影響するって、
学園長や理事長から聞かされてて……」

八弥子「だから、マコに狙われちゃってるわけかー。
つくづくカナカナはアンラッキーガールだね」

こんな状況で、初めてそんなことを言われてしまい苦笑した。

真琴「島の封印に影響する。 つまり災いを呼び起こす危険性がある。
禰津先輩も巫女候補の家系、その意味がお分かり頂けるかと」

八弥子「意味は分かるけどさ、カナカナが勾玉を
渡さないのにも理由があるんじゃないのかな?」

鼎「私は……ただの感情論ですよ。お母さんのお守りだし、
それに使わなければ、問題無いんですよね」

子供の理屈かもしれないけど、それでも勾玉がお母さんに繋がる
お守りであるなら……渡したくはない。

私の言葉と中村さんの言葉、天秤にかけているのか、
八弥子さんがうーんと考え込む。

でも、一つ気になった。

松籟会の命令が絶対で、勾玉が狙いなら……
今、中村さんはどうして一歩も動かないのか。

八弥子さんは巫女姿でもなく、武器すら持っていない。

一方、中村さんは刀に加えて、
扱えるだけの技術も持っている。

八弥子さんの動きを封じて、私を手にかけることぐらい、
きっと造作も無いことなのに。

八弥子「やっぱり、ヤヤはカナカナの味方だなー。
ほら、ヤヤも感情で突っ走るタイプだし」

真琴「――そう言うと思っていました」

中村さんが刀を鞘に収める、草むらに視線を向ける。

真琴「……?」

八弥子「探し物はコレかな? ヤヤと喧嘩するなら、
コレが無いと、危ないもんね」

八弥子さんが悪戯っ子の笑みを浮かべる。

その手には星霊石――きっと中村さんのものが握られていた。

真琴「なるほど、禰津先輩の余裕は自身の力だけでなく、
私の星霊石を取り上げていたからですか」

八弥子「そういうこと。それで、マコはどうする?
ヤヤは喧嘩なら強いよー?」

真琴「……噂には充分。星霊石の力無しに挑んでしまえば
敵わないでしょう。殺すことも殺されることも出来ない」

確かに八弥子さんは自分の星霊石を持っているし、
いざとなれば使うことも出来る。

でも、中村さんの口ぶりでは、
それと違う何かを指しているような気がした。

八弥子「交換条件。 カナカナを見逃すなら、コレを返してあげる」

真琴「そこに私も見逃すという条件を加えてもらえるなら」

八弥子「当然。 そんな真似はしないよ」

真琴「先輩の家柄的にそうでも言っておかないと、
生きて帰られる確証が持てないので」

八弥子「なるほどね。 マコがそう言うなら、それでいいよ」

八弥子さんが息を吐いた後、中村さんに星霊石を投げ渡す。

「はい、交換。マコは撤退、撤退ー」

真琴「言われなくても……」

最後に中村さんが私をきつく睨むと、
木々の隙間に姿を消していった。

八弥子「ホント、マコは困ったちゃんだなぁ。
カナカナ、無事ー?」

鼎「あはは……お陰様で。ありがとうございます、八弥子さん」

歩み寄ってきた八弥子さんに答えつつ、
一難去ってくれて胸を撫で下ろす。

「でも、よく八弥子さん、ここが分かりましたね」

八弥子「ヤヤの勘は鋭いからねーっていうのは半分冗談で、
ガジが教えてくれたのっ」

周囲の安全を知ったからか、ガジが茂みから飛び出してきて、
八弥子さんの頭に這い上がっていく。

そして、ガブリと噛み付いて固定された。

鼎「ガジ、優秀すぎません……?」

八弥子「あともう一つ。おまけで理事長の秘書さんがね、
カナカナが危ないよーって教えてくれたんだよ」

理事長の秘書……それが本命と考えたら良さそう。

どうやら初めからこうなることは予期されていたらしい。

それなら教えてくれても良かったのに、と思う。”
守る為の力 八弥子の力、境遇
鼎の優しさと強さと公平さ 八弥子と鼎
鼎への想い 末来の真実
変わる奈岐 八弥子と奈岐

八弥子「じゃ、マコが何かしそうなら、
ヤヤがカナカナを守ってあげる」

鼎「それは頼もしいですけど……平気なんですか?
みんな、家のこととか気にするみたいですし」

織戸伏島という閉鎖空間で、絶対的な権力を持つ
松籟会への反抗が意味するところは非常に危うい。

八弥子「平気平気、ヤヤの家に何か出来る人を
探す方が大変だよ。」

鼎「ええと……どんな家なんですか?」

八弥子「んー、簡単に言うとね、みんな強い」

とても簡単な答えを頂けた。

以前、奈岐と喧嘩した時に言われたこととか関係
してるんだろうけど……そこには触れにくいし。

「だから平気。 カナカナは身の安全を優先しよう」

鼎「あの、家は平気でも……八弥子さんは?
今日のことで松籟会が何をしてくるか……」

そう訊ねると、八弥子さんがベッドから降りて、
椅子に座った私に近づく。

鼎「わっ」

そして、何故かハグ。ぎゅっと抱きしめられてしまう。

私が座っているから、
顔がボリュームのある胸に埋もれて――。

八弥子「大丈夫だよ、ヤヤも強いから」

鼎「ええと……」

八弥子「カナカナ、心配してくれてありがと」

心地良い圧迫感の中、八弥子さんの優しい声を聞く。

頼りになる先輩だと思う。

でも、そう思えるからこそ……。

鼎「強くても……かなり迷惑かけてしまいます」

八弥子「ふふっ、カナカナはいい子だなぁ」

鼎「八弥子さん……?」

八弥子「このまま巫女候補でだらだらしながら、
学園生活が終わるのはつまんないじゃん?
何か起きる方が楽しいよ」

「カナカナには大変かもだけど」

それは自分が考える以上に、前向きな言葉だった。

そこまで言ってもらえると、
さすがに何も言えなくなる。

鼎「あはは、少し大変な方が私も燃えてきます」

八弥子「さすが、カナカナ。そうこなくっちゃね」

八弥子さんの胸に頭を預けながら、
頼もしい声を聞いた。

しかし、それにしても。

この圧迫感というか、もちもちした感触……
羨む段階を通り越した何かがある。

奈岐の髪のもふもふに通じるものが、
この双丘にはあるような気がした時――。

「カナカナのお母さんのこともあるし、どうする?
考えるのはカナカナに任せた」

八弥子さんが私から離れ、そう言って二コリと笑う。

鼎「うーん……」

確かに考えないといけないことは多いし、
問題も多い。

でも、今はそれ以上に気になるというか、
惹かれるというか。

視線が八弥子さんのそれに
釘付けになったまま離れない。

鼎「ひとまずですね、八弥子さん、
触ってもいいですか?」

八弥子「うん? 何に?」

鼎「おっぱい、大きいですよねっ」

八弥子「うん、大きいねー」

鼎「ちょっと揉ませて下さい」

我ながらおバカなことを言ってるなあ、と思いつつも、
今の私はそれなりに本気だ。

だって、まだ視線が離れないし。

八弥子「いいよー、どんっと来い」

とても爽快な返事を頂ける。

なので、ここは遠慮無しで行こう。

鼎「いただきますっ」

「はぅ……この弾力、やっぱり……」

八弥子「んー? やっぱり?」

掴んだ指の隙間からこぼれるほどの量感――。

そして何よりも……この弾力、もちもち感はとても
危険なほど魅力的で、私の手が離れてくれない。

鼎「八弥子さんのおっぱい、
揉み心地が危険ですっ……
指を押し返す感触が絶妙すぎて……はぅ……」

八弥子「おー……? そんなに?」

鼎「やばいです、危険です……!
触るな危険とかいう注意書き、
きっとこういうところにつけておくべきです!」

引き続き、私は本気だ。

八弥子「あはは、カナカナ、
それはさすがにつけて歩けないよー」

鼎「でも、指が離れないんですよっ……
魔性ですっ!」

八弥子「なんだか、大げさだなー」

からっと笑いながら、八弥子さんは言うけれど、
このまま数日、揉み続けても平気なぐらい指が
離れてくれない。

奈岐の時もそうだったけど、
これは誰かが止めない限り、
延々と八弥子さんの胸の虜にされ続けてしまう。

私はまだこの島で
色んな事をしなければいけないのに。

とりあえず横に置いておいて、おっぱいを堪能
していれば、それで幸せみたいな――
そんな気分になってきている。

このままじゃ、私は……冗談ではなく、本当に……!

奈岐「おい、どういう状況だ……これは?」

鼎「はっ……!?」

背中のリボンを引っ張られて、
僅かに正気が戻ってきた。

だけど、手はまだ八弥子さんの胸に吸い付いたまま。

奈岐「はぁ……一悶着あったと聞いて急ぎ
駆けつけたら、禰津の胸を揉んでいるとは
理解が及ばないぞ」

鼎「だって、おっぱい……!」

奈岐「意味がわからん」

八弥子「あはは、カナカナがおかしくなった」

奈岐「まったく……禰津、笑ってないで鼎を引き離せ」

八弥子「はーい、カナカナ、また今度ねー」

八弥子さんと奈岐の二人がかりで
私の手が離されていく。

鼎「あっ……」

指先が離れ、温もりのある弾力が
遠のいていってしまう。

また今度――八弥子さんはそう言ってくれたけど、
名残惜しさが溢れて、再び手を伸ばそうして。

八弥子「カナカナ、どうどうー」

奈岐「ええいっ、落ち着けっ!」

二人に押え込まれてしまった。

無念さから、
ずるずると私はその場に崩れ落ちていく。

奈岐「これは何なのだ……?」

八弥子「カナカナ、おっぱい大きいの好きなの?」

八弥子さんの純粋な疑問に私は顔をあげる。

鼎「好きでした……でも、大好きに変わりましたっ!」

八弥子「わー、カナカナ、正直者だー」

奈岐「禰津、安易に触らせるなよ……若干、
鼎がおかしくなっている」

つい力説してしまった私に対して、
冷静な二人の声が降りかかった。

若干切なくあるけれど、この気持ちに嘘は無いので、
もう一度だけ言葉にしておく。

鼎「大きいの素敵ですっ!
この気持ち、ラブですっ!」

奈岐「……前言撤回しよう。
かなりおかしくなっている」

奈岐の半目がとても冷たかった。

一息ついて冷静さを取り戻した後、
奈岐を交えて話の続きを再開した。

八弥子さんはベッドの上であぐらをかき、
奈岐は椅子に腰をかけている。

私は色々あって床で正座していようか
とも思ったけど、真面目な話になるので、
椅子をもう一つ借りておいた。”

“奈岐「明日の模擬戦が中止になり、
今年の巫女は既に内定している」

八弥子「わお……随分と早いね。
カナカナが言ってた封印の関係かな?」

八弥子さんが驚きを口にし、
同じく私も目を瞬かせていた。

奈岐「理由はそれで間違いない。
即戦力となる巫女候補が少ないが故、
消去法であっという間に決定だ」

「松籟会に縁のあり、実力もある候補が
ちょうど二人もいる。今年の巫女は
遠山神住と中村真琴の二人だ」”

「禰津、鼎が何故お前を選ばないのか、
と不思議がっている」

私の考えを見ていたのか、それとも表情が出て
しまっていたのか、奈岐がそんなことを言い出す。

鼎「……だって、八弥子さんは二年生ですし。
あと、そうだ、末来さんもいるじゃないですか」

奈岐「末来の奴は別件で動く必要があるから
候補から外された」

別件で動く……?

別件でまだ何かあるの……?

鼎「じゃあ、八弥子さんはどうして?」

八弥子「んー、トップシークレットなんだけどねー。
ナギっちにはとっくの昔にバレてたみたいだし。
ま、いいか」

あっけらかんとした様子で
八弥子さんが私に振り向く。

「ヤヤの家はね、巫女候補にはなれても巫女には
なれないんだよ。色々、複雑な事情があってねー」

鼎「……?」

巫女候補にはなれても、巫女にはなれない?

松籟会に遠ざけられているとか、
そんな理由だろうか?

八弥子「巫女って、島のために選ばれて儀式を
行うって意識が無いとダメなんだってさ」

「ほら、家のためとか、名誉のためとか、
そんなのでも一応は島のためにはなるし」

「問題なのが、自分の力に溺れちゃうタイプ。
心が穢れに持って行かれるって言われてる」

「だから、ヤヤはアウト。
ヤヤのお家がそういうことだから」

重い話のはずなのに、
八弥子さんはいつもの調子で語っていた。

既に知っていたのか、奈岐は表情一つ変えずに
腕を組んでいる。

ぽかんと口を開いては、
呆気に取られているのは私だけ。

鼎「……八弥子さん、
私からはそんな風に見えないです」

まず最初に浮かんだ疑問がそれだった。

八弥子「んー、人に見せるようなものじゃないしさ」

ここで初めて八弥子さんが
少しばつが悪そうに頬を掻く。

この先はあまり踏み込んで
欲しくないのかもしれない。

鼎「それって血の話ですか……?」

以前に奈岐が言葉にしたことを思い出す。

巫女の力に特化しすぎた血――
今までに何人殺した、と。

八弥子「そーゆー呪縛みたいなのってあるんだよね」

八弥子さんが諦めたように息をつく。

奈岐「禰津という家に生まれた限り、
巫女には選ばれない。そういうカラクリになっている」

その力というものは気になるけれど……
それ以上は踏み込めなかった。

鼎「……だから、中村さんが選ばれたわけ?」

話を元に戻して、奈岐に訊ねる。

奈岐「異例の事態だけに松籟会の関係者
というのも大きいだろう。儀式を円滑に
進められるだけの知識も必要になる」

八弥子「マコもカスミもお堅いしね。 適任だと思うよ」

確かに松籟会の意図通り、二人は動いてくれそう。

特に中村さんは……私情もあるけれど、
私の命を狙うぐらいだし。

「で、ナギっち、今のが一つ目の悪い知らせ?」

奈岐「ああ、それで二つ目は今年の巫女には
なれないという話だ。」

鼎「もう選ばれちゃってる上に……
私、学園長から巫女候補を外されちゃってるしね」

それでも諦めずには方法は探したいけれど、
ここまで話が進んでいる以上、
どうやって食い付いていくか。”

“八弥子「うーん、カナカナの目は
全然諦めていないねー。 これは楽しくなりそう」

奈岐「そういう反応をしてくれると思っていた。
だからこそ、次の知らせがある」

奈岐が少し改まった様子で私を見た。

奈岐「儀式までの間、私は理事長と行動する」

鼎「えっ? 理事長と、って……どうして急に?」

奈岐「鬼が二匹集まって知恵を絞らねばならない
ほど、事態は進行している」

「それに……お前達へ情報を出来る限り流し、
松籟会から守るためだ」

八弥子「……ありがたいけどさ、
ナギっちはそれでいいの?」

奈岐「いいも悪いも、鼎と禰津に私は酷いことをした。
その罪滅ぼしになってくれればと思う」

鼎「奈岐……」

奈岐は話を終えると、椅子から立ち上がる。

奈岐「何か動きがあれば、すぐに連絡をする。
明日から私と理事長は姿を眩ませるつもりだ
松籟会を挑発するためにな」

八弥子「まさか悪巧みしてるぞーってアピール?」

奈岐「フッ、そういうことだ。もう奴らとの戦いは
始まっている。 分かっているとは思うが、
鼎も禰津も気を付けることだ」

鼎「それは当然。奈岐も気を付けて」

奈岐は私に一度頷くと、
部屋の外へ向かって歩き出す。

奈岐「そろそろ時間だ。禰津、後は頼んだぞ」

八弥子「それはカナカナのことでいいのかな?」

八弥子さんが茶化すように言うけれど、
奈岐の様子は真面目なままだった。

奈岐「……ああ、そうだ」

そして、そんな返事だけを残して
部屋から出て行ってしまう。

奈岐の背中が廊下に消え、部屋のドアが閉じられる。

八弥子「ナギっち、ホントにいいのかなぁ……」

僅かな沈黙の後、
八弥子さんがそんなこと呟いていた。

その言葉の意味するところが分からず、
私は首を傾げる。

鼎「どういう意味ですか?」

八弥子「んー……」

八弥子さんが眉間に皺を寄せて考え込む。

その結果、いい言葉が思いつかなかったのか、
誤魔化すようにニコッと笑ってみせた。

八弥子「ここは秘密ってことで」

珍しく秘密と言った八弥子さんに追及することは
出来ず、私は苦笑いを浮かべる。

その後は何事も起きず、無事に夜を迎え、
食事を取り、ベッドに入ることが出来た。

巫女候補のみんなは、まだ内定の話を知らされて
いないのか、いつも通りで――。

少し変わったことと言えば、明日の模擬戦が
中止になったという話題が出たことぐらいだった。”
脚本
⇒真琴にのこのこと付いて行くのは、どうかと思うが、
母への想いが、割と明晰な鼎の判断を曇らせている。
また、自身は沈黙を守って真琴に語らせておくのは恥である。
加えて、真琴の母に対する想いに響くものがあったのかもしれない。
いざとなれば、勾玉も手元にある。技量の差はあるが
 
演技
   
演出    
作画
   
補足
⇒鼎の事を頼まれていたが、食後に眠ってしまうガジ。
相変わらずのお気楽にゃんこだ
⇒島で生まれ、魂が門と結び付いた事によって、
巫女の力が発現する。
逆に言えば、巫女の力に特化する事によって、
それだけ門に強く結び付けられる。
門に囚われているのは、巫女の魂であり、
その魂は永遠の苦しみの中で穢れていく。
力に特化した代償は、魂の穢れとして顕われる。
と、考えられる。その力、結び付きを、
代を重ねた血と星霊石から得ているのが、
禰津家なのだろう。
奈岐、鼎と未来、末来の力はまた別種のモノ






  4-3-1 4-3-2
状況
八弥子と予定通り朝食を共にする。今後の事を話す。
名前呼びと敬語について改める。
自分は鼎を好きになっても、その逆はダメだという八弥子。
額にキスをする。それぞれの教室へ向かう
放課後。巫女候補は授業終了と同時に、
学園長室へ呼び出されていた。
模擬戦の中止、巫女の内定を告げるという。(鼎の推論)
八弥子、神住に呼び出される。鼎、付いて行く。
神住、この事は内密だと八弥子に問い詰める。
鼎を危険に晒すわけにはいかないという八弥子、
真琴を見やる。神住は松籟会から指示を受けたという。
その内容は、八弥子を相手に、真琴との一対の力を
完成させる事。神住、無駄だと分かっているが、
鼎に対し寮に帰れと言う。森へ向かう一行。
牽制し合う、神住、真琴、八弥子。ガジを鼎に預け、
戦う八弥子。降参する神住達。息は合っていない。
真琴に相談があるという神住、八弥子には後に
連絡を入れるという。鼎を遊びに誘う八弥子、
明日に島の南へ。寮に戻る。他の巫女候補は
落ち込んでいたが、無事に一日を終える
時間
三十二日目・朝 三十二日目・放課後
場所
食堂 ~ 学園・中庭
校内・階段前 ~ 森 ~ 寮・自室
設定
  ・禰津家は、巫女になる者を鍛える役目がある
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
守る為の力 八弥子の力、境遇
八弥子と鼎

鼎“「あ、そうだ、八弥子さん、改めてよろしくお願いします。」

食後のお茶となったところで、私はそう切り出す。

八弥子「んー? 何の話だっけ?」

今日も頭の上にいるガジを撫でていた八弥子さんが
まばたきを繰り返した。

鼎「守ってくれるって話、色々と期待しちゃってます」

八弥子「ああ、うん、それねー。 カナカナは勾玉を使えないし、
マコが昨日みたいな手段取ったら反撃出来ないしねー」

鼎「八弥子さんは反撃出来るんですか? 武術が得意とか?」

八弥子「そんなとこかなぁ。 とりあえず方法はいくつでもあるよ」

あの中村さんの剣術に対して、
さらりと言える八弥子さんがすごいというか……。

鼎「あ、星霊石を使えば、問題無いか」

八弥子さんは私と違って、使用の制限は受けていないはず。

八弥子「ふふっ。 ま、それも一つの手だよねー」

鼎「…………?」

得意げに微笑んだ八弥子さんがテーブルに身を乗り出し、
私の顔を覗き込んだ。”

鼎「えっと? どうかしました?」

八弥子「ねね、カナカナ、しばらく一緒だしさ、
一つだけ直して欲しい所があるの」

鼎「直して欲しいところですか? 頑固と直情径行は難しいですよ」

八弥子「あははっ、違う違う。それはカナカナのいいところ」

そして、八弥子さんがビシッと人差し指を立てて宣言する。

「直して欲しいところは――ずばり敬語っ! 八弥子さん呼びも!
今日からヤヤって呼ぶようにっ!」

鼎「え、えええぇっ!?」

唐突な要求に思わず声をあげてしまった。

慣れてしまえばそれまでなんだろうけど、
でも、いきなりは……ちょっと難しいと思う。

八弥子「じゃ、カナカナ、ヤヤのこと呼んでみて!」

八弥子さんがとても楽しそうに迫ってくる。

鼎「う、ぐぐぐぐ……!」

今の今まで八弥子さんと呼び、敬語で接してきたから、
まず言葉が出てこない。

呻いては、口をぱくぱくとさせる悲しい始末。

でも、こういうのは慣れだし、
とにかく慣れることから始めないと。

深呼吸して落ち着けと自分に繰り返した後、
私は八弥子さんに向かって口を開いた。

「や、ヤヤさんっ……じゃなくてっ! えっと、ヤヤ!!」

鼎「あっ、わわわっ、ご、ごめんっ、八弥子さんの名前を大声でっ」

八弥子「あははっ! カナカナ、敬語に戻ってるよー?
あと八弥子さんってまた言ってる!」

八弥子さん――違った。
ヤヤに指先で頬をぷにぷにと突かれてしまう。

奈岐とは違って、見た目もしっかり先輩だから、
余計に難易度が上がってしまっている。

鼎「うぐぐぐぐっ」

八弥子「はーい、もう一回っ!」

これは……ホントに何とかなるんだろうか?

分かってはいたけど、自分の不器用さを
再確認させられてしまう。

鼎「や……ヤヤ……ヤヤ! ヤヤさんっ!」

八弥子「惜しーい。 っていうか、カナカナ? わざと?」

鼎「ほ、本気でやってますよっ!」

にへへと笑う八弥子さんを相手に頬を膨らませてから、
再び彼女の名前を呼ぶ――そんな朝食後の僅かな時間。

結局、私が彼女を名前で呼べるようになったのは、
登校するために食堂を出た頃だった。

登校後、それぞれの教室へ向かう前に、
八弥子さん――ヤヤといくつか言葉を交わしておく。

八弥子「学園にいる限りは安全だと思うよ。
マコもここじゃ何も出来ないはずだし」

一番の懸案事項を早速と口にしてくれる。

鼎「でも、場所を選んでるイメージは無いんですけど」

八弥子「カナカナ、そもそも帯刀してたらバレるじゃん?
で、巫女の力を使うにしても発動まで少し時間がかかるし」

「あと、また敬語に戻ってるよー」

そして、ぷにっと頬をつつかれる。

鼎「うっ……いきなりは難しいですよ……じゃなくて、難しいよっ」

八弥子「あははっ、カナカナ、なんだか可愛いなぁ」

ヤヤがぐしぐしと私の頭を撫で始めた。

いつもガジを撫でて慣れているのか、
がさつに見える撫で方でも、不思議と嫌な感じはしない。

やっぱり年上の先輩って雰囲気があるせいだろうか?

八弥子「んー? 何? カナカナ?
それは恋する乙女の視線かなー?」

鼎「そ、そんな目で見てないよっ」

八弥子「でも、おっぱい大きいのが好き」

鼎「否定はしないけどっ」

八弥子「あははっ! カナカナは素直だねー」

「ヤヤはカナカナのそんな真っ直ぐなとこ、好きだよ」

頭を撫でられながら、褒められると、
少しくすぐったい気持ちになる。

八弥子「おー、カナカナが少し赤くなった」

鼎「うぅ……もしかして、からかってる?」

八弥子「ふふっ、ヤヤも真似して素直に言っただけ」

「でもさ、カナカナ――」

ヤヤが頭を撫でる手を止めて、私の瞳を覗き込んだ。

「ヤヤがカナカナを好きだーって言ってても、
カナカナはヤヤを好きになっちゃダメだからね」

鼎「ん……どういうこと?」

八弥子「理由は複雑。でも、それだけ忘れないよーに」

そんな言い方されると余計に気になる。

鼎「…………」

私より少し身長の高いヤヤを見上げて抗議の視線を向けた。

八弥子「そんな目で見てもダメだよー」

鼎「私、ヤヤのこと、頼りになる先輩だと思ってる。
だから、好きだよ? そういうのもダメなの?」

八弥子「んー……」

ヤヤが視線を上にあげて考える。

八弥子「ヤヤがさ、昨日、
秘密って言ったこと、もう教えちゃおっか」

鼎「あはは……秘密ばらすの早いね」

八弥子「黙ってるの苦手だしねー。 でさ、ちょっと本気の話」

「ナギっちがカナカナを任せたって言ったじゃん?
あれね、ヤヤは嬉しかったんだよね」

鼎「嬉しかった……?」

うんうんとヤヤが頷く。

八弥子「だってさ、ナギっちに遠慮せず、カナカナに触れていいし、
もちろん好きだーって言ってもいいもん」

「カナカナはさ、ヤヤに無いものをしっかりと持ってる。
そゆとこ、大好きだったんだよねー」

臆した様子も無く、照れるようなことをヤヤが言う。

御陰でまた顔が熱くなったのが分かる。

「敬語をやめてもらって、距離を縮めて――
でも、ヤヤはそこで満足。 これでゴールなんだよね」

鼎「またその理屈? ちょっと分かんない」

「ヤヤがそう言ってくれても、私は言えないの?」

八弥子「そゆことー、その気持ちがラブに近いものならね」

また唐突に出てきた単語に目を輝かせる。

ら、ラブって……それって……そういう意味でいいの?

でも、この場合は話の流れからして、きっと――。

そんなことを慌てて頭の中で整理していた時。

チュッ――と啄ばむ音を立てて、
私の額にヤヤの唇が触れていた。

鼎「わっ……わわわ……」

八弥子「ふふふーっ、ヤヤはカナカナのことはラブだよー」

にこやかに言われるけど、額に感じた感触がまだ残ってて、
どうにも言葉が出てこない。

「ホントはカナカナが嫌じゃなければ、もっと触れたいんだけど、
そーゆーの、アウトだしね。あ、ヤヤのルールでね」

性別やらそういうのは置いておいてと言われても……。

これって、どういう風に解釈しても、
単純な答えに辿り着けてしまう。

鼎「むぅ……これ、誘われるだけ誘われてるみたい」

八弥子「あははっ、そうかもね」

ヤヤが声を上げて笑いながら、私の頭を再び撫でる。

八弥子「カナカナがフリーになったから、
ついつい調子に乗っちゃったよー」

鼎「私は元々フリー……っていうか、
理由があるなら教えて欲しい」

「誘われるだけって、何だかもやもやするよ」

八弥子「カナカナはおっぱい大きいの好きだもんねー」

鼎「そ、それはそうだけど、はぐらかさないでっ」

素直にまず認めてしまえる自分が少し悲しいけど、
ヤヤに食い下がっておく。

そんなやりとりをしていた時、
校舎からチャイムの音が響いてきた。

八弥子「さーて、授業だよー。遅刻するとヨーコ先生が怖いぞー」

鼎「……後でまた聞くからねっ」

八弥子「ふふっ、これが頑固なとこかなー」

鼎「むぅ、どうせ頑固者だよ。じゃあ、また昼休み」

八弥子「うん、また後でねー」

しれっと手を振るヤヤを一睨みしてから、
私は校舎へと急いだ。

色々言われたけど、遅刻すると葉子先生が
怖いのは確かだし――。”
守るための力 八弥子の力、境遇

八弥子“「んー? カスミ、お堅いこと言うなら
ヤヤは帰っちゃうよ? それに、今のカナカナを
一人にするのって危ないじゃん。ね?」

ヤヤが廊下へと視線を移す。

その先では腕を組んだまま、
柱にもたれている人影があった。

真琴「――否定はしません。
勾玉を奪う指示は継続中です」

神住「はぁ、中村さん、今は儀式に関しての指示を優先
する時ですわ。 ご理解頂けてると思っていましたが」

真琴「当然、優先するべきことは分かっています。
ただ、指示を取り下げられた覚えが無いので、
答えたまでです」

そう語った後、
中村さんが一瞬だけ私を睨み付けていく。

隙あらば――
そんな雰囲気が嫌な緊張感を呼び起こす。

神住「……とにかく、既に存じているものとして
お話しますが、巫女は私と中村さんの二人で務めます」

「ただ元よりこの組み合わせは予定されておらず、
一対としての経験が全くありません」

「そこで松籟会から受けた指示は、禰津さんを相手に
して、一対の力を儀式までに完成させることです」

遠山先輩の話に私は眉をひそめる。

鼎「そちらは一対なのに、ヤヤは一人なんですか?
そんなの練習に思えないですよ」

ヤヤを疲労させた隙に私を狙うんじゃないか、
そんな疑念を抱く。

八弥子「カナカナ、心配いらないよー。
ヤヤの家ってこういう時のためにあるようなものだしさ」

鼎「……ヤヤ?」

八弥子「いい意味でも悪い意味でも、
力が他の血筋より強いんだよね」

神住「そういうことです、高遠さん。禰津さんの家系は
その為に巫女候補として選ばれ続けているのです」

巫女候補……?

それって、ただの練習相手って意味にしか聞こえない。

「思うところはあるでしょうか、
これも島のルールです。高遠さん、今のあなたが
口を出していいことではありません」

鼎「……もう巫女候補じゃないからですか?」

神住「そうです。 それに残された時間は少ないのです」

鼎「時間? 儀式はいつ行う予定なんですか?」

神住「……今のあなたにそれを教えると思いますか?」

ばっさりと切り捨てられた気がするけど、
最もな言葉だった。

今の私は問題視されて然るべき。

無暗に情報を渡すことは出来ないだろう。”

(森に到着)

松籟会の危険性 八弥子の力、境遇

神住“「高遠さん、巻き込まれて
怪我をしても責任は負えませんわよ」

鼎「今はそれ、警告じゃなくて脅しに聞こえますよ?」

神住「私はあなたの身を案じて言っているのです」

遠山先輩が心外だと抗議をするが、
隣にいる中村さんが失笑していた。

真琴「フッ、私達は松籟会に縁ある者、
そう思われて当然でしょう。
それにそうなる可能性も実際にあるのですから」

これは……脅しだろう。

そんなあからさまな中村さんの態度に、
遠山先輩が顔を顰める。

神住「中村さん、いい加減になさい。それ以上は
お爺様を通して、中村家に抗議させて頂きますわよ」

真琴「ご自由に。聡明な遠山家なら、事故の
一つや二つ――起きることは想定済みでは?」

神住「…………」

反論が出来ないのか、遠山先輩は唇を噛む。

そんな二人の様子を見ていたヤヤが私の肩をつつく。

八弥子「カナカナ、平気平気。むしろ事故が
起きるのは、カナカナを脅してる方だからさー」

鼎「ヤヤ……?」

驚く私を余所に、ヤヤが一歩前へ歩み出る。

八弥子「間違ってないよね? 二人とも?」

真琴「そうですね。 その事故もあり得る話です」

神住「…………」

目を伏せた後、遠山先輩が重いため息をつく。

「どちらもあってはならない事故だと、
私個人は思いますわ。だから言っておきます、
くれぐれも注意して下さい」

しかし、遠山先輩の鋭い言葉に
返事をする者はいなかった。”

(八弥子の勝利後)

戦いを終えたヤヤが私に振り返り、
得意げに笑みを浮かべる。

八弥子“「ふふんっ。カナカナー、どうだった?」

鼎「凄いね……今のがヤヤの本気?」

八弥子「んー、本気は本気だけど、
真面目にやった感じ?」

ヤヤの言葉の意味が今一つ掴めず、私は首を傾げた。

鼎「真面目じゃないパターンもあるの?」

八弥子「ほら、言ったじゃん。
力に溺れたら、真面目じゃない感じ」

鼎「うーん、想像出来ない」

八弥子「想像しなくていいよ。
ほら、終わったみたいだし、帰ろー」

遠山先輩達は戦闘の反省点を話あっているみたいで、
私とヤヤを気にしている様子は無い。

鼎「うん、分かった。 ガジ、ヤヤのところにお帰り」

ニャンと腕の中で鳴いた後、ガジは地面に降り立ち、
ヤヤの足元へ駆け寄っていった。

八弥子「そうだ、カナカナ、明日遊びにいこーよ」

ガジを抱きかかえたヤヤがそんなことを言う。

鼎「遊びに? そんなところあったけ?」

八弥子「うんうん、島の南にショッピングモールとか
あるんだよ。 学園前からバスも出てるし楽ちん!」

鼎「へぇ、それは行ってみたいかも」

八弥子「じゃ、決定だねー!」

とても戦闘があった後とは思えない会話を交わしつつ、
私達はその場から引き上げていく。

寮に戻った後は夕食を食べ、
しばらくすると消灯時間を迎える。”

脚本
⇒鼎の言うおっぱいラブに続き、
ここでも日本語で“愛”という言葉を使っていない事に注目
 
演技
   
演出    
作画
   
補足
   







  4-3-4
5-1
状況
楽しみであまり眠れなかった鼎。ロビーで八弥子と話す。
神住からは連絡は来なかったという八弥子。
鞄を手にした葉子が現れる。お茶を買って来て欲しいという。
葉子の事を話ながら寮を出て、校門前のバス停へ。
洒落た街並みに驚く鼎、リゾート地でもあると言う八弥子。
手を繋ぎ、歩いて行く八弥子と鼎。
ガジのキャットフードなど、買う物は多い。揚げパンを食べる。
ガジの猫毛に奈岐を思う鼎。頼継と共に行方不明だと言う八弥子。
その件を受けて、おそらく葉子は学園に向かったのだという。
それらを聞き、遊んでいる事を気に病む鼎。
しかし、これが目を眩ませる事になる、と、八弥子。
今度は魚料理を食べに行く。それから数件店を回り、
ウィンドウショッピングを楽しむと、陽が傾く。
バスに乗り、帰路に着く。しかし、道の途中で下ろされる。
帯刀した真琴が現れる。奈岐と頼継と昌次郎の行方について
聞かれる。真琴との戦闘が始まる。八弥子優勢だが、
捨て身の真琴に対し、力を満足に振るえない。
止むを得ず、助けに入ろうとする鼎。そこへ由布の威嚇射撃。
投降する八弥子と鼎。鼎に謝る八弥子。八弥子の手を握る鼎。
徒歩で寮に帰り、自室へ
自室に戻ると、やはり由布の姿は無い。
一人の状況に危機感を覚える鼎。
鞄に制服や下着を詰め込み、八弥子の部屋へ。
頼継に言われていた通り、
葉子か末来に頼ろうと言う鼎。
葉子に迷惑をかけてしまう、と、八弥子。
末来を訪ねるが、不在。
八弥子の部屋に戻り、施錠する。
その後は問題無く、疲労から眠りに就く。
心配して戻って来た奈岐に、
八弥子が何かを頼む。
翌朝、朝食、通学共に問題無し。
葉子に、真琴達は欠席だと聞いてくる八弥子。
由布と神住も同様に。
末来は昨日の晩から連絡が無い。
水面下での動きが感じられる。何事も無く、
授業を受け、寮に戻り、食事を終える。
八弥子の部屋へ
時間
三十三日目・朝 ~ 〃・夕
三十三日目・夜 ~ 三十四日目・朝 ~ 夜
場所
寮・ロビー ~ 学園・校門前 ~ ショッピングモール ~ 港 ~ 道路 ~ 海岸
寮・自室 ~ 寮・八弥子の部屋 ~ 寮・廊下
~ 寮・ロビー ~ 学園・正門前 ~ 学園・廊下
設定
・八弥子と葉子は従姉妹
・葉子は力に溺れるタイプ
・子供の頃に葉子の事で色々あって、八弥子はそれを見て来た

・島の南、お洒落な街並みが港の方まで続いている
・閉鎖的な島ではあるが、表向きはリゾート地
・港は入り江にある
・異国風になっていて、クルーザーが停泊

・八弥子が一年生の時、ガジは夜中に抜け出して
食堂のご飯を漁っていたことがある
・ガジは調子に乗ると何でも食べ続ける
 
伏線(大)
   
伏線(小) 葉子の実力 八弥子の力、境遇

八弥子“「学園を卒業してから次第に落ち着いていったねー」

鼎「昔はそうじゃなかったの?」

八弥子「んー、喋り方とかは変わってないけど、
もうちょっとアクティブだったかなー」”

“「ヤヤと同じ家だから、巫女候補だったしさ、
色々やってたわけなの」”

“「それはそれは結構派手にやってたみたいでね、
ヨーコ先生、色んな二つ名がついてたみたいだよ」

鼎「想像出来ないなぁ……あんなにおっとりしてるのに」

「ほら、戦いになると恵みたいに怯えちゃいそうで」

八弥子「無いなー、うん、無い」

八弥子さんがどこか達観した様子で言う。

「敵を見つけたら、喜々としちゃうからなぁ……」

鼎「……ますます想像できないよ、それ」

八弥子「ヨーコ先生はヤヤの血筋らしいタイプだったからね」

「ほら、力に溺れちゃうタイプ。戦いになると我を
忘れちゃうっていうかさ、人が変わるんだよね」

鼎「まるで見てきたみたいだね」

私がそんな感想を告げた時、ヤヤの笑顔が僅かに凍り付く。

八弥子「うっ……あー……子供の頃、色々、ね……」

鼎「……?」

首を傾げていると、遠くからバスのエンジン音が聞こえてきた。

八弥子「ほ、ほらっ、カナカナ、バス来たよー!」

何故か少し慌てた様子でヤヤがそう言う。

もしかして……子供の頃、先生と何かあったのかな?

鼎「トラウマ?」

八弥子「ひっ!」

ヤヤがぶるっと身を震わせる。

どうやら、それで、間違いなさそうだった。

でも、葉子先生が……うーん、やっぱり想像出来ない。”
 
テキスト
八弥子と鼎 八弥子の力、境遇

鼎“「ふふっ、楽しいデートだったよ」

八弥子「んー? デートって言っちゃってもいいんだ?」

鼎「手まで繋いでるのに?」

八弥子「ふふっ、カナカナは誘いに乗っちゃってるのかな?」

少し意地悪な笑みを浮かべたヤヤが私の顔を覗き込む?

鼎「また好きになったらダメとか言うつもり?」

八弥子「おー、正解」

「カナカナはヤヤにとって眩し過ぎるぐらいなんだよね。
だから、そのままキラキラしてて欲しいの」
 
鼎「むぅ……変な例え。ちょっと分かんないよ?」

八弥子「そのまんまの意味なんだけどなー」

ヤヤが苦笑した時、帰りのバスが道路を走ってくる。

「じゃ、カナカナ、帰るまでがデートだよ」

鼎「それ、また誘ってる?」

八弥子「生殺し?」

「私の台詞だよー」

口先を尖らせると、ヤヤがクスクスっと笑う。

八弥子「ヤヤはカナカナのこと、大好きだからねー」

鼎「またそういうこと言う」

八弥子「ふふーっ、カナカナはそうしてキラキラしててね」

ヤヤが楽しげに笑った時、バスが目の前で停車する。

この日、ヤヤが言った言葉の意味――
すぐには理解することなんて出来なかった。

でも、それが必ず明らかになるものだときづいていたからか、
ヤヤは私にそう言ったんだと思う。

ヤヤに私は眩しすぎるぐらいの存在。

きっとそれは陰陽の関係みたいなもので。

ヤヤが心に抱えているものを知った時、
ようやく私はそれを理解出来るのだろう。

ただその全てを知った上でも、
私はきっとヤヤのことを――。”

松籟会の危険性

真琴“「理事長と秘書、向山奈岐はどこへ消えた?」

鼎「そんなこと知ってると思う?」

真琴「向山奈岐はお前が一対として選ばれた相手だ。
何か少しぐらいは聞いているだろう?」

私じゃなくても、と中村さんがヤヤを見る。

八弥子「知ってても答えないけどねー」

真琴「禰津先輩、それは松籟会への反抗と見なされますよ」

八弥子「理事長も松籟会の人なのに。行方を知らないなんて変なの」

松籟会の内側から食い破る――そう言っていた鬼子の人。

奈岐の言った通り、鬼子が二人も突然姿を消し、
松籟会は慌てて行動に出ていた。

真琴「……やはり聞いて答える人達ではない。
ただし、このまま引き下がる事は許されていない」

そう呟いた中村さんが懐から星霊石を取り出す。”

八弥子「勝ち目なんてないのに?」

真琴「勝算がなければ、引き下がる許可は出ているでしょう」

八弥子「ほうほう?」

真琴「禰津先輩、今回は勝算があるのです」

中村さんが道路から見える海岸に視線を向ける。

真琴「場所を変えましょう。それともここでやりますか?」

八弥子「ここじゃまずいよ。それはマコが一番分かってると思うけど」

「二択です」

中村さんが空いた手で刀の柄に手をかけた。

巫女の力を使わずにやるか、それとも場所を変えて力を使うか。

八弥子「カナカナ、先に寮へ戻ってて――と思ったけど、
今、一人にするのはまずいかー」

鼎「先に帰るつもりも無いから。帰るまでがなんとやら、だよ」

「あはは、そうだったね。じゃ、マコ、下で」

ヤヤが防波堤に手をかけ、ひょいっと飛び乗る。

真琴「高遠鼎、勾玉をこちらへ渡せば、すぐに戦いを止める。
よく覚えておけ」

中村さんは刀から手を離し、防波堤を乗り越えていく。

鼎「……物騒だなぁ」

でも、中村さんが言ってる勝算って……?

ヤヤに対して、昨日も一昨日も勝ち目なんて無いことを
思い知っているのに?

どういうつもりなんだろう?

鼎「…………」

ヤヤ達に遅れまいと私も海岸へ向かう。

浜辺に出たところで中村さんが私達へ振り返る。

真琴「さて、これ以上は語るより力を使った方が早いでしょう」

八弥子「うん、それは同意だけど、いいの?」

真琴「フッ、愚問ですよ。手ぶらで戻っていい指示は出ていません」

中村さんが星霊石を輝かせ、炎の力を発現させていく。

引くつもりもなく、脅しでもなく、本気だった。

八弥子「ま、いいけど、怪我しても知らないからね」

ヤヤが荷物とガジを下ろすと、星霊石を輝かせる。

砂を舞い上げる風が吹き付け、ヤヤの力が解放されていく。

中村さんに何かなければ、ヤヤに勝てる要因が無いはず。

でも、今のところは……いつもと違いが分からない。

ヤヤの力もいつも通りで、中村さんの炎も同じだ。

ヤヤを中心に風が走り抜け、巫女装束と得物が出現する。

「さて、マコマコ、どういうつもりかなー?」

未だに読めない中村さんを挑発するようにヤヤが訊く。

真琴「それは私の刃を受ければ分かることでしょう」

強くなった風を巨大な剣で切り、中村さんが構えを取る。

八弥子「やれやれ、荒っぽいねー」

真琴「フッ――いきますよ」

中村さんの炎が強まった瞬間、大剣を手にした彼女が駆け込む。

ヤヤは鎖を振るい、その突撃を迎え撃った。

風に吹き飛ばされた中村さんが砂浜に投げ出される。

だが致命傷には至らないのか、受け身を取った後、
すぐに大剣を構え直した。

八弥子「やるじゃん――っていうか、どういうつもり?」

真琴「どういうつもりとは?」

ヤヤが再び風の力を片手に集束させながら問いかける。

八弥子「穏便に済ませようって気がまったく無いよね」

真琴「時間が残されていないと言いましたよ」

「だから、ヤヤが相手でも容赦しない?」

真琴「ええ、それが唯一の勝算です」

中村さんが炎を携えた剣を振るい上げ、
砂浜を駆けていく。

そして、守りを度外視した一撃をヤヤへ向けて放つ。

八弥子「ッ――!?」

回避したヤヤが反撃を試みようとして、
ギリギリのところで止めてしまった。

そっか、今、攻撃してしまえば……中村さんは致命傷を負う。

真琴「そろそろ気付きましたか。禰津先輩、あなたが練習として
私に勝てても、本気で私を倒すことは出来ない」

「私を倒せば、今年の巫女が失われる」

「付け加えるならば、禰津先輩の力を守り無しで受けてしまうと、
軽傷で済みません。重傷、下手をすれば死に至ることでしょう」

だからこそ、守りを捨てた攻撃を躊躇いなく放てる。

「それに……噂と違い、随分とあなたは大人しい。
本気を出すことに迷いがある」

八弥子「…………」

ヤヤに中村さんが倒せないと知った上での戦い――これが勝算?

普通に考えるなら、捨て身もいいところだけど、
中村さんは確信を持って攻撃してきている。

これじゃ、どちらかが力尽きるまで続く……?

真琴「もう一つ。必要ならば、
私はあなたの命を奪うようにと指示を受けています」

「私はあなたを殺すつもりでやっています。
しかし、あなたは違います」

八弥子「……そんなにしてまで、カナを狙いたい?」

真琴「勾玉を奪う指示、そして私怨――充分でしょう」

八弥子「ヤヤはカナを守るよ」

真琴「……フッ、初めて私をおどしましたね。
その気になれば、やれるということですか」

ヤヤの周囲を取り巻く風が毛色を変える、

冷たく鋭い風が吹き始めた。

まるで風自体が殺気をはらんでいるように思えて、
ぶるっと私は肩を震わせる。

真琴「ただ脅しに屈するつもりはありません。
本気で来るならば、それまでのこと」

中村さんが再び剣に炎を宿す。

その姿を見たヤヤが唇を噛む。

何を言っても、ヤヤは中村さんを手にかけるつもりは無い。

だったら、せめて無力化する方法を……。

鼎「…………」

私は抱いていたガジを下ろすと、右手に勾玉を握る。

使うなと散々注意されていたけど、今ばかりは避けられない。

真琴「ッ!? 止めろっ!!」

中村さんが私に気付き、声を荒げていた。

でも、この状況を打開するには――。

八弥子「カナッ、危ない!!」

ヤヤが私の前に滑り込み、
風を纏った右手を大きく横へ薙いだ。

同時に光の弾が海側へ弾け飛んでいく。

鼎「えっ……?」

真琴「……こうなることも想定済みですか。
どうやら勾玉に関しての利害は一致している様子」

由布「っ……勾玉の使用は防ぎました」

神住「ごめんなさい、由布……あなたにこんなことをさせて」

由布「でも、私にしか……この距離からは撃てません」

神住「……狙いを引き続き、高遠さんへ。勾玉が見えたら狙撃を」

由布「分かりました、神住姉様」

鼎「そんな……」

今の攻撃は……由布の銃で間違いない。

松籟会が手を回して由布に撃たせている。

真琴「風間家は利口だ。 それでいい」

八弥子「……やり方、最低だよ。友達に撃たせるなんて」

真琴「禰津先輩、事態がそれだけ深刻ということです。
分かっていただけるなら、勾玉を渡して下さい」

「風間家や遠山家が絡んでいる以上、私がこの場で
高遠鼎を手にかけることは出来ないでしょう」

「間違いなく背中から撃たれます。
ただし勾玉を渡せば、無事は確約されたと思って下さい」

弾が来た方角に目を逸らす。

海岸線――堤防の上に、点のような人影が見える。

何百メートル離れているのか分からないけれど、
ここから何かして由布を止めるということは不可能だろう。

八弥子「…………」

目を伏せたヤヤが右手に力を集束させていく。

巫女装束と巨大な得物は星霊石へと変わり、
ヤヤの姿が元に戻る。

「ごめん、カナ……ヤヤが迂闊だった」

そして、ヤヤが中村さんの足元に星霊石を放り投げた。

鼎「ヤヤ……」

八弥子「友達同士、こんなことしちゃダメだよ……」

「……心が穢れに持って行かれる」

鼎「…………」

手の中に勾玉はある。

でも、これを使えば、ヤヤの守りが無い今、
無防備なところ、由布の狙撃を受けてしまうだろう。

それはここから逃げ出そうとしても同じこと。

足を撃たれるだけなら、まだ運がいい方だろう。

ヤヤが降参したように、もう打てる手がなかった。

鼎「ヤヤが謝ることないよ」

私は勾玉を一度強く握り締めた後、中村さんの足元へ放り投げる。

僅かに砂を散らし、お母さんの勾玉が浜辺に転がった。

真琴「賢明だな」

中村さんが勾玉とヤヤの星霊石を拾い上げる。

真琴「禰津先輩、星霊石を必要時以外は預からせて頂きます。
高遠鼎のために力を使われては困りますので」

八弥子「…………」

真琴「あと一つ。理事長と向山奈岐の行方、何か知っていませんか?」

八弥子「出て行くって話だけ聞いた。 行き先までは知らない」

真琴「鬼が二匹、素直に喋っているわけも無いか……」

「今は目的を達成しました。素直に引き下がります」

ただし、次は無い。

そんな視線で中村さんが私を睨み付けた後、踵を返していく。

八弥子「……カナ、ごめん。 守れなかった」

鼎「充分だよ。 私一人ならとっくにやられちゃってる」

八弥子「…………」

ヤヤの視線はつま先に落ちたまま戻ってこない。

かける言葉が見つからず、私は彼女の手に触れ、握り締める。

ヤヤの手は僅かに震えていた。

それが悲しみによるものなのか、怒りよるものなのか。

それとも、そんな感情が混ざり混ざったものなのか――。

八弥子「……ごめん」

ただそう呟いた彼女の声色はどこか冷たく、
僅かに私の背筋を震わせる。

その謝罪が意味していた本当のところを、
今の私が知る由もなく、幾度かまばたきを繰り返しながらも
ヤヤの手を握り続けた。”
八弥子と鼎
鼎の優しさと強さと公平さ

八弥子“「……とりあえず、ヤヤから離れないで」

鼎「何か方法あるの?」

八弥子「方法ならある」

鼎「……どんな方法?」

八弥子「言えない。でも信じて」

鼎「…………」

私を見るヤヤの視線は鋭い。

嘘は言っていないと思うけれど、
でも何がある……?

ただ何よりも。

鼎「ヤヤに信じてって言われて、
嫌とは言えないよ」

八弥子「……カナ」

鼎「とりあえず、どうするの?」

八弥子「ヤヤの部屋に戻ろう。安全にするから」

鼎「……?」

安全にするという言葉の意味が分からず、
首を傾げるが、ヤヤからの説明は無い。

私の手を再び掴むと、来た道を戻り始める。

ヤヤは部屋に戻ると、素早く施錠した。

そして、私へ振り返り、
僅かに違和感を感じる笑顔を見せる。

八弥子「覚悟決めたから、もう平気だよ」

鼎「ヤヤ……?」

八弥子「何か起こってからじゃ遅いから。
カナカナにはガジをお願い」

ヤヤが足元にいたガジを抱きかかえると、
私に差し出す。

鼎「えっと……ヤヤのことは信じるよ。
でも、私だけじゃなくてヤヤも平気なんだよね?」

八弥子「うん、それももちろん。
ただ覚悟の問題だっただけ」

ヤヤからガジを受け取ると、
いつものようにニコリと笑った。

八弥子「カナカナは今度こそヤヤが守るよ。
何があっても」

鼎「……ヤヤ」

八弥子「落ち着くまで自分の部屋には
戻れないだろうけど、それだけ我慢してね」

守ると言ってくれたヤヤの言葉通り、
その日はそれ以上何も起きなかった。

空いているベッドを借りて、眠りに就くときまで、
確かに私は安全だった。

中村さんからすれば、
好機に違いないはずなのに……。

そんなことを考えながらも、
目を閉じてシーツにくるまっていると
疲労感からか意識が闇に落ちていった。

(奈岐が訪れ)

八弥子「――心配して
戻ってきてくれると思ってた」

奈岐「無事のようだが、
勾玉と星霊石を失ったか」

八弥子「ナギっち全部お見通しだねー」

奈岐「どうするつもりだ?
鼎をかくまう方法ならあるが」

八弥子「ううん、それは平気。
それより知りたいことがあるんだ」

奈岐「知りたいこと?」

八弥子「詳しくはヤヤの頭の中を覗いて」

奈岐「……本気か?」

八弥子「明日の晩までに分かりそう?」

奈岐「難しいことではない。だが、
それでいいのか?」

八弥子「ナギっち達が動くわけにもいかない
だろうしさ、ヤヤにしか出来ないよ、きっと」

奈岐「…………」

「分かった。明日の晩、また来る」

八弥子「ありがと、ナギっち」”

⇒“覚悟”とは、以前の自分(獣)に戻ること

⇒八弥子が知りたい事は、
勾玉と八弥子の星霊石の在りかについて

消え入りそうな鼎

鼎「うーん……」

何かが起きているのは確かだけど、
それが何かは分からない。

このもやもやとした気持ち、
どうすればいいんだろう。

いつもの癖で勾玉を探してしまうけれど、
あれは松籟会に取られてしまったんだった。

鼎「はぁ……お母さん、嫌な予感しかしないよ」

思えば、昨日からずっとだ、
と私は長いため息を漏らす。”

脚本
⇒八弥子の真実に関して、葉子の存在が緩衝材になっている。
つまり、葉子を通す事で間接的に八弥子を知る事になる

⇒松籟会の在り方について、奈岐の知識を通す事で、
八弥子が事情通であるのが自然に感じられる

⇒言うまでも無く、巫女の力は一般人には秘密

⇒友達を撃つなんていうのは、酷い話だが、
神住の頼みか、松籟会に家族を
人質にでも捕られていれば止むなしだろう。
鼎の独白と真琴の台詞で由布をフォローしている
 
演技
   
演出    
作画
   
補足
八弥子“「松籟会も昔みたいに権力だけで島民の気持ちを集めることが
出来なくなったって――これ、ナギっちの受け売りだけど」”

“「ま、ヤヤは難しいこと考えないし、楽しいところがあれば、
それはそれでいいじゃんってね」

鼎「あはは、それもそうだね」”

⇒この辺りは、悪い所があったとしても、
良い部分は良い部分として受け入れる姿勢が、
八弥子自身に対する願いでもあるのだろう
 








  5-2 6-1
状況
八弥子と今後の事を話す鼎。
勾玉と八弥子の星霊石を取り返そうと提案。
どうするのかと問う八弥子。
鼎、奈岐か頼継を捕まえようと言う。
少しして、肌を重ねる八弥子と鼎
奈岐と落ち合う八弥子。覚悟を問う奈岐。
奈岐、頼継の名で真琴を呼びだしたと言う。
出汁としたのは、真琴の母親。
八弥子、真琴の所へ
時間
三十四日目・夜
場所

寮・ロビー
設定
   
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
鼎の強い意志、母への想い
鼎のそういった知識

鼎“「……ヤヤ、このまま儀式まで何も起こらないと思う?」

八弥子「んー、それは何とも言えないかなー。
ナギっち達次第じゃない?」

椅子に腰をかけ、うーんと伸びをする。

鼎「私さ、何だかずっと嫌な感じがしてるんだ」

「勾玉が無くて落ち着かないっていうか……
あ、別にヤヤを責めてるわけじゃないからね」

八弥子「気を遣わなくていいよー、ヤヤは平気だから」

笑顔のまま、ヤヤがベッドに座り、ガジを膝の上に乗せた。

鼎「末来さんと連絡取れないし、お母さんの手がかりが
無くなっちゃったみたいに思えて……」

鼎「それに、私の目的はお母さんに会うことだから、
このまま何もしないでいたらいけない気がする」

八弥子「じゃあ、カナカナは何をしたらいいと思う?」

鼎「それは……」

実際、今の私に何が出来るだろうと考える。

勾玉を無くした途端に身動きが取れなくなった?

それだと……勾玉を私から取り上げようとした人達の
思惑通りじゃないだろうか?

でも、巫女の力が無い今、私に何が出来る?

鼎「……ヤヤ、勾玉と星霊石を取り返そう」

何か出来ないなら、何か出来るようにすればいい。

その為に必要な物が見えているなら、行動するだけ。

八弥子「お、カナカナ、強気に出たねえ。だけど、どうやって?」

鼎「そこは思いつかないから、賢い人達の知恵を借ります」

「奈岐か理事長、どっちか捕まえよう」

八弥子「ふふっ、それは妙案。じゃ、それで動いてみよっか」

鼎「うん」

ひとまずの目的が見えると、もやもやとしていた気持ちが晴れる。

我ながら単純なものだと思うけれど、
じっとしていると落ち着かないのが性分なのだろう。

八弥子と鼎

鼎「ね、ヤヤ」

椅子から立ち上がり、ヤヤのいるベッドに腰をかける。

八弥子「んー、何? 何かいいこと思いついた?」

鼎「私がヤヤを好きになったらダメってのは継続中?」

八弥子「カナカナ、唐突だねー。どうかした?」

鼎「でも、ヤヤは私のことを好きでいてもいい」

八弥子「うんうん、ヤヤはカナカナのことが好き」

鼎「なら、問題ないよね」

八弥子「うん?」

もやもやとした気持ちがすっきりした後、
次にやってきたのは、ヤヤと私の関係だった。

距離感を感じないのに、何か食い違えたようでいて、
これがまた落ち着かない。

なので、ここも行動で解決してみるのはどうだろう。

鼎「ヤヤにはリードされっぱなしだし、
多少は強引にいかないとね」

八弥子「んー?」

鼎「ヤヤ、もう一回だけ訊くね? 私のこと、好きなんだよね?」

八弥子「うんうん、大好きだよ」

鼎「ラブ?」

八弥子「ラブ」

鼎「よし、じゃあ遠慮なく!」

八弥子さんの肩を掴み、そのままベッドに押し倒す。

八弥子「ちょっ!? カナカナ!?」

鼎「ね、ヤヤ、ちょっと目を閉じて」

八弥子「目を閉じるって……やること一つだよね?」

鼎「うん」

八弥子「この……正直者……」

そう言いつつも目を閉じてくれたヤヤの唇に顔を寄せる。

そして、一度だけちゅっと啄ばむ音を立てて、
唇を重ね合わせた。

鼎「ふふっ、ヤヤとキス出来た」

八弥子「カナカナ、キスだけで終わる顔してない」

鼎「さすが、ヤヤの勘は当たるねー」

今度は頬に口づけながら、ヤヤの制服に手をかける。

八弥子「か、カナカナ、ストップ」

鼎「こういうの、知識だけでどこまで通用するかな?」

ここまで来れば、あとは勢い勢い――と自分に言い聞かせる。

八弥子「だ、ダメだってば、カナカナ!」

鼎「ダメじゃないよー? だって、ラブなんでしょ?」

八弥子「カナカナ、強引っ!?」

鼎「ふふふっ」

思ったよりもヤヤの抵抗が少ないので、
スムーズに行為へ移行していく。

押し倒した勢いのまま、ヤヤの乳房に吸い付いていく。

八弥子「ちょっ、カナカナ? ほ、本気っ?」

こくこくと頷きながら、左手をヤヤの下腹部へ這わせる。

こういった経験は無いので、勘と勢い任せに、
ヤヤのショーツを指先でなぞっていく。

ふくよかな胸の感触を堪能したいところだけど、
今は意図を持って、舌先を動かす。

鼎「ちゅっ……んっ……ちゅっ……」

八弥子「んっ……カナカナ、ダメだってば」

ヤヤから聞こえる抗議の声を無視したまま、
私の舌は乳倫から中心の先端へ。

舌先が僅かな突起を捕えると、そのまま口内へ導いて、
ちゅぅっと音を響かせて吸い付いた。

鼎「ちゅぅっ……んーっ……んっ、ちゅっ……」

八弥子「はぁっ……んんっ、カナ、ホントに……」

私は本気だよ、とヤヤに頷きながら、
口内に含んだ乳首を下の腹で転がす。

すると、びくんっとヤヤの身体が僅かに跳ねる。

「っ……んっ……カナ……はぁっ、んっ……」

感じてくれている――
そんな嬉しさから、私は下を力強く動かす。

すっかり固くなった尖端を弾くようにして、
ヤヤに愛撫を繰り返していく。

八弥子「はぁっ……んっ……胸、そんなにされると……」

「んぅ……身体、熱くなってきて……はぁ……っ……」

耳元で感じる吐息に、胸の高鳴りを感じながら、
下腹部に這わせた手を動かし始める。

ショーツの上からでも分かるぐらいに熱をはらんだ陰部を
人指し指でなぞった。

八弥子「っあ……あっ、んっ……カナ、そこっ……」

「そんなことされたら……っく……あっ……あんっ……」

鼎「ちゅっ……ふぅ、そんなにされたら……感じちゃう?」

聞いてみたくなったので、少しだけ唇を離す。

八弥子「うぅ……カナカナ、それ、言わせるの反則だよ……」

鼎「だって、こういうの初めてだし、感想聞きたいもん」

期待を込めた眼差しでヤヤを見つめる。

ヤヤにしては珍しく頬を赤らめながら、私を見つめ返す。

八弥子「それは……その……カナの指だから、感じちゃうよ……」

鼎「ふふっ、そう言ってくれるの嬉しい」

「だから、もっとしちゃう」

そう宣言してから、再び乳房に口付ける。

そして、乳首を口内に含むと、
さっきよりも勢いよく舌で転がしていく。

八弥子「んあっ……カナ、それ……激しっ……!」

「はぁっ……んっ、声抑えられないよっ……んんっ……!」

鼎「抑えなくていいよ、ヤヤの声、もっと聞きたい」

ちゅっと乳首を吸い立てた後に囁く。

左手で感じるショーツは湿り気を帯び始め、
ヤヤの身体がさらに熱くなっていた。

八弥子「カナ……エッチなこと、ホントに初めて……なの?」

鼎「うん、ヤヤは経験有り?」

八弥子「それは、無しだけど……」

鼎「だけど?」

八弥子「カナカナ……手慣れてる……」

ヤヤの言葉に思わず吹き出しそうになる。

鼎「ひょっとして、そういう才能があったのかも」

八弥子「うぅ、ホントにありそう……」

もしそうだとしたら、嫌がられるよりはずっといいと思う。

どういう形であれ、好きな人に喜んでもらえるのは嬉しいこと。

なので、遠慮無く――若干、自身を得て、私を愛撫を再開する。

八弥子「はぁっ……んっ……んんっ……」

ヤヤが艶っぽい吐息を漏らすと、体温がさらに上がる。

ショーツをなぞるたびに、ぴくっと敏感に身体が反応してくれて、
不思議と愛おしい気持ちが溢れ出す。

もっとヤヤに触れて、声を聞きたい。

衝動に従うまま、舌と指の動きを速めていく。

八弥子「んっ……ぁ……カナ……はぁっ……んあっ」

鼎「胸とアソコ、どっちの方が感じてる?
とか聞いてもいい?」

八弥子「カナカナ……それ、もう聞いてる……」

思ったことが口から出ていたらしい。

鼎「じゃあ、その答えを待ってみる」

八弥子「そんなの……カナに触られると、両方感じるよ……」

ヤヤの顔がさらに赤くなっている。

こうも照れている彼女が珍しく、そして愛らしくて、
胸がさらに高鳴った。

鼎「ふふっ、ヤヤに恥ずかしいこと言わせちゃった」

八弥子「うぅ、カナカナに言わされた……」

クスッと微笑んでから、感じると言ってくれた両方に
愛撫を繰り返していく。

もっとヤヤの身体を熱くさせたくて、
舌と手を細やかに動かす。

八弥子「はぁっ……ぁ……んっ……」

ヤヤの震える吐息が前髪にふりかかる。

八弥子「あんっ……カナ……そ、そこ……ダメ」

下着をなぞる指先が僅かな突起に触れた時、
ヤヤから一際高い声が上がった。

鼎「そこ?」

少し意地悪に聞いてみる。

八弥子「カナカナ……分かってるくせに……」

鼎「ふふっ、だって聞いてみたかったんだもん」

八弥子「そーゆーの意地悪だよ……って……あんっ」

唇で乳首を軽く挟み込み、舌先でころころと転がす。

「んっ……んんっ……はぁっ……また……」

「はぁっ……カナってば、ホントにおっぱい好きなんだから……」

鼎「ふふっ、否定しません」

クスっと微笑みながら、指を動かすことも忘れない。

八弥子「あっ……んんっ、そこ……だ、ダメだってば……」

僅かなスリットを指先でなぞり、
上下にゆっくりと動きを繰り返す。

そして、突起を感じる部分は指の腹で押し込んで、
刺激を加えていく。

八弥子「はぁ……んっ……んあっ……」

「カナの指が……すごくエッチな感じで……あっ……んっ……
声出ちゃっ……んっ……ぁ……」

ヤヤが秘所の感触を確かめながら、ショーツの上から愛撫を続ける。

性別が同じだからこそ、身体の仕組みは理解出来ているつもり
だったけど、触れれば触れるほど不思議な感覚がした。

ヤヤの大切なところに触れていると思うだけで、
胸が熱く、さらに高鳴っていく。

鼎「ヤヤの声、もっと聞かせて」

触れるほどに感情が昂ぶり、彼女を求めてしまう。

乳房に吸い付き、左手の動きを加速していく。

八弥子「んっ……っく……はぁっ、ああっ……カナぁ……」

ショーツ越しだというのに、指先に湿り気が絡みついてくる。

それがヤヤの愛液だと思えば、さらに愛おしさが増す。

鼎「ちゅっ……ねえ、ヤヤ? もっとしてもいい?」

八弥子「んっ……はぁっ、はぁ……もっと……って?」

鼎「もっとエッチなこと」

具体的には、とヤヤのショーツをなぞっていく。

八弥子「……ぬ、脱がせるの?」

鼎「脱いでくれないなら、脱がせる」

八弥子「カナカナ、強引……」

そう言いながらも、ヤヤが脱がせやすいように腰を浮かせてくれる。

八弥子「うぅ……カナも脱いで」

鼎「いいよー。でも、私がヤヤにするんだからね」

八弥子「そこは譲らないんだね」

ヤヤに微笑んでから、自分の腰にも手をかけた。

「んっ、カナ……これ、恥ずかしい……」

鼎「でも、こうしてあげたいの」

服を脱がし終えると、口付ける場所を下腹部へ移行していく。

舌で身体のラインをなぞりながら、ヤヤの秘所に到着する。

八弥子「っ……ああっ……んっ……カナ、そんなとこ、舐めるの……」

鼎「指でするより気持ちいい?」

八弥子「すごく……変な感じで……はぁっ、あぁっ……んっ……!」

秘裂を舌で舐めあげる度に、ぴくっと太ももがわななく。

「ひぁっ、んっ……カナ……ダメ、刺激……強いっ……」

「はぁっ、んんっ! おかしくなりそ……あんっ……んっ……」

舌を動かせば、ぴちゃぴちゃと淫らな水音が響くほど、
愛液が零れ落ちてくる。

舌先でそれをすくいとり、陰核に塗り込めるようにして突く。

「んぁっ、うっ、んくっ、はぁ……はぁ、ああっ!」

陰核を責めれば責めるほど、膣口から愛液が
留まることなく溢れ、しーつにまで滴っていった。

「カナ……ダメってば……んっ、あっ……あぁっ……!」

逃げようとするヤヤの太ももを押さえながら、
再び陰核へ舌を滑り込ませる。

さらに熱く火照った陰部で、唾液と愛液を掻き混ぜながら、
舌全体での愛撫を続けていく。

「んっ、うっ、あっ……ん、んっ……はぁ、あっ、う、くぅ」

嬌声の間隔が短くなるにつれ、ヤヤは髪を乱して悶える。

そうして彼女が感じてくれればくれるほど、
私も熱く昂っていくのが分かった。

鼎「んっ……ちゅっ……ヤヤが
いっぱい感じてくれるのが嬉しい」

八弥子「ふあぁ、あ……んっ、カナ、そんなこと言うの……
意地悪……はぁっ、んんっ……ああぁっ……!」

私の愛撫に合せるかのように、ヤヤの太ももが震える。

ヤヤの昂ぶりを感じて、さらに刺激を強めていく。

陰核をなぞり、上で腫れ上がった陰核を口の中に含む。

「ひっ……あっ……んうっ!あっ……あ、あああぁっ……!」

「カナ、だめってば……そんなにしたら、おかしくなるっ……」

ヤヤの身体に緊張が走り、背筋が断続的に跳ね上がっていく。

「はぁっ……あぁっ、んっ、あんっ、んんっ……!」

「っ、あぁ……はぁ、んんっ……あぁぁ……
カナの舌が……動いてるっ……っああぁ……」

唾液を含んだ口内で陰核に吸い付き、幾度も刺激を繰り返す。

その間にも舌の腹での愛撫も忘れない。

鼎「ちゅぅ、んんっ……んっ……」

八弥子「んううっ!? そんなに吸ったらっ……はぁっ……んんっ!」

「カナ……っ、あぁっ、あっ、ああっ、んっ……!?」

陰核に吸い付く行為と舐めては転がす行為を交互に行う。

きっとそこまで来ているであろうヤヤの絶頂を手繰り寄せようと、
思いつく限りの愛撫で導いていく。

そんな刺激を受けるヤヤは髪を振り乱し、
シーツを掴んで嬌声をあげ続ける。

鼎「んっ、ちゅっ、ぷはっ、んんっ……ちゅっ……」

八弥子「やぁ、あぁ、んっ……はぁ、うぅ……くぅっ……!」

ぴくんっとヤヤの腰が跳ね、ベッドが軋む音を立てた。

「あぁっ、はぁっ、カナの舌が……激しくて……
んっ、あ、あっ……はぁっ……んんっ!」

「ダメ……中まで……熱く……なって……!」

「熱っ……身体、熱くて……カナ……あぁっ……!」

愛液がさらに溢れ出し、シーツに染みを作っていく。

もう堪えられないとヤヤが頭を振るい、
痙攣するかのように身体を震わせる。

「ああぁっ、はぁっ、くぅ……もうダメっ……カナ……!」

「くっ、あっ……だめ、だめっ……んんぅ……!」

すぐそこまで来ている絶頂への一押しをするため、
私はヤヤの陰核を強く吸い上げた。

「ひぁっ!? だめ、ひぁっ、んんっ、くっ……!
カナっ……カナ……んあああぁっ……!」

ヤヤの腰が一際大きく仰け反り、絶頂を訴える嬌声が響く。

「んあああぁっ! くううううぅっ……!!」

絶頂に声をあげたヤヤの身体が痙攣を起こしたように、
断続的に跳ね続ける。

そして、一度波が過ぎ去った後は、時間の経過と共に、
身体の震えもおさまっていく。

「はぁっ……はぁ……っ……はぁ……」

吐息を漏らしながら、ヤヤがゆっくりと呼吸を整える。

深呼吸をするように、何度も空気を吸い込んでは吐き出す。

「はぁ……カナカナ……強引すぎだよー……」

鼎「ふふんっ、強引じゃないと
ヤヤが許してくれない気がするもん」

八弥子「あはは、何だかお見通しだねえ……」

私の言葉にヤヤが苦笑するのが見える。

鼎「さて、私の好きを認めてもらえるまで責めちゃおうかなー」

八弥子「ちょっ、カナカナ、ストップストップ……!」

鼎「ふふっ、冗談冗談。でも、好きを許して欲しいのは本当だよ」

八弥子「カナはホント真っ直ぐだなぁ」

どこか呆れながらも、ヤヤはそう言ってから微笑んだ。

お互いの身体をシーツでくるんだところで一息。

こうして見ると、改めてヤヤのバストに視線がいってしまう。

自分のは特に気にならないんだけど、どうしてだろうか?

八弥子「カナカナさ、事後になっちゃうけど、急にどしたの?」

ジーッとヤヤの胸を見物していると、そんな質問がやってくる。

鼎「ダメって言われると、余計に気になったりしない?」

八弥子「んー……言われてみれば、そんな気もする」

鼎「ふふっ、結局ね、気持ちが好きに傾いちゃったら、
軌道修正かけるのって難しいと思うんだ」

「しかも、ヤヤからは好きって言葉もらっちゃってるしね。
どうしても意識しちゃうよ」

私が話終えると、ヤヤはふむーと僅かに唸った。

八弥子「じゃ、ヤヤがもし何も言ってなかったら?」

鼎「それはそれで難しい質問」

目を閉じて少し黙考する。

「ヤヤと一緒にいる時間が増えてから、すぐのことだったし……
あんまり想像出来ないかもしれない」

「でも、一緒にいる時間があるなら、
ヤヤに惹かれてるのは間違いないかな」

八弥子「おっぱい大きいから?」

鼎「あはは、それは趣向の話です」

時として趣向が重きを得ることも多々あるだろうけど。

鼎「なんだかね、ヤヤといると自分が自分らしくいられる気がする」

八弥子「ほうほう?」

鼎「誰かといたりする時ってさ、
我慢しなくちゃいけないことが絶対あると思うんだよね」

「ヤヤは何だかその辺りが自由な感じ」

私の言葉を聞いたヤヤがニコリと微笑む。

八弥子「ふふっ、だからカナカナはキラキラして見えるのかな」

「ヤヤの手が届かないところで、ずっとキラキラしてる感じ」

鼎「手の届かないとこ? そんなことないよ」

「私はヤヤと触れ合うことが出来たよ?」

八弥子「カナカナは距離感なんて感じさせてくれないんだけどね。
だから、気を付けないといけない感じ」

何とも曖昧なことを言われて、ううんと考え込む。

鼎「ヤヤはさ、何を気にしているの? 血筋の話のこと?」

八弥子「んー、そだね。ヤヤはカナカナみたいに綺麗じゃないから」

「人よりも幸せになったらいけないの。
それだけのことをヤヤはしてきたから」

少し考える。

ヤヤが言っているのは昔の話。

何人もの人の命を奪ったと聞いた。

それがどういう経緯で起きたのかは分からないけれど、
どうしてもヤヤを縛り続けるというなら――。

鼎「ずっとヤヤは昔のことを引きずっていくの?」

八弥子「うん、そうしないといけないからね」

鼎「分かった。それはヤヤの気持ちの問題だから、
私は考えを押しつけたりしない」

「でも、私の気持ちの問題はヤヤに押しつけさせてもらう」

八弥子「カナカナ?」

鼎「ヤヤが人より幸せになっちゃいけないって
言っててもいい。でも、私は人より幸せになりたい」

「それが出来るのはヤヤだけ。
私を幸せに出来るのはヤヤだけなんだよ」

八弥子「…………」

鼎「ヤヤが口にしないことは置いておく。
でも、私が幸せになりたい気持ちは伝えた」

ヤヤは僅かにきょとんとした後、笑顔を見せてくれる。

八弥子「あはは、カナカナには敵わないなぁ……」

「そういう言い方されると、イエスもノーも言えないじゃん」

鼎「ふふんっ。ヤヤを相手にする時はね、強引に
いかないといけないって学習しましたから」

八弥子「あはは。カナカナの強引は、ホント強引だからなぁ」

二人して笑い合った後、瞳に互いの姿を映す。

鼎「だから、ヤヤが何を言っても、私はヤヤと一緒にいるからね」

八弥子「そっか。うん。じゃあ、もう何も言わない」

「でないと、またカナカナに押し倒されちゃいそう」

鼎「おー、それもいいね」

八弥子「カナカナ、視線がエッチ!
っていうか、またおっぱい見てる」

鼎「あはは、それは何というか……
条件反射みたいになってる」

うん、悪い癖になりそうだし、ちょっと気を付けよう。

「ね、ヤヤ、今日はこのまま寝ない?」

八弥子「開放的な感じで?」

鼎「うん、一緒のベッドで」

八弥子「ふふっ、いいよー。おいで、カナカナー。
ちょっとぐらいなら揉ませてあげよう」

鼎「では、遠慮なくっ」

気を付けようと思った途端、甘い誘惑がやってきて、
見事に釣られる自分が悲しい。

でも、ヤヤの胸はもちもちしてて……幸せ。

電気を落とすと、一つのベッドで少しの間抱き合ってから、
眠るために目を閉じる。

隣で感じる温もり、その幸せを噛み締めながら、
意識が遠のく心地良さに浸っていく。

ヤヤといる安堵感からか、眠りに落ちるまで、
そう時間はかからなかった。”
八弥子と鼎 八弥子と奈岐

八弥子“「おまたせ」

奈岐「……確認するが、本当にいいのか?」

「もう鼎のところへ戻れなくなる可能性もある」

八弥子「その覚悟は済ませたよ。
でないと、ナギっちにもお願いしてない」

「それに、どこか行っちゃった
ミライっちも同じ考えでしょ」

奈岐「アレはアレで何を考えているのか分からん」

八弥子「ま、色々あるみたいだしねえ」

奈岐「もう一度、聞く。本当にいいのか?」

八弥子「んー……それ、
ナギっちだって同じだったじゃん」

「カナカナのことがさ、ホントは好きで仕方ないのに、
自分から離れる道を選んだ」

奈岐「私は鬼だ。人といてはいけない。
それを思い知った」

「鼎といては、その境界が曖昧になる。甘えてしまう」

八弥子「あれ? 狼じゃなかったっけ?」

奈岐「フッ、世を忍ぶ仮の姿だ」

八弥子「ま、ヤヤも似たようなものかぁ」

「ねー、ナギっち」

奈岐「何だ?」

八弥子「もしさ、ヤヤ達が普通だったら、
三角関係とそういうのに発展してたのかな?」

奈岐「私が身を引いてなければ、
三角関係だったんじゃないか?」

八弥子「お、未練たっぷりだ」

奈岐「だが、言った通り、私は鬼だ。
そして自身を鬼の道に落とした。
もう戻る気は無いし、戻ることが出来ない」

八弥子「そっか。ナギっちが
それでいいなら何も言わないよ」

奈岐「……本題に移ろう。理事長の名で
中村真琴を呼び出した。 場所は学園より北の森、
立ち入り禁止区画の手前だ」

八弥子「で、例の物は?」

奈岐「死に物狂いで持ってくるはずだ。
鼎の勾玉、禰津の星霊石――
その交換材料は、中村真琴の母親の身柄だからな」

八弥子「それなら問題ないね」

「じゃ、行ってくる。カナの勾玉を取り返したら、
ナギっちに回収してもらってもいい?」

奈岐「ここにも戻らないつもりか」

八弥子「戻るところなんて無くなるからね」

奈岐「……分かった。責任を持って届けよう」

八弥子「ありがと。じゃあね、ナギっち」

奈岐「禰津、あえて言うぞ。死ぬなよ」

八弥子「それはマコに言ってあげるといいよ」

奈岐「――」

「禰津、お前はまだ戻ることが出来るはずだ。
それに鼎の望みがお前にあるなら……」”

脚本
⇒尚も、“ラブ”というカタカナ語を使用している点に着目
 
演技
   
演出    
作画
   
補足
   






  6-2 6-3
状況
奈岐に起こされる鼎。
八弥子を止められるのは鼎だけだと言う。
末来と話す奈岐
北の森へ向かう鼎。森に漂う穢れにも似た殺気。
八弥子と真琴の対峙。血の力を使う八弥子。
劣勢の真琴、左腕を潰される。鼎が止めに入ろうとするが、
間に合わない。その刹那、氷の盾で鉄球が防がれる。
奈岐、真琴を助ける。事態は収束へ
時間

場所
寮・八弥子の部屋 ~ 寮・ロビー

設定
   
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
八弥子と鼎

奈岐“「禰津が一人で行った。
アイツを止められるのは鼎だけだ」

鼎「ヤヤが一人で……?」

奈岐の言っていることが分からずに目を瞬かせる。

奈岐「アイツは勾玉を取り戻してから消えるつもりだ」

鼎「…………」

奈岐「この状況を頼まれて用意したのは私だ。
そして実行するのは禰津だ」

「……誹りは受けよう。ただ今は時間が無い。
禰津を止められるのは鼎、お前だけだ」

ようやく服を着替え終えると、奈岐の頭を撫でておく。

「鼎……?」

鼎「知らせてくれてありがと。場所は?」

奈岐「学園から北の森、立ち入り禁止区画の手前だ」

鼎「分かった。行ってくる」

奈岐「鼎……私に怒らないのか?」

疑問を抱いた奈岐の瞳が私を見上げる。

鼎「こうなるのって想像出来てたし、
怒る相手は奈岐じゃないよ」

奈岐「…………」

鼎「それでも思うところがあるなら、サポートお願い」

奈岐「……分かった」

奈岐が頷いたのを見てから、私は駆け足で部屋を飛び出す。

すぐに奈岐が知らせてくれたのだとしたら、
まだ間に合うはず。

だから急げ、私――。”

鼎への想い 親子関係
頼継の計画


奈岐「……鼎も行ったか」

「これでいいんだな?」

末来「でも、八弥子がいるところに自分がいたかもしれない、
奈岐はそう思ってる」

奈岐「未練はある。
でも、鼎の気持ちは奈岐に向いていない」

末来「向けさせることも出来たんだよ?」

奈岐「それはお前もだろう、片倉末来」

末来「ボクは鼎に会えただけでも幸せだ。
そういうものなんだよ」

奈岐「……禰津が事を起こせば、本格的に時間が無くなる。
理事長の考えも正直なところ信用がならない」

末来「目的は同じでも、彼はその過程に全てを置いている。
だから、結局のところは変わらないよ、奈岐」

奈岐「だからこそ、余計にだ」

末来「でも、鍵はボクと鼎の勾玉にある」

奈岐「…………」”
八弥子の力、境遇 八弥子と鼎 八弥子と奈岐

“肌を突き刺すような冷たい空気は穢れのものじゃない。

明確な殺気が森中に漂っていた。

これが何なのか――あまり考えたくはなかった。

でも、意識しなくても答えは出てしまう。

鼎「ヤヤ……何するつもりなの」

ヤヤが何かしようとしている。

私にでも分かるぐらいに殺気を膨らませて、
別の何かになろうとしているんだ。

そう、いつか奈岐に言われていた――獣。

生き血をすするような獣になろうとしている。

「……ヤヤが何であろうと構わないよ」

でも、勾玉を取り戻してから消えるのだけは許さない。

そんなことをしたら、ヤヤは自分のことを認められなく
なって、もう私のところには戻ってきてくれない。

ようやく見つけられた幸せを全部捨ててしまうことになる。

「間に合って――お願い」

どんな状態でも
ヤヤに伝えないといけない言葉があるんだ。

だから、私は夜の森を全力で駆ける。

間に合って――。”

八弥子の力、境遇 八弥子と鼎
鼎の優しさと強さと公平さ

八弥子“「へえ、ちゃんと来たじゃん」

真琴「貴様ら……母さんをどこへやった」

八弥子「先にヤヤ達の話だよー、勾玉を持ってきた?」

真琴「ここにあるっ! 母さんは病院から一歩も
動かしてはならない状態だったはずだっ!」

八弥子「ふんふん、そんなに危ない状態だったんだ。
マコも大変だねぇ」

「でも、勾玉を返してもらうのが先だよ」

真琴「母さんの無事を確認させろ」

八弥子「残念、それは交渉決裂。二度と会えない」

真琴「……貴様、まるで別人だな。そっちが本性か」

八弥子「どうだろうね、どっちがどっちなんて分からないよ」

真琴「……勾玉はここにある」

八弥子「投げて渡して」

真琴「母さんはどこだ?」

八弥子「勾玉が先、二度は言わない」

真琴「くっ……受け取れ」

八弥子「確かに。偽物じゃないね」

真琴「当然だ。母さんはどこだ?」

八弥子「んー、ごめん、知らない」

真琴「なっ……!? 貴様っ、騙したのかっ!?」

八弥子「ヤヤはこの状況を用意してもらっただけだしさ、
詳しいことは分かんないんだよね」

真琴「……貴様の星霊石はまだ私が持っているんだぞ」

八弥子「だから?」

真琴「口を割らせることも出来る」

「炎よっ……!」

「手足の一本や二本を失っても人間は喋る」

八弥子「ふぅん。それ、脅し?」

真琴「星霊石の無い貴様に何が出来る?
身体能力の高さだけで、
巫女の力に対抗できると思ってるのか?」

八弥子「ああ、そっか。知らないのか」

真琴「…………?」

八弥子「松籟会の叔母さんに聞いてくれば良かったのに。
ま、そんな余裕なかったのかもしれないけどね」

真琴「何を言っている……?」

八弥子「血から……チカラ……
縁子がそんなこと言ってたっけ」

「ホントのとこ、知らないだろうけど、その通りなんだよね」

「巫女の家系、特にヤヤのところは血を拠り所にしている」

「ヤヤの得物をさ、
霊石から取り出しているなんて思ってた?」

真琴「なんだと……?」

八弥子「フッ、そう思って当然かな……
でも、考えてみなよ?」

「チカラに特化した血が濃ければ濃いほど、どうなる
か――霊石の力を浴び続けた身体がどうなっていくか」

真琴「この気配……穢れ?
いや、違う……まさか……貴様……」

八弥子「……血を拠り所にした物がコレだよ」

真琴「なっ……星霊石無しで武器を……!?」

八弥子「これが血だよ。血を拠り所にした力だよ」

真琴「…………」

八弥子「勾玉を取り返して、ヤヤがいなくなる前に……
マコをどうにかしておかないとね」

「カナが安心してお母さんを探せるように、さ……」

真琴「貴様――だが、得物だけでどうにかなると思うな」

八弥子「さあ、それはどうかな?」

森の中に漂う嫌な気配がさらに濃くなった。

穢れのような気配に混じって、巫女の力を感じる。

この力はたぶん中村さん……?

鼎「……あれは?」

前方の暗がりを超えた先で、僅かに蒼い光が見えた。

間違いない、中村さんの炎の明かりだ。

いつもの癖で勾玉を探してしまうが、今は巫女の力
どころか、武器一つ持っていない状態だった。

それでも足を止めちゃいけない。

鼎「あそこにヤヤもいる」

でも、ヤヤの力は感じなかった。

代わりに感じるのは、穢れに似た鋭い殺気だけだ。

ギイィンッと甲高い金属音が響く。

鼎「ッ……!?」

始まっている!?

反射的に地面を蹴って、音が聞こえた方へ走る。

茂みを突っ切り、木々の隙間を駆け抜けていく。

そして、炎の熱を肌で感じる距離まで来た時――。

真琴「この化け物めっ……!」

中村さんが炎を纏った大剣で空を薙ぐ。

草木を焼き払いながら、蒼い炎が目標へ放たれる。

鼎「ヤヤ……?」

炎に照らし出されるようにして、見なれた人影が揺れた。

俯き、棒立ちになったような状態で
得物の鉄球を握っている。

星霊石を取り戻した?

でも、巫女装束は……?

そんなことを考えている間にも、炎がヤヤに迫っていく。

「危な――」

声を上げようとした瞬間、その姿がかき消える。

ヤヤが数メートル近い跳躍から鉄球を振り落とす。

ドンッと轟音を響かせ、
中村さんがいた場所に大きな窪みを作る。

もし中村さんが回避しなければ、
怪我じゃ済まない一撃だ。

真琴「何故、まともに戦えるっ!?
貴様はいったい何なのだ!?」

八弥子「……化け物って、さっき自分で言ってたじゃん」

「その通りだよ。巫女の血が作り出した化け物だよ」

鉄球を携えた人物がゆらりと蠢く。

前倒しになるかのような姿勢で
中村さんとの距離を詰める。

正面からぶつかり合い、金属が弾け、火花が飛び散った。

真琴「くそっ……速いっ……」

八弥子「そっちが遅いんだよ」

真琴「だが、この距離なら……!」

鍔迫り合いの状態から、中村さんが炎の力を高めていく。

八弥子「ヤヤの星霊石、ちゃんと持ってきてたみたいだね」

真琴「なに……?」

八弥子「フッ……!」

ヤヤが身を逸らし、中村さんの大剣を避けると、
胸ぐらを片手で掴みあげた。

同時に炎が消し飛ぶほどの風が吹き荒れる。

真琴「星霊石を発動させるか気か……!」

八弥子「終わりだよ」

続けざまに突風が走り抜け、立っていられなくなった。

近くの木に身体を預けながら、ヤヤと中村さんを見る。

すると、先ほどまで制服姿だったヤヤが巫女服を纏い、
星霊石の力を発現させていた。

真琴「くっ……何だ、この力は……」

八弥子「決して巫女に選ばれない力だよ……
穢れすれすれのさ」

その言葉通り、ヤヤから感じる力は穢れに近い。

禍々しさを感じる風が吹き荒び、
中村さんとヤヤを包み込んでいく。

鼎「ヤヤッ! 中村さんっ!」

嵐のように木々を揺らす風が激しく、
私の声を届けてくれない。

その間にヤヤと距離を取った中村さんが大剣を構え直す。

真琴「穢れ同様だと言うのならば、
私の力で調伏してくれるっ」

八弥子「いいね、それ。やってみせてよ」

二人を止めに入ろうにも、風が強くて
木にしがみついているだけで精一杯だった。

鼎「ダメ……今のヤヤと戦ったら……!」

私の制止が聞こえるわけもなく、中村さんが炎を放ち、
ヤヤに向かって剣を振るい上げる。

ヤヤは唇を不気味な三日月型に変え、
中村さんを迎え撃つ。

中村さんの炎を蹂躙する嵐――
そこにヤヤの面影は無かった。

風が吹き付ければ、肌に突き刺さる悪寒を感じる。

穢れすれすれと言った通り、彼女から感じる巫女の力は、
明らかに変質していた。

祓うための力ではなく、暴虐を尽くすための力――。

鼎「ヤヤ……」

初めてヤヤの得物を見た時、風は嵐にもなると感じた。

あながち間違いでは無かったのかもしれない。

今はそう思えるほど、
ただ破壊するための武器がそこにあった。

真琴「くっ……化け物め……!」

八弥子「弱いなぁ、それで本気?」

息を切らせた中村さんに対し、ヤヤは嘲笑う。

そして、鉄球のついた鎖をジャラリと響かせた。

殺気を孕んだ風を伴い、横薙ぎに鈍器が振るわれる。

真琴「なっ……!?」

加速する鉄球を避けきれず、
咄嗟に中村さんが大剣を盾にした。

ゴウゥゥン――ッ!!
耳が痛くなるほど、金属のぶつかり合う轟音が鳴り響く。

次いで、衝撃に耐えきれず中村さんの身体が。
風に散る火の粉同様に薙ぎ払われてしまう。

「ぐはっ!?」

風までは防ぎきれず、中村さんが背中から
木に叩き付けられる。

よろめきながら体勢を立て直そうとした時、
ゆらりと影が彼女足元から這い上がった。

八弥子「利き手もーらい」

ゴキッ――と鈍い音が耳に飛び込んでくる。

真琴「ぐあああぁっ!!」

ヤヤに掴まれた中村さんの左腕が、
あらぬ方向へ曲がっていた。

握っていた大剣が虚しく地面に転がり落ちていく。

「ぐうぅっ! ああぁっ!!」

激痛に顔を顰めながらも、
中村さんが残った右手に炎を集束させる。

蒼い炎を横薙ぎにしてヤヤを狙うが、
その姿が再び掻き消えてしまう。

目で追えないほどの速度――風を背に受けて加速している。

真琴「このっ!!」

中村さんが続けざまに炎を紡ごうとするが……。

鼎「後ろっ!!」

真琴「くっ……!?」

中村さんの背後にヤヤの姿が現れ、
同時に足を払っていた。

バランスを崩された中村さんが
前のめりになって地面に倒れる。

八弥子「一対じゃないとこんなものか……弱いなぁ」

ヤヤの握る鎖がジャラリと音を響かせた。

手繰り寄せられた鉄球が
地に転がる中村さんに狙いを定める。

「マコ、お母さんに会いたい?」

真琴「……どういうつもりだ?」

八弥子「カナもずっとそう思ってるんだよ。
でも、マコはそんな希望を砕こうとした」

「だから、マコの希望も砕かれても仕方ないよね」

真琴「…………!」

その場から転がって中村さんが逃げようとした。

しかし、そんな彼女の折れた左腕をヤヤが踏みつける。

真琴「ああああああぁっ!!」

八弥子「うるさいなぁ……でも、これでおしまい」

ヤヤの鉄球が蠢き、その場でのたうった中村さんを狙う。

それも急所、確実に死へ追いやる頭部に鈍器が迫る。

とても守りに入れる状態ではない。

鼎「ヤヤ、ダメっ!!」

声を上げ、私はその場から飛び出す。

八弥子「……カナ、やっぱり来たんだ。
でも、これがヤヤのやり方だから」

ヤヤに私の声は届いた。

でも、聞き分けてくれることはなく、
無常にも中村さんへ鉄球が――落とされる。

鼎「あ…………」

真琴「……な、なに……?」

寸前、冷気が迸ったかと思えば、
中村さんを防ぐ盾を構成した。

奈岐「何をしているっ! さっさと避けろっ!!」

奈岐の怒声が響き、中村さんがその場から転がる。

その直後、ドンッと冷気の盾を砕き、
鉄球が地面に窪みを作った。

もし当たっていれば、中村さんは今頃……。

八弥子「ナギっち……どうして?」

巫女服を纏った奈岐が私を横切り、ヤヤへ歩んでいく。

奈岐「殺せば、その魂が穢れに呑まれるぞ」

「それに何かあれば、と鼎に頼まれたからな」

八弥子「ここで見逃したら、またカナを狙うかもしれない」

奈岐「だったら、その時に鼎を守れ。
今殺せば、お前は戻れなくなる」

奈岐がその瞳にヤヤを映し、彼女の魂を見定める。

八弥子「もう戻るつもりは無かったんだけどね」

奈岐「それを私に言ってどうするか」

「とにかく中村真琴は私が回収する。
聞きたいこともあるしな」

「鼎、禰津は任せたぞ」

奈岐は冷気を星霊石に戻すと、
地に倒れたままの中村さんへ歩んでいく。

鼎「……ヤヤ」

八弥子「…………」

禍々しさすら感じたヤヤの力が星霊石に戻る。

鼎「隠してたのって、こういうことだったんだね」

八弥子「……かっこ悪いところ見られちゃったなぁ」

鼎「それで、どっちにしても戻ってこないつもりだったんだ」

八弥子「…………」

ヤヤがそのまま黙り込んでしまう。

そこにいつも明朗な彼女の姿は無い。

さっきまでの空気に呑まれたかのように、
陰鬱とした視線はつま先へ落ちていた。

鼎「勾玉が返ってくれば、
それでいいってわけじゃないんだよ」

鼎「ヤヤと引き換えに戻ってきたって嬉しくない」

八弥子「…………」

鼎「…………」

「歯、食いしばって。言ったからね」

私の言葉にヤヤが目を閉じる。

それを見てから、私は平手を振りかぶり――。

パンッとヤヤの前で自分の手を叩いた。

八弥子「えっ?」

鼎「直前まで正直引っぱたいてやろうと思ってた。
でも止めた。気付けになってくれれば、それでいいし」

「私はいつものヤヤが嘘だなんて否定はしないし、
今のヤヤが本当だ、なんてことも言わない」

「全部含めたヤヤを知ることが出来た、
その上で私がどう考えて、何を思うか」

「嫌いになるとか、ひいちゃうとか、勝手に決めつけない。
それを決めていいのは、私だけなんだよ」

「私を好きだって言ってくれたなら、逃げないで欲しい。
自分の嫌なとこまで見せた上で、私に答えを聞いて欲しい」

「以上、私のわがままとお説教でした」

唖然としたまま、ヤヤが私を見ている。

気付けどころか、少しびっくりさせすぎたかもしれない。

八弥子「……カナ? それで……終わり?」

鼎「ん、もっと何か言った方がいいの?」

八弥子「だって、ヤヤは……」

鼎「勝手にどこかに行こうとしたこと以外、
私が何かいうことじゃないよ」

八弥子「カナは……ヤヤが怖くないの?
あの力、穢れと同じようなものなんだよ?」

鼎「ヤヤは私を怖がらせたいの?」

八弥子「そんなこと……」

鼎「じゃあ、平気だよ。今までと変わらない。
やっとヤヤの秘密を知ることが出来たぐらい」

八弥子「…………」

ヤヤは僅かに息を漏らした後、
少し涙の滲んだ目を向けた。

八弥子「カナ、ごめん……」

鼎「ふふっ、それは何のごめんかな?」

八弥子「……黙って出て行ったこと」

鼎「うん、次また同じことしなければ許すよ」

落ち込んだ表情のヤヤに微笑みかける。

すぐには笑ってくれなかったけれど、
いつものヤヤのように、優しい目をしてくれた。

八弥子「カナ、これ、受け取っておいて」

ヤヤが勾玉を差し出してくれる。

鼎「うん、ありがと」

受け取った勾玉から僅かに熱を感じた。

間違いない、本物だ。

ようやく手元に戻ってきてくれたと胸に抱く。

奈岐「話は済んだか。
思い通りにはいかなかったな、禰津?」

からかうように言いながら奈岐が私達の元へ歩んでくる。

八弥子「……ナギっち、最初からお見通し?」

奈岐「さあ、どうだろうな?」

肩をすくめた後、奈岐が改まった表情を見せた。

「さて、中村真琴だが……利き手が完全にへし折れている。
問題は負傷したことより、彼女が今年の巫女ということだ」

鼎「つまり儀式に間に合わない?」

奈岐「そういうことだ。これで松籟会がどう転ぶか。
いずれにしても、事態が動くぞ」

中村さんが戦線離脱となれば、
他に巫女候補を当てるしかない。

ただ残された時間は?

八弥子「ナギっち、儀式の予定はいつか分かったの?」

奈岐「一週間以内は確実だが、明日行うつもりだった
かもしれないし、まだ引っ張るつもりだったかもしれない」

そう言った後、奈岐が中村さんへ振り返る。

中村さんは木を背に、座り込んだまま、
荒い息をついていた。

奈岐「聞いてみるのも手だが……必要以上の情報は
知らされていないだろうし、アレを見てると頭が痛くなる」

「痛みを堪えてる分だけ響くんだ」

奈岐が自分のこめかみを人指し指でつつく。

鼎「とりあえず、寮にまで戻った方が良さそうだね」

奈岐「私はこの件で動きがあるか探ってみる」

奈岐に頷いた後、怪我をした中村さんのもとへ向かう。

鼎「肩を貸すから、寮まで歩ける? 背負った方がいい?」

真琴「高遠……何故、私を助けた?」

中村さんの顔色は青く、冷や汗が幾筋も頬を伝っていた。

折れた腕が相当痛んでいるのだろう。

鼎「私のお母さんがしたこと、それが何か分からないうちに、
中村さんにいなくなられたら困るから」

「ちゃんと謝ることも出来ないし、責任も取れない」

真琴「…………」

「フッ……おかしな奴だな。
私は何度もお前を殺そうとしたのだぞ?」

鼎「だから、やりかえす――
っていうのは、私のやり方じゃない」

「もうしないで、とか……勾玉のこと黙ってて、とか……
色々言いたいけど、それどころじゃないみたいだしね」

中村さんの状態に言及すると、彼女は痛みを堪えながら、
ふらふらと立ちあがる。

真琴「……一つだけ答えてくれ。
お前達、母さんをどこへやった?」

問いに対しての回答を持ち合せていないので、
ヤヤと奈岐に振り返った。

八弥子「ヤヤはホントに知らない。ナギっち?」

奈岐「私は鼎と違ってぬるくないぞ。
この一件を黙っているなら――」

何やら言いかけた奈岐の髪をもふもふしておく。

奈岐「か、鼎っ、まだ話をしているところだっ……!」

鼎「ちゃんと言わないと、もふもふし続ける」

奈岐「はぁ……今理事長達のところにいるはずだ。
すぐに病院へ戻すように連絡を入れる」

正直に喋ったので、もふもふを終了しておく。

真琴「……そうか、分かった」

中村さんは安堵した表情を見せた後、
苦しげに息を漏らす。

早く病院へ連れて行った方がいいだろう。

その後、理事長達の元へ向かう奈岐と別れて、
私達は帰路を急いだ。

勾玉こそ戻ってきたけれど、奈岐の言った通り、
中村さんが巫女を務めるのは難しい。

必ず動きがあるのは確かなこと。

それが最悪の方向に転ばないように今は願っておく。”
脚本
  ⇒奈岐編では、真琴の命に迫った奈岐が、
八弥子編では、逆にその命を救っている

⇒苦しみの声は穢れでなくとも、
見鬼の際には頭に響いてしまう
演技
   
演出    
作画
   
補足
   






  7-1-1 7-1-2
状況
朝一で学園長室に呼び出しを受けた鼎と八弥子。
代わりの巫女を立てねばならぬことに悩む櫻井。
先日の一件は既に知られているようだ。
末来が現れ、櫻井に紙を渡す。
封印に向かうことを告げたという。
封印する為に、道を切り開いて欲しいと言う末来。
戸惑う鼎。末来、急ぎどこかへ向かう。
奈岐達に連絡を取ろうと思う八弥子と鼎。
その矢先、葉子が音も無く現れる。
怯える八弥子。葉子、鼎に話があるという。
授業に出るように促す葉子。それぞれの教室へ
一日の授業を終える。これは、
奈岐や末来からの連絡が無かった為。
由布、恵、縁子は欠席。真琴は病院。
松籟会から呼び出されていると推測する鼎。
話があるという葉子。思いの丈を語る。
大丈夫だと言う鼎。葉子、未来や当時の事を思い出す。
八弥子の事を頼まれる鼎。八弥子との今後の為、
という事で手解きを受ける。手と言葉の両方で
責めを受け、為す術の無い鼎。最後まで導かれる。
少し休み、寮へ戻る
時間
三十五日目・朝
三十五日目・夕
場所
学園・学園長室 ~ 学園・学園長室前
 
設定
・学園長室での会話は、おそらく筒抜け
・本家において、八弥子の訓練は葉子が行った
・葉子が巫女候補の頃、未来も巫女候補だった
・葉子は未来のことが好きだった
・葉子は未来と情けを交わした仲
伏線(大)
   
伏線(小) 末来の真実 鼎の出生と勾玉の秘密

櫻井“「このような時に限って、片倉さんとも連絡は付かず……
未熟な者達から選定しなくてはなりません……」”

“「片倉さん? 今までどこに……?」

末来「行方不明の理事長と内密に話があってね。
松籟会の注意から逃れる必要があったんだ」

櫻井「片倉さん、今、理事長はどこにいるのです?」

末来「学園長、ここは誰に聞かれているか分からない場所だよ。
口では言えない。ただ――」

そう言った末来さんが学園長に二つ折りの紙を指し出す。

学園長はそれを受け取ると、すぐに開いてみせた。

そして、学園長の片眉が驚きを示すように跳ねる。

櫻井「……私にコレを認めろと?」

末来「見て見ぬ振りをするだけでいい」

櫻井「…………」

黙り込んだ学園長が静かに息を吐いた。

「片倉さん……もう他に方法は無いのですね?」

末来「学園長の手腕に期待している」

櫻井「……分かりました。
私に出来ることはやってみるつもりです」

末来「ありがとう、感謝するよ」

「鼎、八弥子、外では話がある」

八弥子「んー? 何、ミライっち?」

視線でこっちだよと告げながら、
末来さんがすたすたと部屋の外へ歩いて行く。

振り返ると、学園長は考え込むようにして目を伏せていた。

私達を呼び止めるつもりは無いのだろう。

鼎「失礼しますっ」

それでも一応頭を下げると、
私は早足で末来さんを追いかけた。

まだ登校の時間ではないため、廊下は静寂に包まれている。

そんな中、末来さんも学園長と同じように、目を閉じて、
何かを考えている様子だった。

「あの、末来さん? 学園長にはいったい何を?」

末来「ボク達が封印に向かうことを伝えた。
松籟会が巫女を立てる前にね」

鼎「……えっ?」

ボク達が封印に……?

末来「今、残されている方法はそれだけ。
鼎達にも協力してもらいたい」

鼎「それは……もちろん、ですけど。
でも、末来さんと誰が……?」

末来「封印自体はボク一人で行う。
それまでの道を理事長達と一緒に切り開いて欲しい。
封印まで力を使うわけにはいかないからね」

「それから最後に鼎の勾玉を使わせて欲しい。
きっとそれが鍵になるから」

そこまで言った末来さんの視線が、
何かを気にするように横へ動いた。

「もう行かないといけない。またすぐに連絡を取るよ」

鼎「え、えっと、末来さん?」

呼び止める間も無く、末来さんが早足で廊下を歩き、
奥の角を曲がっていってしまう。

その背中を見送った後、私は件の勾玉に触れる。

「勾玉が鍵になるって――」

八弥子「んー、封印って一対で行うものじゃ
なかったっけ? でも、ミライっちは一人だよね……?」

鼎「うーん……?」

でも、確かに末来さんは封印を一人で行うと言った。

それにお母さんの勾玉が鍵になる……?

頭の中に浮かび上がった疑問は増える一方で、
最もらしい答えを用意することは出来なかった。”

葉子の実力

葉子“「ヤヤちゃん、聞きましたよー?」

八弥子「うわわわっ!?」

「よ、ヨーコ先生っ!?」

葉子「はーい、おはようございまーす」

いつの間にか葉子先生がヤヤの後ろに現れていた。

ちなみに気配一つ感じなかったのは、私もヤヤも同じ……。

葉子「ヤヤちゃん達が中村さんに怪我をさせたって
学園長が今朝から頭を抱えてましたよー」

ぴくっとヤヤが肩を震わせ、その顔色が途端に悪くなる。

その光景は、しかられている子供というより、
弱味でも握られているかのように思えてしまう。

葉子「つまり……ヤヤちゃん、
本気でやっちゃったわけですね?」

笑顔のまま、葉子先生が尋ねるけれど……
その言葉一つにヤヤが再び震え上がる。

八弥子「うっ……い、色々事情があって……」

しかし……ヤヤはどうしてここまで葉子先生に怯えるのだろう?

怖い物知らずのイメージが強いせいか、より不思議に思える。

葉子「先生、喧嘩は良くないことだと思いまーす」

八弥子「……む、昔は散々やってた癖に……」

葉子「ヤヤちゃん、何か言いましたかー?」

八弥子「な、何も言ってないよっ!」

声を震わせたヤヤが頭を振ろうとするが、
先生の顎がまだ乗ったままだった。

あと何か……不穏な言葉を聞いた気がする。

八弥子「……ご、ごめんなさい……」

す、素直だ……。

間髪入れず、ヤヤが非を認めて謝っていた。

葉子「力の使いどころを間違えると大変なことになりますからね」

八弥子「…………」

葉子「返事はどうしましたか? ヤヤちゃん?」

八弥子「う、うん、わ、分かってるっ……」

震えるヤヤから葉子先生の視線が私へ向かう。

葉子「それで、高遠さんにも後で話があります」

鼎「えっ、えっと、わ、私……ですか?」

葉子「学園長から頼まれたことが一つと、
ヤヤちゃんのことが一つあります」

「巫女のことで先生も動かないといけないようなので、
そのお話と……ヤヤちゃんのことは、まだ秘密です」

鼎「ひ、秘密……ですか」

葉子「ふふっ。放課後、教室に残っていて下さいねー」

そう告げた後、葉子先生はヤヤをようやく解放した。

葉子「あと二人とも、授業にはちゃんと出ましょうね」

鼎「うっ……」

八弥子「……出る、つもり……だよ?」

葉子「は~い。それでは、また放課後に♪」

私達の反応に満足したのか、葉子先生はゆったりとした
動作で踵を返して歩いて行く。

それを見てから、私はヤヤに小声で訊ねる。

鼎「ねえ……ヤヤ? 葉子先生、苦手なの……?」

八弥子「はぁ……天敵だよ。色んなトラウマがあってね……」

鼎「トラウマ……」

八弥子「本家だと、
ヤヤの訓練はヨーコ先生が担当してたから……
色々と身体に染みついてて……」

以前、ヤヤが先生は力に溺れるタイプと言っていた。

昨晩に見たヤヤと同じく、あの禍々しい力を使いこなし、
溺れるということは……。

鼎「…………」

想像するだけで、ぶるっと背筋が震えてしまう。

今のヤヤの様子を見る限り、
昔に相当なことがあったのかもしれない……。

「ええと……この話題、止めたほうがいいよね」

八弥子「うぅ……古傷が疼きそう」

まだ若干顔色の悪いヤヤが俯く。

それから……葉子先生に言った手前、
授業をサボれるわけもなく、
私とヤヤはそれぞれの教室へ向かうこととなった。”
 
テキスト
  八弥子と鼎 葉子の実力
疑問,祠に何があるか 巫女の真実

葉子“「今日は巫女候補みんなが欠席していましたね。
きっと儀式が終わるまでこんな状態が続くと思います」

鼎「そうですね……」

葉子「先生はそれが寂しいです。だから、
高遠さん達がやろうとしていることを応援していますよ」

「みんなが島のことで悩まずに、
ちゃんと授業に出てくれて、楽しい学園生活を
過ごしてくれることが先生の願いです」

鼎「――大丈夫ですよ。ヤヤもいるし、末来さんも、
奈岐もいます。あとは見てないですけど、
理事長達もいるみたいですし」

最後のところはよく分からないので苦笑しておく。

すると、葉子先生がクスッと微笑んでくれた。

葉子「ふふっ、そうですね~。
こうして話をしていると、昔を思い出します」

鼎「昔……ですか?」

葉子「これは秘密なんですけど、
先生が巫女候補だった頃、高遠さんのお母さん
も同じ巫女候補だったんですよ」

鼎「えっ……」

思わず固まってしまう。

お母さんと葉子先生が?

それって、つまり――。

葉子「高遠さん、今、
先生がいくつか考えようとしましたね?」

鼎「し、してないですっ……!」

僅かに声が怖かった気がする。

葉子「ふふっ、あの時も儀式のことで
みんなが大慌てでした」

鼎「何かあったんですか……?
お母さんのことですし、何も無い方が不思議ですけど」

葉子「高遠さんのお母さんはですね、
全部一人で解決するって言っちゃって、
松籟会の人達と対立しちゃったんです」

鼎「…………」

その様子が頭に浮かぶから何も言えない。

葉子「松籟会の人達は……あの時も島で絶対だった
ので、みんなが高遠さんのお母さんを心配してました」

「でも、あの人は今の高遠さんみたいに、
大丈夫って言って笑うんですよ。
それが先生には不思議で仕方なかったです」

鼎「お母さん、自信家ですから、
そういうの得意なんですよ」

葉子「ふふっ、そうみたいですね」

葉子先生が窓の外を見つめ、
憂いをおびた息を漏らす。

葉子「でも、儀式は失敗どころか……
全部壊しちゃってから、あの人は帰ってきました」

鼎「……あはは」

お母さんが松籟会の言うことを聞くはずないしね……。

それでも壊して帰ってくるのはどうかと思うけど。

葉子「それで、あの人が先生にだけ
教えてくれたことがあります」

鼎「先生にだけ……ですか?」

葉子「巫女をこれ以上生みだしたらいけない。
もし巫女の歴史を続けるなら、
自分よりも強い巫女に育てないといけないって」

鼎「…………」

葉子「先生はその後すぐに本家に戻されたので、
高遠さんのお母さんと話したのはそれが最後です」

巫女をこれ以上生み出したらいけない。

だから、お母さんは儀式を潰そうとした?

あの場所……あの祠に何があるの?

葉子「高遠さんのお母さんより強い巫女を
育てるのは難しい話です。もちろん、
巫女を生み出さないことも不可能です」

「でも、少しでも目標に近づけようとして……
先生はヤヤちゃんを育てました」

「ふふっ、その御陰で怖がられちゃってますけどね」

鼎「あはは……みたい、ですね」

どうやら、ちゃんと自覚はあったらしい。

葉子「高遠さん、先生はここから応援することしか
出来ません。ヤヤちゃんのこと、お願いしますね」

「色んな意味で♪」

鼎「は、はい……?」

葉子先生に返事をしようとした時、
そんなことを言われて疑問符がついてしまう。

葉子「ふふっ、ヤヤちゃんとの距離、
見ていたら分かりますよ~?」

鼎「うっ……す、鋭い、ですね……」

そんなことを言われながら詰め寄られると、
じりじりと後ずさりしてしまう。

気付くと背中が壁にぴったり。

葉子「それで――ヤヤちゃんには
もう手を出したんですか?」

耳元でそんなことを言われて背筋が震えてしまう。

従姉妹のお姉さん相手に、しかも担任の先生相手に、
ここでイエスと言えるだろうか?

それは難しい、とても難しい。

鼎「え、えーっと……秘密……って無理ですか?」

葉子「ふふっ、無理です♪」

鼎「うぅ……」

逃げだそうにも既に退路は塞がれている。

この状況……どうしたら。

葉子「そうそう~、先生はですね、昔、
高遠さんのお母さんのことが好きだったんですよ。
だから、いいことを教えてあげます」

鼎「イイコト……デスカ?」

それはもう嫌な予感しかしない。

何で退路を廊下側に選ばなかったんだろうか、
と後悔する。

葉子「ヤヤちゃんとの今後のために♪」

そして、先生の指先が私の太ももに触れた瞬間――
それはもう色んな覚悟を済ませておいた。

鼎「わっ……ぁ……ちょっ……先生……」

先生の指先が太ももに触れたかと思えば、
そのまま這い上がってきてしまう。

鼎「……んっ…………っ……」

内股を撫でられる感覚に声が出そうになる。

何とか堪えたものの、こんなことを続けられて、
いつまでも我慢できるとは思えない。

放課後で、学園の教室で――しかも先生と。

どこに間違いがあると考えれば、
間違いだらけな気がする。

とにかく条件も含めて、色々とまずい。

葉子「どうしたんですか? 高遠さん、急に黙っちゃって」

どうしたと聞かれても、先生の指が動いているので、
下手に口を動かせば、変な声が出てしまう。

鼎「っ!? はぁっ……んっ……先生っ……」

このままずっと黙り込んでいれば……なんて考えた時。

とうとう先生の指先が私の下腹部に到達してしまう。

僅かに触れるか触れないかの刺激にも関わらず、
私の唇が自然と開き、声が溢れ出す。

しかも、偶然触れたというわけではなく、
明らかな意図を持って、先生の指が動いていた。

鼎「はぁっ……んぅ……こんなこと、ダメですって……」

葉子「ヤヤちゃんには、もうしたのにですか?」

鼎「そ、それは……二人の……秘密で……っ……」

葉子「先生、教えてもらえないとやめられないかもです」

鼎「うぅ……でも、こういうのは……ひぁっ……ぁっ……!」

先生の指が敏感な部分をなぞりあげる。

抗議を繰り返す私を静かにさせるには
充分すぎる刺激だった。

葉子「高遠さん、可愛い声が出ましたねぇ♪」

しかも、わざわざ耳元でそんなことを言われてしまうと、
顔が熱を発してしまうのが分かる。

恥ずかしさもさることながら……一つ気になった。

先生……こういうの、慣れている……?

鼎「やっ……そこ……
そんなにしないで……ください……」

私の疑問を肯定するように刺激が続く。

ショーツの上から幾度も指先が敏感な部分をかすめ、
内股が意図せずとも震えてしまう。

堪えきれない息が口元から漏れ、
その恥ずかしさで顔がさらに熱くなる。

葉子「先生はヤヤちゃんとの秘密を
教えて欲しいだけですよ?」

鼎「……うぅ……んっ…………あっ……くぅ…………」

「はぁ……んっ、そんなに……さ、触られてると……
しゃ、喋れないですよ……はぁっ……」

言っている間にも触られるから、どうしても声が上擦る。

最初からそうなることを望んでいたかのように、
先生の指は憎らしくも刺激を続けていた。

そんな行為に対し、身体が素直に反応して、
両足がぷるぷると震える。

このまま立っているのはつらい。

だからといって逃げる場所があるわけも無く、
私は近くのカーテンを強く掴んだ。

葉子「じゃあ、先生が手を止めてる間に喋って下さいね」

ぴたりと……本当に刺激が止まってしまう。

敏感な部分、ちょうど陰核に触れるか触れないか、
そんなぎりぎりのところで指が止まっていた。

ここまで身体を熱くさせた上で、これは……もっとつらい。

刺激を再開して欲しい気持ちと、逃れたい気持ちが
せめぎ合い、ひとまずの回答を私から告げさせていた。

鼎「うぅ……ヤヤとは……その、
一回だけ……しました……」

葉子「やっぱり、
そんなところまで進んでいたいたんですね~」

どこか楽しげに言った先生の指が再び蠢く。

爪で引っかけるようにして、
ショーツの上から敏感な部分をこねくり回す。

鼎「ひぁっ……あっ……
ど、どうして再開するんですかっ……」

葉子「まだまだいっぱい聞きたいことがありますし~」

刺激に対して、膨らむ陰核を楽しむように、
何度も爪先がなぞりあげていく。

その繰り返しに抗議しつつ、
私は耐え切れずに背筋を震わせる。

葉子「高遠さん、
先生の指で感じてくれてるみたいですし、ふふっ」

鼎「だ、だって……そ、そんなとこ……触られたら……」

葉子「触られたら、どうなっちゃうんですか?」

鼎「そ、それを……い、言わせますか……?」

葉子「はい、高遠さんの口から聞きたいです♪」

せ、先生、ひどい……!

さらに顔が熱くなり、背中まで汗ばんでいるのが分かる。

鼎「か、感じちゃいますよね……普通…………」

葉子「放課後の教室で、
こんなことされちゃってるのにですか?」

うぅ……先生、ひどいっ……!

それでも、どうしてか感じてしまう。

そう思った私の心を読んだかのように、
指先が一際強く陰部を擦り始める。

鼎「ひっ……あっ、あぁっ……
んっ……はぁっ……あぁっ!」

葉子「高遠さん、声出てきましたね~。
場所を意識すると、変わるものなんでしょうかね~?」

「そ、それは……わかんない……です……っ……」

そう答えるのが精一杯だった。

既にショーツまで濡らしてしまっているのが分かる。

おそらく指で触れている先生にも伝わっているはずと
思えば、さらに恥ずかしさが増して、もう限界だった。

葉子「なんだかいっぱい濡れてきちゃいましたね、
ふふっ」

鼎「っう……そんなこと……言わないで、くださいぃ……」

葉子「ふふっ、高遠さんはこうして
エッチなことされるのが好きなんですね~、
ヤヤちゃんに教えた方がいいですか?」

ヤヤの名前を出された途端、
身体が何故か反応してしまう。

熱が溢れ、背までぴくりと跳ねる。

葉子「ヤヤちゃんのことを言った途端、
もっと濡れてきましたね」

鼎「き、気のせい……です……っ……」

と言ったものの、
気のせいではなく反応してしまったのは事実。

こ、これは……浮気なんだろうか?

とにかく、様々な要素と条件が絡み合い、
得体の知れない融合反応を起こしていた。

葉子「へぇ~、じゃあ確認してみてもいいですか?」

鼎「か、確認っ……!?
か、かくにんって……そ、その……!」

葉子「ふふふっ、見てみましょうね~♪」

声を上げる前にショーツがずり下ろされてしまう。

熱を蓄えた陰部が外気にさらされた羞恥心に、
両足が震えて、立っているのが精一杯になる。

そんな私に追い打ちをかけるかのように、
ショーツの後に続き、滴った愛液が太ももを伝う。

葉子「分かりますか~? 高遠さん?」

鼎「っ…………ぅ…………うぅ…………」

それだけ濡れてしまっていた自分も恥ずかしければ、
わざわざ言われてしまう恥ずかしさもある。

どこかに逃げだして隠れてしまいたい気持ちも募るが、
もう身体が言う事を聞いてくれる気がしなかった。

葉子「高遠さん? 分かりますか?」

愛液が伝った太ももをなぞられ、二回目の質問――。

言葉で答えることなんて出来ず、
私はこくこくと首を縦に振る。

そんな反応でも満足してくれたのか、
先生の指が私のアソコに直接触れてきた。

鼎「ふぁ……あぁっ……んっ……あっ、あああっ……」

葉子「ふふっ、さっきより声出ちゃってますね~。
こうして直接される方が気持ちいいですか?」

鼎「はぁっ……んんんんっ……そ、それは……んっ……
そのまま触られたら……はぁっ……ううぅ……」

葉子「触られたら?」

質問と同時に、先生の指が止まる。

またしても……一番感じてしまう部分の手前だった。

ここまで身体を熱くさせられた上で止められるのは、
生殺しに近く、堪えきることなんて出来ない。

鼎「うぅ……感じちゃい、ます……はぁっ……んぅ……」

感じていると言葉にした途端、体中の毛が
逆立ったかのように、ぞくりとした感覚が反響する。

太ももにさらなる愛液が伝い、
みだらにも濡らしていってしまう。

葉子「じゃあ、感じちゃったらどうして欲しいですか~?」

そこまで言わせるかと泣き出しそうになるけれど、
熱くなってしまった身体は、どこまでも正直だった。

自然と腰が揺れ、
先生の指に身を任せたい欲求に抗えない。

鼎「うぅ……ぅぅ……もっと……して、欲しいです……」

葉子「ふふっ。どんな風に、ですか?」

さらに言葉を求められ、耳元から熱が反響していく。

またしても指が焦らすように動くから、
もうどうしようもならない。

鼎「そ、そこ……エッチなとこ……
もっと触って……欲しいです」

葉子「高遠さんって、ホント正直ですね~、ふふっ」

いよいよ刺激が再開され、先生の指が陰核を這う。

鼎「ひぁっ、ああっ……んっ! んんんっ!
ああぁっ……!」

待ちわびていたかのように身体が反応し、
ぞくぞくとした感覚に背筋まで震えていく。

先生の刺激を受け、愛液がさらに溢れ出し、
くちゅっといやらしい音を下腹部で奏でられる。

鼎「はぁっ、んああっ……あっ……
ダメ……そんなのっ……!」

葉子「ふふっ、もう声が止まらないですね~」

鼎「ふぁ……あああっ……あんっ……
んんっ……ああぁっ!」

耳元で煽られるほど、何も考えられなくなっていく。

ここがどこか
場所を忘れてしまいそうなほど声が漏れ出す。

「くぅ、ああぁっ、ああっ、んっ……あああぁっ……!」

葉子「このまま最後までしてあげますね? ふふっ」

ちゅっ、ちゅっ……と愛液を絡めた指が動き、
陰核へ絶え間ない刺激を繰り返していく。

カーテンを掴む手に力が籠もり、
近づく限界に両足が砕けてしまいそうになる。

「高遠さん、イッっちゃいそうなんですか?
じゃあ、先生にちゃんと教えて下さいね~」

鼎「はぁっ、うぅっ……んっ……はぁっ、はぁっ……っ……」

とてもエッチなことを言われているのが
分かってはいても、
それ以上のことは考えてはいられなかった。

さらに勢いをつけて動く先生の指に
意識が持って行かれる。

愛液を塗り込みながら、指の腹で陰核を弾く。

鼎「んああっ……っく……あぁっ、
イク……ダメ……くうぅっ」

「だ、ダメっ……先生っ……イク……
イッっちゃうっ……!」

押し潰すようにしながら擦られると、
もう堪えきることなんて出来なかった。

「ひぁっ!? イク、イッっちゃうぅっ!
ああああぁああっ!!」

頭の中が真っ白になり、身体が痙攣したように跳ねる。

びくびくと仰け反る身体に合わせ、
愛液が飛び散り、止まらない。

葉子「ふふっ、高遠さん、すごいエッチですね~」

耳ともで囁かれる言葉すら心地良く思えてしまうほど、
意識が朦朧としていた。

鼎「はぁっ……はぁっ……はぁ…………んっ……」

葉子「ヤヤちゃんのために、
この事は秘密にしておきますね。
先生が教えたこと、ぜひ実戦して下さいね~♪」

実戦……実戦って……今の授業的な何か……?

ぼうっとする頭ではよく考えられず、
肺に空気を送り込むので精一杯だった。

葉子「でも、ホントにあの人にしてるみたいで
不思議な感覚でした」

あの人……? お母さんのこと……?

「楽しかったですよ、高遠さん♪」

鼎「はぁ……ううぅ……私は大変でしたよぅ……」

さすがにもう立っていられず、
先生に甘えるかのように寄りかかってしまう。

葉子「ふふっ、寮に帰るのはちょっと休んでからですね」

そうしないと……とても無理です。

そんなことを思いながら、私は荒い息を繰り返した。”
脚本
⇒櫻井は、末来が礎となる事を
ぎりぎりまで認めなかった点に注目
(櫻井は、末来が礎になる事を望んではいない)
⇒八弥子編の鼎は、かなり女の子らしさがある
演技
   
演出    
作画
   
補足
   





  7-1-3 7-2-1
状況
先の一件で身体が火照っている鼎。
不可抗力とはいえ、罪悪感を覚える。
奈岐や末来からの連絡は無く、休みたい所。
自室に戻らなかったのは、由布と会うと気まずい為。
肌を重ねる八弥子と鼎
学園は静か。巫女候補の姿は無く、
動向も分からない。葉子はいつも通りに授業。
昼休みのチャイムを聞き、食堂へ向かおうとする。
八弥子と奈岐が現れる。奈岐、松籟会が巫女候補を
使って、自分達(奈岐、末来、頼継)を
探し始めたという。末来達と合流する為、
先を急ぐ三人。階下で櫻井と葉子に出くわす。
見ない振りをするという櫻井。八弥子に
力の使い方について語る葉子。森へ向かう三人
時間
三十五日目・夜 三十六日目・昼
場所
寮・八弥子の部屋
学園・中庭 ~ 学園・階段前 ~学園・学園長室前
設定
  ・食堂は鼎達の教室よりも下の階
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
八弥子と鼎

鼎“「ねえ、ヤヤ? ヤヤのこと、色々知っちゃった今さ、
もうお互いがラブでいいんだよね?」

ガバッと身体を起こして、そんなことを訪ねていた。

八弥子「カナカナ、唐突だねえ」

ヤヤは頬を掻いた後、いつものように微笑んでくれる。

「ヤヤの秘密も知られちゃったしねー。それにヤヤは
カナに悪いことしちゃったし、もう何も言えないよ」

鼎「じゃあ、好きって言ったら、好きって言い返してくれる?」

八弥子「ふふっ、もちろん」

答えを聞いてからベッド脇に腰かけたヤヤに詰め寄っていく。

鼎「ヤヤ、ヤヤのこと、好き。また押し倒したいぐらい好き」

八弥子「あはは、カナカナは……またまた強引だなぁ」

鼎「好きって言い返すのは?」

八弥子「ふふっ、ヤヤもカナカナが大好きだよ」

甘い言葉のお礼に頬に口づける。

ただ火照ったままの身体で、好きな相手にそうすれば、
もう止められるはずもなく――。

八弥子「カナカナ、やっぱり強引っ……!」

鼎「ふふんっ、強引なのが特技になりました」

ヤヤの服に手をかけながらベッドに押し倒していく。

ベッドに押し倒したヤヤに口づけていく。

鼎「ちゅっ……んっ……ぺろっ……」

八弥子「んっ……カナ、ホント……強引……あっ……」

鼎「だって、我慢出来ないんだもん」

ヤヤの身体を撫でながら、頬から首筋にかけてキスを繰り返す。

下着を脱がせる間が惜しくても、しっかりと胸に手を這わせる。

八弥子「はぁ、んっ……もう……カナカナってば、
おっぱい好きだね……んあっ……ぁ……んっ……」

鼎「ふふっ、ヤヤのおっぱい大好き。大きくてふにふにしてる」

八弥子「カナカナ、揉み方が……エッチになってる……
はぁっ……」

鼎「エッチしてるから、揉み方もエッチになります」

円を描くように乳房に愛撫を続けながら、
ヤヤへのキスも忘れない。

首筋を舌先でつつくようにしては何度か吸い立てる。

鼎「ちゅっ、ちゅっ……んっ……ちゅっ……れろ……」

八弥子「はぁ……んんっ……舌が……変な感じ……で……」

鼎「跡が残らないようにはしてるから……ちゅっ」

八弥子「んっ、カナカナ、そんな問題じゃない……のっ……」

そうして言葉を交わしていると、首だけだと物足りなくて、
ヤヤの唇を求めていく。

口づけて、そのまま互いの舌を絡め合わせる。

「ちゅっ……んんっ、ちゅっ……はぁっ……んっ……」

鼎「ちゅっ、ちゅっ……ヤヤの唇、美味しい……んっ……」

絡み合う舌に唾液を乗せて、交換し合うようにする。

ぼぅと頭まで蕩けそうになるぐらいにキスを繰り返していると、
自分の身体もまた火照ってきてしまう。

鼎「ヤヤ、もっとしてあげる」

気持ちに歯止めがきかなくなり、再びヤヤへの愛撫を再開する。

唇から耳へ、耳から首筋に舌を這わせていく。

指先は乳首を揉みしだくと、次に乳首を摘むようにして転がす。

八弥子「あっ……あんっ……んんっ……カナぁ……んうぅ……」

「身体、熱くなっちゃう……はぁっ……ぁ……んああっ……」

舌と指での刺激が強くなると、ヤヤの反応も激しくなってくる。

うっすらと滲み出るヤヤの汗すら舌ですくいながら、
感じてくれている嬉しさに気持ちが昂ぶった。

鼎「ヤヤの身体、ホントに熱くなってきた……」

八弥子「カナもすごく熱いよ……?」

重なりあった身体が熱くて心地が良い。

そのまま肌をを擦り合わせるように動くと、
身体が火照り、意識せずとも吐息が漏れる。

自然と太ももを絡ませ、さら刺激を求めていく。

「あっ……んっ……カナがいっぱい触れてて……
はぁっ……それだけで……もっと熱くなっちゃうよ……」

鼎「私も……ヤヤがもっと欲しくなる……んっ……」

舌や指での愛撫を続けながらも、
擦りつけ合う太ももの動きも止まらない。

互いのショーツに太ももを押して、秘所への刺激を繰り返す。

八弥子「んっ……カナの……すごく熱くて……
濡れちゃってる……」

鼎「ヤヤも……いっぱい濡れちゃってるよ……?」

指先をヤヤのお腹に伝わせ、そのまま下腹部へなぞり、
ショーツに辿り着く。

すっかり濡れそぼったヤヤのショーツを軽く指で押し込む。

じんわりと溢れ出す愛液を指で感じていると、
もうこれ以上は堪えることが出来なくなる。

八弥子「んああぁっ……あんっ……カナ、
そこ……はあっ……っ……」

鼎「んっ、ちゅっ……はぁっ、ヤヤ……もっとしたい……」

八弥子「カナ……? うん……カナの好きにしてもいいよ……?」

鼎「うん、じゃあ……もっとするね」

ヤヤのブラを外し、その次にショーツを脱がせていく。

それから自分の下着も脱ぎ捨てながら、ヤヤにキスを繰り返す。

八弥子「んっ……ちゅっ……ちゅっ……はぁっ……んあっ……」

鼎「ヤヤ……足、ちょっと上げて……」

八弥子「こう……?」

鼎「うん……はぁっ……んっ……だったら、こうして……」

八弥子「あっ……んんっ……カナの……
熱い……はぁっ……ぁ……」

鼎「ヤヤのも……すごく濡れてて……
あんっ……エッチな感じ……」

知識だけで互いの秘所を合せてみる。

敏感なところに届きそうで届かないもどかしさと、
僅かに触れ合った時の快感に腰が跳ねてしまう。

鼎「はぁっ、んっ、これ……すごく変な感じ……はぁっ、んっ……」

八弥子「んうっ……んあっ……あぁっ、ヤヤも……熱いの……
止まらなくて……あっ……くっ……んんっ……!」

ぴくんっとヤヤが背を反らせる。

その反動で重ね合わせていた秘所が擦れ、刺激が増す。

鼎「ひぁっ……あっ……ヤヤ、急に……動いたら……くぅっ……」

予想しいないところから来た快感に声が出てしまう。

八弥子「カナもそんなにしたら……
んっ……あっ……はぁっ……んっ」

互いの愛液が絡み、太ももまで伝い、
動く度にいやらしい水音が聞こえる。

そんな音が耳に入るだけでも、興奮が煽られてしまう。

鼎「ダメ……ヤヤ、とまんないよ……これ……んあっ……あっ!」

八弥子「はぁっ、はぁっ、ヤヤも……もっとカナが欲しくて……んっ」

「カナぁ……もっと……触れて……はぁっ……ああっ……!」

腰を動かして、陰核同士を触れ合わせてみる。

少し擦り合わせるだけでも、強い刺激が背筋を走り抜けた。

鼎「っあ……ああっ……はぁっ、ヤヤ……んんうぅっ……」

八弥子「すごい……カナ、それ……はぁっ、んんっ……
腰が、ぴりぴりしちゃって……気持ち、いいよ……」

鼎「ヤヤ、私も……これ、すごくて……はぁっ……もっとほしいよ」

我慢出来ずにヤヤを求め、身体を折ってはキスを繰り返す。

舌を絡ませ、互いをひたすらにむさぼり合う。

鼎「はぁっ、んっ、ちゅっ、ちゅるっ、ちゅっ……ちゅっ……」

八弥子「んんうっ、んちゅっ、ちゅっ……んっ……ちゅうっ……」

ヤヤの唇から零れそうになった唾液を舐め取り、再びキスへ戻る。

その間にも腰を揺らし、ヤヤの太ももに秘所を擦りつけていく。

鼎「はぁっ、んんっ……んちゅっ……ちゅっ……はぁ、はぁっ……」

八弥子「カナ……キス、すごい……頭の中まで、とろけちゃうよ……」

唇を離すと再び秘芯を擦り合わせるようにして動き出す。

零れる愛液を絡めながら、腰を前後左右に擦りつけていく。

鼎「あっ、あんっ……あっ……ヤヤ、熱い……アソコが熱いよぅ」

八弥子「んっ、んんっ、ヤヤも熱くて……はぁっ……ああっ……
カナのと混ざって……ダメ……頭、真っ白になっちゃう……」

鼎「ヤヤ、私も……はぁっ……、あっ、はぁっ……はぁっ、あぁっ……」

一度動き出すと、もう止めることが出来ず、
快感に意識を委ね、身体を重ね合わせる。

陰核が触れ合う度にヤヤの腰が跳ね、
不規則な刺激が来るのが堪らず、頭が真っ白になっていく。

鼎「ああぁっ……んんっ、ヤヤ、ダメ、私、イッちゃ、うっ……」

差し迫った絶頂を求めて、激しく動けば動くほど、
愛液がくちゅくちゅといやらしい水音を響かせる。

次第に動きに合せて、ベッドも僅かに軋み、
ゆらゆらと私達と同じく揺れていく。

八弥子「ヤヤも……もう……こんなっ……はぁっ、
ああぁっ……あっ!」

限界を訴えるかのうように、ヤヤがシーツを強く引っ張った。

秘芯に触れそうで触れない感覚が、
なかなか最後まで導いてくれず、熱い吐息だけが漏れる。

鼎「はぁっ、はぁっ、あああっ……ううっんんんっ……!」

八弥子「カナ……カナぁっ……あっ、うううっ……んあっ、あああっ!」

一度上手く陰核が重なり、愛液で滑ると、
その感覚を逃さずに腰を揺さぶっていく。

電気が走ったかのような快感が何度も弾け、
そのままお互いの限界まで上り詰める。

鼎「ふあぁ、ダメ、ヤヤ、イク……イクっ……イッっちゃうっ!」

八弥子「あああっ、ヤヤも……
カナぁっ……カナぁっ……あああぁっ!」

鼎「イク……あああっ、ああああぁああぁっ……んんんんっ!!」

八弥子「カナっ……カナぁっ! あああぁあぁっ! あああああっ!!」

腰が断続的に跳ね、私もヤヤも同時に絶頂の嬌声をあげる。

ぴくぴくとした痙攣は止まらず、まだ秘所が僅かに擦れ、
しばらく達したままの感覚が続く。

鼎「ああぁ……ぁ……はぁっ……はあぁ……んっ……ぅ……」

八弥子「はぁっ、はぁっ……カナ……んっ……はぁっ……はぁ……」

呼吸を整えながら、目の前にいるヤヤの愛しい顔を見つめる。

身体まだ火照っていて、ヤヤが欲しくて堪らない。

鼎「ね、ヤヤ……もっとしてもいい……?」

八弥子「ふふっ、カナカナってば……熱くなっちゃってる……」

「じゃあ、キスしてくれたら……もっとしてもいいよ?」

鼎「……なら、いっぱいキスして……いっぱいしちゃう……」

八弥子「カナのエッチ……」

鼎「ふふんっ……だって、止まらないんだもん……」

少しだけ余裕の笑みを浮かべてから、
ヤヤを求めて再びキスをする。

鼎「んっ、ちゅっ……ちゅっ……んんっ……」

八弥子「はぁ……ちゅっ……んっ……カナ……
キスもエッチだよ……」

鼎「ヤヤも……すごく熱くて……あんっ……んっ……
もう、とまんない……」

それがただのキスで終わるわけもなく、
舌を絡ませ合い、身体を重ね合わせていく。

そうして、結局――
疲れ果てて眠る時まで二人して求め合い続けてしまった。”
松籟会の危険性 八弥子の力、境遇 葉子の実力
末来と櫻井の協力関係

奈岐“「あまり良くない知らせだ」

階段の隅に移動したところで、奈岐がそう切り出す。

鼎「良くない知らせ……? 何か動きがあったの?」

奈岐「松籟会側が巫女候補を使って、
私達を探し始めた。 まるで狐狩りのようにな」

八弥子「ナギっち達……平気なの?
ミライっちも一緒なんだよね?」

奈岐「見つかるのも時間の問題だろう。
しかし案ずるべきは、鼎と禰津、お前達自身だ」

鼎「まさか、私達も……?」

奈岐「理事長側についている私と
接点が無いとは考えにくい。それに勾玉のこともある。
間違いなく捕縛に向かうだろう」

八弥子「もう学園も安全じゃないってことかー」

奈岐「残念ながらな。とにかくここから離れて、
末来達と合流する。他の学生達の前で
やり合うわけにはいかん」

その言葉には、ヤヤも私も同意だった。

すぐに階段を下って、
末来さん達と合流するため移動を開始する。

一階に下り、廊下を急いでいると、
二人の人影が道を阻んだ。

通せんぼといった様子ではあるが、
何故か不穏な空気を感じることは無かった。

小さく咳払いをした後、学園長が私達に口を開く。

櫻井「……今し方、松籟会から連絡がありました。
あなた達の身柄を今すぐ引き渡すように、と」

鼎「引き渡されるのは困ります」

櫻井「そうでしょうね。私も片倉さんを信じた以上、
あなた達を松籟会に引き渡すことは出来ません」

素直に答えてみせたところ、
学園長が僅かに微笑んでくれた気がした。

櫻井「連絡を受けた私は、
高遠さん達の教室と寮の部屋へ向かった。
しかし、もうあなた達の姿は無かった」

「――そう報告するしかないでしょうね」

鼎「学園長……」

そう語った学園長から離れ、
葉子先生がヤヤに歩み寄る。

葉子「ヤヤちゃん、私達の血筋は必ずと言っていい
ほど星霊石の悪い影響を受けます」

「でも、そんな時こそ大切な人の声を聞いて下さいね」

八弥子「ヨーコ先生……」

葉子「きっとヤヤちゃんなら大丈夫です。
血の力に頼り切らずとも戦えるように
先生が仕込みましたから、ふふっ」

八弥子「…………」

急ぎなのにトラウマを刺激するのは
止めてあげてください、
と言いたいところだったけど……黙っておこう。

八弥子「と、とにかく、
今は急がないといけないみたいだしっ! ね?」

私が言わずとも、ヤヤが逃げるように声をあげていた。

鼎「あはは……そういうことなので、
ちゃんと全部終わらせてきます」

葉子「はい、授業は欠席扱いにしておきますね。
ただし、その分の課題は出ると
思っておいてく下さいね♪」

どんな時でも葉子先生は、
しっかり先生をしているらしい。

鼎「あはは……覚悟しておきます」

奈岐「やれやれ、とにかく今は急ぐぞ」

肩をすくめた後、奈岐が急かすようにして歩き出す。

私とヤヤは送れまいと慌てて後に続いていく。

櫻井「さて……大変なのはこれからですよ、
金澤先生?」

葉子「んー、松籟会の人達が来ちゃいそうです?」

櫻井「私達があの子達とは無関係――
松籟会がそう考えていると思いますか?」

葉子「ふふっ、考えてないでしょうね」

「一線を退いてしばらくになりますが、
学園長をお守りすることぐらいは出来ますよ」

櫻井「現役時代のあなたを思い出すと、
ここはやりすぎないように、
と注意しておくべきでしょうか」

葉子「ふふっ、もう先生という立場ですし、
学生達が引かない程度に抑えておきますね」

櫻井「はぁ……ぜひ、そうなさって下さい」”
脚本
   
演技
   
演出    
作画
   
補足
   





  7-2-2 8-1-1
状況
森に入り、全力で走り出す三人。
北にある神社に末来達が身を潜めている、と、奈岐より。
先行する奈岐、神住と由布を引き付けに向かう。
八弥子の制止により、足を止める鼎。
恵の機雷が張り巡らされている。
縁子と共に恵が姿を見せる。
恵、幸魂を務め、縁子と力の交信を行う。
戦闘後、気を失う縁子。一人でも戦う恵だったが、
縁子と同じく八弥子の前に倒れる。
夕刻、社へと辿り着く八弥子と鼎
奈岐の姿は見えない。頼継と昌次郎が出迎える。
末来が顔を見せる。奈岐はまだ来ていないという。
奈岐を捜しに行こうとする鼎、諭す末来と八弥子。
事情を話す末来。儀式の実態について告げる。
頼継と話をしに行く末来。奈岐を心配する鼎
時間
〃 ~ 三十六日目・夕
場所
森 ~ 神社
神社
設定
  ・末来の計画は、因習を壊す事
・それは未来との約束でもある
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
守る為の力

縁子“「やはり理事長達と行動していましたか」

恵「カナちゃん……今からでも遅くないから、
こんなこと止めよう?」

縁子「止めたところで、処罰はまぬがれませんが――
状況を冷静に考えてみてはいかがでしょうか?」

これは脅しでもあるとばかりに、鋭い切っ先が私達向く。

この二人がここにいるということは……
遠山先輩や由布にも指示が出ているはず。

奈岐の言った巫女候補達による狐狩りはもう始まっている。

考えている暇は無い。勾玉を使って支援に回るか、私も戦うか――。

奈岐「……このまま遠山と風間に合流さるのはまずいな。
私が囮になる。 禰津、相手は一対だが突破出来るな?」

八弥子「ナギっちこそ平気なの? カスミは強いよー?」

奈岐「フッ、私を甘く見ない方がいい。
鼎は何があっても勾玉を使うな」

鼎「でも……」

奈岐「禰津を信じろ」

勾玉に触れていた私に対し、奈岐の強い言葉が降りかかる。

八弥子「ナギっち、ヤヤが星霊石を使ったら、
すぐカスミ達に気付かれると思う」

奈岐「分かっている。対応してみせる」

タイミングを合わせるかのようにヤヤと奈岐が頷き合う。

そして、ヤヤが星霊石を輝かせ始める。

縁子「やはり一筋縄ではいきませんか……保科さん、支援を」

恵「カナちゃん、八弥子先輩……ごめんね」

恵の力が三輪さんに注ぎ込まれ、
一対として機能を発揮した。

それを迎え撃つようにヤヤは両手の得物を握り締める。

八弥子「カナカナ、何があってもヤヤから離れないでね」

「行くよっ!」

私が頷くと同時にヤヤが地面を蹴った。

風を巻き上げ、彼女が駆け抜けると、
私の隣で奈岐が星霊石を輝かせる。

氷塵を舞い上がらせ、姿を変えた彼女は陽動に出ると
言った通り、すぐに木々を蹴って森の奥へ向かっていく。

その間にも正面でヤヤと三輪さんが互いの武器を交錯させる。

ヤヤの攻撃を防ぎきれなかった三輪さんが地面に膝をつく。

縁子「くっ……一対でなくとも、その血の力に敵いませんか……
口惜しいですね……」

せめても、とヤヤを睨み付けた後、気を失い、その場に崩れ落ちる。

恵「三輪さんっ……!」

恵が声を上げてヤヤと三輪さんの間に割って入った。

鼎「恵、今は何が正しいのか分からないかもしれないけど、
ここは退いて。 お願い」

恵「カナちゃん……でも、そうしたら、
あたしは巫女候補でいられなくなる……」

「今は力不足かもしれないけど、来年こそはきっと……!」

一人でも退くつもりは無いと恵が武器を構える。

こんな状況で戦ってほしくない――
思わず唇を噛んだ私の肩をヤヤが叩く。

八弥子「巫女になることは、この島の子にとっては夢だから……
聞き分ける方が難しいかも」

鼎「でも……」

八弥子「それに今のヤヤ達って賞金首みたいなものじゃないかなぁ」

鼎「……まさか私達を捕まえたら、巫女になれるとか?」

カマをかけるようなヤヤの言葉に、恵が目を見張っていた。

松籟会は……中村さんの穴を埋めるため、
私達を捕まえた者を巫女に選ぶ……?

鼎「これが松籟会のやり方なんだね……」

恵「ごめん、カナちゃん……」

それが分かっていても、恵は下がらない。

巫女への憧れ、その夢が彼女をその場に立たせていた。

八弥子「だから仕方ないよ、カナカナ……下がってて」

ヤヤが真面目な調子で私を諭す。

島の子達にとって――か。

私は頭を振るうと、ヤヤの言葉に従い、後ろへ下がっていく。

そして、恵が武器を構え、機雷を展開させ始める。

(戦闘終了)

巫女の力を解除され、崩れ落ちた恵の身体を支える。

最後の気力まで使い果たしたのか、彼女もまた意識を失っていた。

鼎「ごめん、恵」

このまま連れて行くわけにはいかないので、
三輪さんの隣に恵の身体を横たえる。

これで三輪さんと恵はしばらく動けない。

でも――由布と遠山先輩達がどうなったか。

八弥子「ナギっち、大丈夫かな……」

鼎「近くに力は感じない。遠いかも」

八弥子「んー、とにかく言ってた神社に急ごう」

鼎「うん」

どこかで戦闘が始まっているかもしれないし、
もう終わっているのかもしれない。

とにかく、今は奈岐を信じて神社へ向かうだけ。

再び私達は森の中を駆け出す。

ヤヤは奇襲を警戒してか、巫女服のまま、私を先導する。

ただ、どこまで走っても、森は静かで戦闘の気配は無かった。

夕刻――私とヤヤの二人は神社の階段を駆け上がる。”
鼎の優しさと強さと公平さ 巫女の真実
守るための力 八弥子と鼎
末来の決意

末来“「来てくれてありがとう――鼎、八弥子」

そして、その後ろから末来さんが歩み出て、
顔を見せてくれる。

鼎「末来さん、奈岐は……?」

逸る気持ちを抑えながら、末来さんに訊ねるが、
ゆっくりと首を横へ振られてしまう。

奈岐が来ていない……?

「ヤヤ、奈岐を捜しに――」

焦燥感から踵を返そうとした時、
末来さんが私の腕を掴んでいた。

末来「落ち着くんだ、鼎。
今動けば、ここを知られてしまう」

鼎「でも、末来さん……」

末来「奈岐なら平気。
彼女のことは鼎も知ってるはずだよ」

鼎「…………」

鬼子としての奈岐の知力――
それは信用に足るものだけど。

私が思い悩んでいる間にも、
ヤヤは星霊石に力を戻す。

八弥子「カナ、今はナギっちを信じて待とう。
その代わり、ちゃんと説明してくれるよね?」

ヤヤが視線を末来さんと理事長へ向ける。

頼継「僕が話すと、どうも胡散臭くなるらしくてね。
キミにお願い出来るかな?」

戯けたように肩をすくめた理事長が末来さんを見た。

末来「普段の行いのせいだよ。
鼎、八弥子、ボクから話そう」

場所を移そうとばかりに末来さんが歩き出し、
社の中へ入っていく。

外観からして、
かなり年代ものの社を見上げて息を漏らす。

こんなところに身を潜めていたんだ……。

でも、神社だし……
社の中に入ってもいいんだろうか?

そんなことを思いながらも、
末来さんを待たせるわけにもいかないので、
私とヤヤは古びた社に足を踏み入れる。

社内は外観から想像したより綺麗にされていた。

ところどころ朽ちてしまっているが、
今にも崩れそうというわけでは無いらしい。

奈岐が隠れていたから、
ちゃんと掃除していたのかな……?

末来「――鼎は祠を知っているね?」

祠、以前に奈岐を捜して訪れた
あの場所のことを末来さんが言う。

私が頷くのを見てから、末来さんは話を続けていく。

末来「一対の巫女は奥の広間で儀式と称した
戦闘を行う。その相手となるのは無数の穢れ達だ」

「その戦いの末、生き残った巫女はいない」

鼎「えっ……」

八弥子「待って、ミライっち……
それって、死んじゃうってこと?」

目を見張った私達に対し、冷静に末来さんは続ける。

末来「そう、一対の巫女を贄として
穢れに捧げること。それが儀式の実態――
鼎のお母さんはそれを壊そうとした」

鼎「お母さんが……」

お母さんは巫女の掟を破ったと
中村さんが言っていた。

その理由は単純明快すぎるもので……
巫女が儀式を壊そうとした?

でも、儀式が生贄を捧げるものだと知ったら、
お母さんなら行動してしまうのも分かる気がする。

末来「ボク達の目的も同じ。
呪われた因習からこの島を解放すること」

鼎「儀式が失敗するって分かっていながら、
どうしてそんなことを続けて来たんですか」

末来「鼎、さっき言ったように一対の巫女を
贄とすることが儀式。彼女達が死ぬことが
儀式の成功を意味するんだ」

鼎「そんなことって……」

末来「あってはならない。ボクもそう思う。
だから、未来の……鼎のお母さんとの約束を果たす」

「鼎がいる今なら因習を終わらせることが出来る」

八弥子「ミライっち、どうしてカナカナなの?
カナに何かするなら、ヤヤが認めないよ?」

眉を顰めたヤヤが末来さんを見る。

末来「平気と、鼎と鼎の勾玉を力をボクが借りるだけ」

鼎「私と……私の勾玉の……?」

末来「それで終わりにしてみせるから」

そう言った末来さんの眼差しには、
何かの決意を感じた。

そんなことを感じてしまったからか、
不思議と私は何も言うことが出来なくなる。

八弥子「じゃあ、ヤヤ達は祠にいる穢れと
戦えばいいの?」

末来「そう。ボクが封印を行う間、
穢れ達を引き付けて欲しい」

八弥子「んー、相手に出来る数だといいんだけど」

末来「八弥子なら大丈夫。ただあの場所は穢れの
気が充満している。気を付けるのは八弥子、
キミの血のことだ」

八弥子「…………」

末来さんはヤヤに流れる血のことを指摘した。

穢れに似た禍々しい力を引き出すことが出来るヤヤ。

祠にその気が充満しているとしたら……?

またヤヤが正気を失ったかのような行動を
取ってしまうかもしれない――そんな心配だろう。

鼎「ヤヤには私がついてるよ。
何があっても正気に戻してあげる」

「引っぱたくかもだけど」

八弥子「あはは、カナカナ、その時は優しくしてね」

ニッと笑って見せると、ヤヤが楽しげに微笑んだ。

末来「今は八弥子の力を回復したい。
明日、日が昇り次第、祠へ向かう。
今日はここで休んでおいて」

「ボクは理事長と少し話をしてくるから」

末来さんはそう言うと、社の外へ出て行ってしまう。

鼎「奈岐、大丈夫かな……」

八弥子「んー……ナギっち、賢いからきっと平気だよ」

ヤヤがいつの間にか這い上がっていたガジを
抱きかかえ、膝の上に乗せた。

ここから動けない以上は奈岐を信じて待つしかない。

下手な行動は……
きっと奈岐自身に迷惑をかけてしまう。

私達が思っている以上に彼女は賢いのだから。

それでも、奈岐は一人で……。

言い様の無い不安が胸を苛み、
私はヤヤの肩に頭を預けていた。

不安なのはヤヤも同じだったのか、
抱きしめるようにして身を寄せ合ってくれる。

ヤヤの温もりを感じながら、目を閉じ、
不安が過ぎ去る時を待つ。

ただそれは奈岐の無事を知るまで続くだろうと、
心のどこかでは思っていた。”
脚本
  ⇒末来さんも鼎の母である事は、伏せられたまま。
これもまた、鼎を悲しませない為に
あえてそうしたと思われる
演技
   
演出    
作画
   
補足
  “鳥居の下にいた理事長と秘書が
私達を出迎えていた。”

⇒鳥居を通ったかどうかは判らないが、
鳥居の下にいるというのは、
純粋に手を貸すという意味に捉えられる。

言うまでも無く、この社が神狼を祀っていたことから、
因習を壊す事に協力的に感じられるという事






  8-1-2 9-1-1
状況
奈岐が気掛かりで、浅い眠りから目が覚める鼎。
隣で休んでいた八弥子がいない。外に出る鼎。
末来と頼継の姿も無い。鳥居の下をくぐり、
階段の前へ。八弥子の背中が目に映る。
八弥子の膝上に頭を預け眠る奈岐。
頼継達は周囲の警戒。末来は水浴びに。
奈岐は上手くやってくれたようだ。
いくつか言葉を交わす八弥子と鼎
朝を迎える。
奈岐は鼎の側で猫のように丸まったまま眠っている。
昨晩は、奈岐が起きてから、
ご飯を食べて水浴びをした。
奈岐は神住達を説得したという。故に到着が遅れた。
準備運動中の八弥子と話す鼎。
末来達は神社の下で、おそらくは作戦会議中。
自身を振り返る八弥子。八弥子の想いに触れる鼎
時間

三十七日目・朝
場所
神社・階段前
神社・外
設定
  ・七年前に頼継達を粛清したのは、禰津家
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
八弥子と鼎

鼎“「奈岐……」

八弥子「カナカナ、そーっとね。ナギっち、寝ちゃってるから」

静かな寝息を立てながら奈岐はヤヤの膝を枕にしていた。

相当疲れているのか、
髪をガジに遊ばれていても起きる気配すらない。

見たところ怪我も無く、無事に辿り着いてくれたようだ。

鼎「いつ戻ってきたの?」

奈岐の姿に安堵しつつ、私は小声でヤヤに訊ねる。

八弥子「ついさっきだよ。目が覚めて、ちょっと外に出たら、
ナギっちがふらふら階段を上ってた」

八弥子「で、危ないから捕獲したの」

クスッと笑いながらヤヤが奈岐の頭を撫でた。

それを真似るようにして、ガジが奈岐の髪でまた遊んでいる。

奈岐「んっ……ん…………」

再び奈岐が寝息を立て、僅かに頭を揺すった。

そんな奈岐からヤヤの視線が私に戻って来る。

八弥子「カスミ達も来てないし、ナギっちも上手くやってくれたみたい」

鼎「末来さんと理事長達は? 社にはいないんだけど」

八弥子「理事長達は周囲の警戒に行ったらしいよ。
それでミライっちは近くの池で水浴びだってさ」

この近くに池なんてあったんだ……。

今日は随分と走ったし、良かったら後で案内してもらおう。

鼎「あとで私達も水浴びしよっか。
この時間なら冷たくて気持ち良さそう」

八弥子「ふふっ、いいねー。ナギっちに水かけて遊ぼっかー」

それはそれで楽しそうと思ってしまう。

奈岐「んんっ……んぅ……うぅ…………」

そんな悪巧みに気付いたのか、奈岐がうなされている。

私とヤヤは顔を見合わせ、クスクスッと笑った。

八弥子「あとナギっちが起きたらご飯も食べないと、
ヤヤ、お腹ぺこぺこだよ」

鼎「あはは、私もだ。お昼食べ損ねちゃったからね」

でも、こんなところにご飯なんてあるんだろうか?

奈岐はここに隠れていたみたいだし、
あとで聞けば出てくるかな?

そんなことを考えた後、私はヤヤと奈岐の隣に腰をかけた。

鼎「ね、ヤヤ、絶対無事に帰ってこよう」

八弥子「どうしたの? カナカナ、急に」

鼎「今、こうしてる瞬間、凄く幸せだなって思えたから」

「もっとこんな時間が続いて欲しいって思うから。
だから、ちゃんと帰らないとね――って」

八弥子「ふふっ、そうだね」

鼎「それに無事に帰らないと、葉子先生が怖いよー?」

八弥子「うっ……」

鼎「あははっ」

葉子先生の名前にすくみあがったヤヤがおかしくて吹き出す。

こうしていられる時間が続けばいい。

続かなきゃいけないと切に思う。

この島でお母さんがやろうとしたことを……
私達が終わらせることが出来たなら、きっと。

今よりも楽しい時間が待ってくれているはず。

そう思いながら、私は夜空を見上げる。

星の数は多く、都会とは比べものにならない。

でも、この島に来てしばらく経った今は――
少しだけ見慣れてしまった。”
変わる奈岐 八弥子の力、境遇
八弥子と鼎

“昨晩は奈岐が起きてから、
ご飯を食べて水浴びをして……
と、ある意味で大忙しだった。

遠山先輩達のことは、奈岐の話によれば
事情を話した上で説得を試みたらしい。

奈岐にしては正攻法だと思うけれど、
見鬼の術があるからこその
選択肢だったのかもしれない。

その説得に時間がかかって、
到着が遅れたと語っていた。

とにかく、どちらも穏便に済ませてくれて
良かったと思う。

鼎「ガジ……?」

ガジ「ニャーン?」

奈岐の側で寝ていたと思ったガジが
社の外に出て行く。

同じようにして隣にいたヤヤの姿が無かった。

社の内にヤヤがいないから、捜しに出たのだろうか?

私はガジを追いかけるようにして外に出る。

朝日が眩い、社の外にガジが飛び出して駆けていく。

そして、その先にいたヤヤが
ガジを両手で抱きかかえた。

八弥子「おっはよー、ガジ。ガジも朝の体操する?」

ガジ「ニャーン!」

手足を動かす様は体操より、頭の定位置に
戻りたいと鳴いているようにも聞こえた。

八弥子「ガジは食いしん坊だから
運動しないとダメだよー?」

鼎「ヤヤ、おはよー」

八弥子「ん、カナカナも起きてきたんだ」

声を掛けると、ヤヤが笑顔で振りかえる。

鼎「うん、目が覚めてね。奈岐はまだ寝てる」

八弥子「ふふっ、ナギっちは夜行性だしね」

鼎「末来さん達は?」

八弥子「理事長達は神社の下にいるよ。ミライっちも」

今日の作戦会議とかかな……?
混ざった方がいいのだろうか?

鼎「それでヤヤは準備運動中?」

八弥子「そそ、今日はいっぱい動くみたいだしねー。
ちゃんと身体伸ばしておかないと!」

穢れと戦う……か。

末来さんは、かなり気の濃い場所だと言っていた。

中村さんと戦っていたヤヤの姿が頭に過ぎり、
心に僅かな不安が生まれてしまう。

八弥子「カナ、心配そうな顔してる」

そう言ったヤヤはガジへ視線を戻す。

その様子がどこか儚げに思えて胸が痛んだ。

鼎「ごめん、緊張しちゃって」

八弥子「ふふっ、ヤヤのことだよね。
顔に書いてあるよ」

鼎「……意識しないようにしてたんだけどね」

八弥子「一度ああなるとさ、
ホント抑えられないんだよね。
血がそうさせているって言ったら、その通りだと思う」

どこか遠いところを見るようにしながら、
ヤヤは言葉を続けていく。

「前に……ナギっちに言われたじゃん。
何人殺したって」

鼎「…………」

八弥子「七年前さ、松籟会の指示でヤヤの家が
動くことになった事件があったんだ」

七年前……お母さんが島に戻った時?

八弥子「松籟会に反抗した諏訪家――
今の理事長の一派を粛清しろって」

「当時、星霊石の力をやっと使えるようになってた
ヤヤには、それが初めての実戦だったよ」

鼎「ヤヤ……」

俯いたヤヤの表情が見えない、感情が読めない。

八弥子「理事長がさ、穢れを倒せるぐらい
強い人達を本土から連れてきてたんだ。
だからヤヤ達が戦うことになった」

最初は……凄く嫌な感覚だった。でもさ、血が
騒ぐんだ。 もっと生き血をすすれーって」

「途中から何も考えられなくなって、
ただ狩りをしていた。 見つけて、殺して、
また見つけて、殺して――」

「気付いたら、ホントに
何人殺したか分からなくなってた」

「悪いことをしているって意識はあったけど、
それ以上に血が沸き立つんだよね……」

そう言いながらも、ヤヤの頬には涙が伝っていく。

鼎「ヤヤ……」

八弥子「そんなヤヤがさ、呑気にこうしてガジを
抱いて過ごしてる。 カナのことを好きになって、
好きになってもらって……」

「そんなこと……
許されるような血が流れていないのにさ」

これはヤヤがずっと抱え込んできたこと。

自身の血に対しての意識……
それは恐怖に近いもの。

何よりも今のヤヤが見せる涙が全てを物語っていた。

鼎「ヤヤはそんな自分が怖いんだね」

八弥子「……カナ?」

ヤヤが振り返ると、再び頬に涙が伝っていく。

鼎「頭で分かってても止めることが出来ない。
直情径行だってよく言われる私と似てるよ」

「ヤヤのは、もっと逆らえないものなんだろうけどね」

八弥子「…………」

鼎「前に言ったけど、そんなヤヤもヤヤだから。
血に縛られることを誰よりも怖がってる」

「ヤヤ――昔のこと、話してくれてありがと」

「またヤヤのことを一つ知った、だから何度でも言う」

「私はヤヤが大好きだよ」

「その身体に流れる血と向かい合うのは怖いと思う」

「でも、私が側にいるから。どんなヤヤも
大好きでいるから。自分を怖がらないで、
否定しないで向かい合おう」

驚いたように口を開いたヤヤがまばたきを繰り返す。

その後、くしゃっと表情が崩れて泣きながら微笑む。

八弥子「カナ……恥ずかしいこと言うねぇ」

鼎「ふふーっ、だってこういう時にしか言えないし」

八弥子「あははっ、ありがと、カナ」

「ヤヤはね、誰かがこうして背中を押してくれる時を
待ってたのかもしれない」

「この身体に流れる血も自分の一部だから
認めてあげないといけないって――
それがありのままのヤヤなんだって」

「もう大丈夫だよ、カナ。ヤヤはヤヤとして生きていく」

鼎「うん」

八弥子「ありがと、カナ……
ヤヤもカナが大好きだよ」

それと同時に――仄かに勾玉から熱を感じた。

でも、その熱はいつもと違うように思える。

ヤヤの気を感じる……? そんな不思議な感覚……。

それに決戦が近いとお母さんが知らせてくれている
ように思え、私は意識を改めようと息を吐き出した。”
脚本
  ⇒鼎の魂が八弥子の想いに共鳴している
演技
   
演出    
作画
   
補足
   




  9-2-1 9-2-2
状況
円を得描くように、全員が鳥居の下に集まる。
事前の確認をする。陽動に出るという頼継ら。
七年前の話に思う所のある八弥子。
末来の胸中を見る奈岐。ガジは留守番
祠へ向かう末来、鼎、奈岐、八弥子。
途中で地震が発生、封印にほころび。
露払いを務める奈岐と八弥子。
奈岐、先行して進路を切り開く。
八弥子、周囲の穢れを祓う。祠に到着。
黒服を従えた頼継らと合流。ややあって、
七年前の事を口にする昌次郎。
思う所のある八弥子。私怨は失せたと、昌次郎、
それでも罪は背負うという八弥子。
時間

場所
神社・鳥居の下
森 ~ 祠・石門前
設定
   
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
末来の決意 八弥子と鼎 守る為の力

末来“「――ボク達は穢れに備える。手助けは必要無いんだね?」

淡々としながら、末来さんは理事長に問いかける。

そんな末来さんに対し、理事長は笑みを浮かべた。

頼継「もう戦いは始まっているんだ。時間になれば、
島中に潜伏した僕の部下が行動を開始する」

「祠への注意を逸らすだけじゃなく、老人たちの指揮系統を
無茶苦茶にしてやろうじゃないか」

「なにせ、これは僕と昌次郎が受けた七年前の屈辱――
それを晴らす為の戦いでもあるんだからね」

七年前……また七年前?

思わずヤヤを見ると、
どこか噛み締めるように目を閉じていた。

末来「鼎達、準備はいいね?」

鼎「はい、大丈夫です」

八弥子「いつでもっ」

奈岐は物言いたげに目を細めたが、無言で頷く。

末来さんに……何かを見たんだろうか?

末来「じゃあ、始めよう」

頼継「それじゃあ、巫女諸君、生きて祠で合流しよう。
行くよ、昌次郎」

昌次郎「はっ、今が全ての力を注ぐ時――」

理事長が片手を挙げると、秘書を引き連れ、
神社を後にしていく。

続いて、末来さんと奈岐が歩き出す。

八弥子「カナ、ヤヤから離れちゃダメだからね」

鼎「ふふっ、守ってもらえるのはお姫様気分だよ」

八弥子「あははっ、おてんばなお姫様だなぁ。
あと、ガジはお留守番だからねー」

ガジ「ニャーン?」

分かっているのかいないのか、ガジは不思議そうに声をあげる。

鳥居の下にガジを置くと、素直に座り込んでくれた。

その様子に私とヤヤは頷き合ってから、
末来さん達の後を追いかける。”
末来の決意
八弥子の力、境遇
巫女の真実

“理事長達はもうどこかで戦っているのだろうか?

そんなことを考えながら、先頭を走る末来さんに続く。

そして、目的の祠へ続く獣道が見えた時だった。

奈岐「くそっ! 予測より早いぞ、末来っ!!」

鼎「な、奈岐っ!?」

末来「揺れるよ。全員、足元に注意して」

冷静な末来さんと歯噛みする奈岐が対照的で――。

その次の瞬間、ゴゴッと地面が縦に大きく揺れた。

じ、地震っ!? でも、何か違う?

鼎「わわわわっ!?」

奈岐「禰津、霊石の力を使え! 穢れが来るぞ!」

奈岐が揺れも気にせず、星霊石を輝かせた。

揺れが鎮まった途端、
肌を突き刺すような感覚が周囲を取り巻く。

八弥子「この気配、穢れ!」

ヤヤがすぐに風を舞い上げ、巫女服に姿を変える。

鼎「これっていったい……!?」

末来「封印にほころびが生じた。
封じたものから穢れが溢れ出す」

封じているものっていったい何……?

「ボクと鼎はまだ力を使えない。
奈岐、八弥子、お願い」

奈岐「言われなくても! 禰津、来るぞっ!」

八弥子「了解っ!」

ヤヤと奈岐が左右に分かれ、それぞれの武器を構える。

進行方向からだけでなく、
森の中からも穢れが姿を見せ始めた。

奈岐「――祠の道は私が切り開く。
禰津は鼎と末来に穢れを近づけさせるな」

八弥子「ナギっち、すぐに援護に行くからね」

奈岐「期待している」

切り開くと言った通り、奈岐が素早く前方へ駆け込む。

八弥子「カナ、ミライっち、離れないで! 来るよっ!」

その間にも周囲から迫る穢れをヤヤが迎え撃つ。

ヤヤの風が穢れの群れを薙ぎ払う。

同時に前方から奈岐が私達を呼ぶ声が聞こえた。

「今のうちに!」

武器を引き戻したヤヤが駆け出し、
末来さんと私はその後に続く。

祠内は以前よりも冷たく、
人を拒んでいるかのようだった。

さっきの揺れの影響で落盤などは起きていないが、
代わりに嫌な気配が滲み出ていた。

次から次へと穢れが溢れ出し、
前方で道を開いていた奈岐が舌打ちをする。

奈岐「チッ、切りが無いっ!」

八弥子「奥まであとどれぐらい!?」

駆けつけたヤヤがすぐに奈岐の援護に回り、
穢れへ鉄球を放つ。

奈岐「石造りの門が見えたら終着点だ!
そこまで粘れ!」

そんな中、末来さんは険しい表情を見せていた。

鼎「末来さん……?」

末来「――――」

何も言わずに、ただ奥を――
奥にある何かを睨んでいる。

ようやく奈岐が言っていた石造りの門が見える。

星霊石に似た気配を纏う不思議な岩の扉が
開け放たれていた。

これはいったい……
そんなことを考えていた時、背後から足音が聞こえる。

思わず身構えるが、現れたのは理事長と秘書だった。

その後ろには秘書と同じように
スーツを着込んだ男性達が続く。

アレが理事長の部下達……?

頼継「やれやれ、なんとか合流出来たね――
例のほころび、予測より早いじゃないか」

末来「……ボクにも全てが分かるわけじゃない。
そういった勘はキミ達の方が優れていると思う」

頼継「褒められた気がしないよ。ま、いいさ」

理事長が片手を挙げる。

「昌次郎、部下の半分を援護に回すんだ。
残りは入り口で松籟会の介入を阻止、いいね?」

昌次郎「はっ――お前達、散れ! 今が頼継様の
恩義に報いるとき、七年前の屈辱を晴らす時ぞっ!」

また七年前……?

秘書の背後で控えていた黒服達が、
私達の側を駆け抜けていく。

その姿を見たヤヤの顔がどこか強張っている。

八弥子「…………」

まさかヤヤが狩ったのは……今の人達……?

そう思っている間にも秘書の人がヤヤに近づく。

昌次郎「巫女よ、勘違いなさるな。 この身と心は
頼継様に捧げたもの、私怨など、とうに消え失せました」

八弥子「……人って、
そんなに柔軟に出来ているのかな?」

昌次郎「ならば、あの時の貴女には何が見えて
おりましたか? 命を受け、戦うが兵の役目――
それは今も同じこと」

八弥子「そんな簡単に割り切れないよ」

昌次郎「フッ……ならば、貴女はそう生きれば良い。
我らの同胞が恨みを叫ぼうとも、
頼継様の大義の前に詮無きこと」

「罪は背負うよ……それだけは覚えてて」

昌次郎「――安部一門が残党、
安部昌次郎がその言葉、確と受け取った。
冥府にいる者にも届きましょうぞ」

八弥子「……うん」

秘書が手袋を直し、正面に現れた穢れに向かっていく。

昌次郎「では――頼継様が為、今、再び道を開く!」

目を伏せているヤヤに私は歩み寄った。

鼎「ヤヤ……」

八弥子「大丈夫、言いたいことが言えて
すっきりしただけ!」

「カナカナ、ヤヤのカッコいいとこ、
まだ見せてあげるからね!」

いつものように元気よく言ったヤヤが武器を構え直す。

穢れはまだ溢れてくる。

理事長の秘書に続き、
ヤヤと奈岐の二人もすぐに戦闘へ移る。

ただ。

ただ、そんな二人を見つめる
理事長と末来さんの視線は冷静で。

どこか背筋が寒くなるほど冷たくて、
私はまばたきを繰り返す。

そうしている間にも、次の戦闘が始まっていた。”
脚本
⇒末来さんの決意を見た奈岐
⇒礎となるにも関わらず、先頭を走っている辺り、
末来さんの決意の固さが顕われている
演技
   
演出    
作画
   
補足
   





  10-1 10-2
状況
広間に到着。無数の穢れが蠢く。
左右から突き崩そうとするも、減らない穢れ。
奈岐に穢れが迫る瞬間、光の弾丸が穢れを打ち抜く。
由布、神住、恵、縁子、真琴が救援に現れる。
真実を語る末来。先に進むと、門が見える。
勾玉が反応し、白い穢れが姿を見せる。
勾玉に手をかける鼎、手を重ねる八弥子。
八弥子、自分が祓うと言う。応える鼎。
力の交信を行い、穢れに挑む八弥子
血の力を自らの意志で使う八弥子。
穢れを追い詰めた所で、末来が力を解き放つ。
門に触れ、瘴気が溢れ出す。
鼎、末来に手を伸ばす。頼継、それを止め、
注連縄の岩に勾玉を向けさせる。
鼎、岩に勾玉を押し当て、力を解放する。
門が炎に覆われ、末来は門の中に消えていく。
不思議な空間の中で、未来と再会する鼎。
いくつか言葉を交わした後、別れを告げる未来。
八弥子の胸で泣き崩れる鼎。頼継と話す奈岐。
鼎、未来と末来に、幸せになると約束する
時間

場所
祠・広間 ~ 祠・門前
〃 ~ 異空間
設定
・末来の魂は封印の礎となっていた
・末来一人の魂では不十分だった
・故に一対の巫女という因習が生まれた
・その命と力を贄と捧げ、封印を保つ
・そこから末来を解放したのが未来
・頼継が封印を試みたが失敗
・そして未来が礎となった
・未来と末来の望みは、因習を終わらせること
・門は異界へと繋がり、穢れを生み出し続ける
・瘴気が集まり、穢れを生成する
 
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
末来と未来の計画 変わる奈岐
天然な末来 守る為の力 

“石造りの門を超えると、広い空間に辿り着く。

そこには人の手で作られた大きな舞台が敷かれ、
周囲を星霊石と同じ気を感じる鉱石が取り巻いている。

ここが一対の巫女が儀式を行う場所……。

それを示すかのように、無数の穢れが舞台の上で
蠢き始めていた。

その穢れ達の奥に……何かまた門のようなものが見え、
禍々しいまでに、穢れと同じ気配を放っていた。

もしかして、あれが末来さんの言っていた封印……?

昌次郎「頼継様! ご指示を!」

頼継「僕達は左翼の穢れから突き崩す。
キミ達は好きにするといい。 ただ一つ」

頼継「ただ一つ、片倉末来、アレの前で会おう。
抜け駆けは――そうだな、次こそ許さないよ」

末来「分かっている。もう過ちは繰り返さない」

頼継「上等だ。行くよ、昌次郎」

理事長が指示を出し、すぐに左側から回り込み始める。

その行動を見て、ヤヤと奈岐は右側から回り込んでいく。

鼎「末来さん……?」

末来「――もうすぐ、もうすぐだからね、未来」

目を閉じ、末来さんは祈るように呟いていた。

戦闘を再開したヤヤと奈岐の二人だが、
先ほど以上の数に苦戦を強いられている。

それにこの穢れ達……倒しても数が減っていない。

奈岐「くそっ……やはりこの霊石では限界か」

八弥子「ナギっち、数多過ぎっ!」

ヤヤが鉄球を振るい、道を開くと、奈岐がその隙に走り込む。

だけど、減らない穢れ達がすぐに奈岐を取り囲もうとする。

氷の短刀を次々と投げつけ、穢れを祓うが……切りがなかった。

それどころか、あまりの数に奈岐が新しい短刀を
作り出す暇さえ与えてくれない。

鼎「奈岐っ! 後ろっ!」

奈岐「チッ……!」

溢れる穢れが奈岐の隙を狙うかのように跳躍する。

氷の短刀が形を成すまで、僅かな時間、
一秒に満たない空白。

間に合わない――そう思った時だった。

銃声と共に、光の弾丸が穢れの頭を撃ち抜く。

鼎「なっ!?」

振り返ると、ライフルを構えた由布が
次弾を装填していた。

由布「間に合ったっ……姉様、今です!」

神住「そのまま由布は射撃で援護を――
私達は向山先輩と禰津さんとともに!」

巫女姿の遠山先輩が鎌を振るい、
私達を横切っていく。

あまりのことに呆気に取られていると、
冷静な声が耳に飛び込んでくる。

縁子「……これは神住先輩の判断です。
くれぐれも勘違いはなさらないで下さい」

細剣を構えた三輪さんが私から視線を逸らすと、
遠山先輩の援護に回っていく。

この状況を知って……駆けつけてくれた?

昨日言ってた奈岐の説得って……まさか、これのこと?

恵「カナちゃん、あたしにもやれることはあるから。
みんなが安心して戦えるように守ってみせるよ」

鼎「恵も……」

恵が私の前に立つと、機雷や召喚兵を展開させ、
私達の守りを固めていく。

その合間を縫うようにして、由布が射撃を続けながら、
私達の前へ進んでいく。

そして、その隣には――。

「中村さん……!?」

真琴「利き手が使えなくとも、一対として支援は出来る。
高遠、こんなところで死なれては困るからな」

その手に大剣は無くとも、由布に力を貸せば、
巫女として戦える。

由布の放つ弾丸が蒼い炎を舞い上げ、炸裂していく。

由布「三輪さんじゃないけど、
これは姉様と学園長の判断だから」

鼎「……みんな厳しいなぁ」

由布が恵の召喚を銃座にすると、
中村さんの力を得た弾丸で、穢れを撃ち抜いていく。

由布「そうそう。あんた達が起こした騒動の分だけ、
たっぷりと課題用意してあるからって先生からの伝言」

鼎「あはは……覚悟しておくよ」

私の言葉にどこか満足げに笑みを浮かべた後、
由布は片目を閉じ、射撃に集中していく。

そんな時、どこか驚いたように
一同を見ていた末来さんの声が聞こえた。

末来「これだけの力が集中している今なら……
でも、もう違う方法は取れない」

鼎「末来さん……?」

末来「鼎、七年前の話を……いいや、もっと昔の話をしよう」

「ボクの魂は封印の礎として、この場に囚われていた」

鼎「…………」

末来「しかし、ボク一人では封印を保つことが不可能だった。
だからこそ、一対の巫女という因習が生まれたんだ」

「巫女の命と、その力を贄として――封印を保つ」

みんなが開いてくれる道を末来さんが歩き出していく。

末来「でも、そんな永遠にも似た時間に囚われたボクを……
未来がボクを解き放ち、封印そのものを揺るがした」

鼎「お母さんが……末来さんを……」

末来「そして、それは七年前の事件に繋がる――
理事長がボクの代わりに封印を試みて、失敗したんだ」

「その際、島に災いを呼び起こさないために
未来が新たな封印の礎となり、犠牲となった」

鼎「…………」

「……末来の魂はここに囚われている。
ボク達はそんな未来を救いに来たんだ」

末来さんはお母さんがこの島にいると言った。

嘘じゃない。お母さんはずっとこの島に囚われていた。

でも……それじゃあ、末来さんがやろうとしていることって。

鼎「それ、末来さんが身代わりになったとしたら……
過去を繰り返すだけじゃないですか」

末来「その為に鼎がいるんだよ」

鼎「私が……?」

末来「未来とボクの望みはこの島に続く因習を
終わらせること。封印を完全なものにするため、
鼎の力を貸して欲しい」

鼎「…………」

お母さんの望み……この儀式を無くしてしまうこと。

そして、それが末来さんの望みでもあり、
今、この瞬間まで二人して隠していたこと。

こんな土壇場で言うなんて……。

引き返せもしないような状況で言うなんて――
まったく、もう。

「末来さん、お母さんより空気読めないですよねっ……!
断れるわけないじゃないですかっ」

末来「ふふっ、あはははっ……!」

「それ、未来にもよく言われたよ」

末来さんが自身の星霊石に手をかける。

前方に大きな門がはっきりと見え始めた。

鼎「あれは……」

末来「この島が封印し続けて来た門――
異界へ繋がり、穢れを生み出し続ける」

門に反応しているかのように、勾玉が熱を放つ。

「来るよ、鼎……八弥子と一対の力を使うんだ」

「封印のため、未来の魂を解き放ってあげるんだ」

鼎「…………!」

勾玉が一際強く熱を放った時、門から溢れ出す瘴気が
穢れの形を作り出していく。

そこに現れたのは今までと異なる大きな穢れ――。

白い彫像のような身体に、人の顔を……。

お母さんと同じ顔をしていた。

その穢れが形を成した時、勾玉が強く熱を放った。

鼎「そっか、勾玉の力に反応していたのは……」

お母さんの魂があの門に囚われ、
今は穢れとして現れている。

だから、お母さんがくれた勾玉が
反応してしまったんだ。

自身の魂と呼応するようにして、封印を揺るがしてしまった。

鼎「お母さん……こんなとこにいたんだね」

勾玉を手に取ると、その熱を今は解き放っていく。

「娘をほったらかしで何してるんだか……」

「色々言いたいことがあるから――今、助けてあげる」

そして、舞い上がる火の粉を集中させた。

「ヤヤ、お願いっ!」

八弥子「話聞こえてたっ……カナ、ホントにいいの!?」

鼎「いいも悪いも無いよ。この島を何とかしてって
お母さん達から無理やりバトンを渡されたんだから」

「やるしかない」

充分な熱をはらんだ勾玉の力を解き放とうとした時――。

ヤヤの手が勾玉に触れていた。

「ヤヤ……?」

今……触れられたら、私は戦えない。

八弥子「ふふっ、お母さんを今から殴りつけるって顔してないぞ?」

鼎「…………」

八弥子「祓うのはヤヤに任せて。カナはヤヤに力を」

ポンッと私の頭を叩いた後、ヤヤが力強く微笑む。

ちゃんと、こういう時に先輩らしくして……。

その笑顔に励まされ、目頭が熱くなってしまう。

鼎「……ヤヤはホントに頼りになるんだから」

「お願い」

八弥子「ふふっ、任せてよ!」

得意げに笑ったヤヤが得物を手にして、
白い穢れと向かい合う。

他のみんなも状況を察してくれたのか、
他の穢れを寄せ付けまいとヤヤの援護に回ってくれる。

「カナが教えてくれたヤヤ自身で――ありのままでヤヤで、
この血を否定しないで、戦ってみせるっ」

石畳の上をヤヤが駆け抜け、お母さんの穢れへと挑む。

そんなヤヤに全てを託すため、私は力を解き放つ。

これが一対としての――最後の戦いにする!”
守る為の力

“白い穢れがヤヤの鉄球を受け、大きく揺らぐ。

それでもすぐに体勢を立て直し、
金属の棘を左右から展開させていく。

どれだけの攻撃を受けても怯まない。

お母さんらしいけど、よくないところで性格が出ている。

八弥子「はぁっ、はぁっ……さすがに強いね」

「――それならっ!」

片手で拳を作り、ヤヤが額の汗を拭う。

八弥子「ヤヤの意志で……この血の、
この力を使ってみせるよ!」

瘴気すら舞い上げながら、
ヤヤの力が急激に膨らんでいく。

ヤヤの意志で血の力を引き出していた。

そして、禍々しさすら感じる嵐がヤヤを取り巻く。

切り裂くような風を受け、
ヤヤの武器が縦横無尽に振り回される。

八弥子「この血が抑え込めないなら、
好きなだけ暴れさせるっ!」

「それがヤヤの意志で――
ヤヤの守りたいものの為ならっ!」

ガンッ――と金属音を立て、鉄球が穢れの
身体に打ち込まれると、その勢いのまま、
背後の扉に叩き付けられる。

すぐに鉄球が引き戻され、再び風の勢いを受けていく。

八弥子「もっと! もっとだーーッ!」

幾度も大きく円を描きながら、
ヤヤの鉄球が穢れに打ち込まれていく。

攻撃を受け続けた穢れがまるで溶けるようにして、
扉の岩肌に還っていった。

倒した……?

でも、まだ穢れの気配は消えていない?

「やった……?」

末来「充分だよ、八弥子、鼎――
ここからはボクの役目だ」

星霊石を輝かせながら、末来さんが扉へ向かっていく。

胸元の星霊石を煌めかせ、眩い光が溢れ出す。

光が周囲の瘴気を祓い、末来さんの姿を変えていく。

「未来、待たせたね。これで封印を完成させられる」

眩い巫女服を纏った末来さんが告げ、
手に宿った剣を捨てる。

そして、その手で扉の表面に触れた。

すると、末来さんの周りを取り囲むように
瘴気が溢れ出す。

鼎「末来さんっ!?」

末来「来ちゃダメだ、鼎っ! 鼎は最後に――」

頼継「そう、最後にキミが仕上げをするんだ」

末来さんに向けた私の腕を、
理事長の白い手が掴んでいた。

そして、私の勾玉を
注連縄の巻かれた近くの岩へ向ける。

最後の――仕上げ。

末来「頼継……ここまでしてくれて礼を言うよ」

頼継「それが……望みなんだろう?」

理事長が目を伏せながら、私の背を叩いた。

「高遠鼎、勾玉の力をあの岩にぶつけるんだ」

理事長に頷き、私は岩に勾玉を近づける。

鼎「お母さん……末来さん……
その願い、叶えるからね」

これが最後の仕上げ。

お母さんと末来さんを一対として――
封印を完全なものとする。

そのために残されたのは、私という力。

勾玉を岩に押し当てると、
私は全ての熱を解き放っていく。

瘴気すら焼き払う激しい炎が門を覆う。

末来「ありがとう、鼎」

「未来、ボク達の望みを――」

そして、末来さんが門の中へ
溶けるようにして消え――。

炎が弾け、門がゆっくりと閉ざされていく。

これが封印。

周囲を取り巻いていた穢れ達が一斉に崩れ落ち、
眩い光を放っていく。

その光に目が眩み、私は反射的に目を閉じた。

そして、溢れかえる光に全身が呑み込まれていく。

身体の感覚が無くなっていた。

最初は死んでしまったのかと思った。

でも、こうして考えることが出来ている。

じゃあ、まだ生きている?

その時、瞼の裏に眩い光を感じた。

どこか懐かしく、温かい光に私は無意識に手を伸ばす。

鼎「……おかあ、さん……?」

未来「――よく頑張ったね、鼎」

目を開くと、そこは見たことも無いような空間だった。

色とりどりの光が煌めきながら流れていく。

鼎「……お母さん?」

手を伸ばした先には、求め続けたお母さんの姿がある。

ただ、身体の感覚が曖昧で、
どうしてもそこまで届かない。

未来「久しぶり――なんて言ったら、怒られるかな?」

鼎「それは……怒るよ」

未来「あはは、大きくなって、立派に育ってくれたね」

「まるで自分の若い頃を見ているようだよ」

鼎「……私はお母さんほどズルしてない」

「最後の最後で、こんなことするなんて」

拗ねたように言いながら、
何とか身体を動かそうとする。

でも、僅かに指先が動いただけで、
お母さんに届かない。

未来「それは末来の奴が悪い。
もうちょっと空気を読めないとなぁ」

鼎「人のせいにしないの」

未来「あっはははっ、鼎に怒られた」

「そっか、そか、娘に怒られるぐらい
時間が経ったんだねぇ」

鼎「七年だよ、七年ぶりなんだよ、お母さん」

指先の感覚がよく分からず、やっぱり手が動かない。

私は痺れを切らして、お母さんに声をかける。

「お母さん……そっちに行きたい」

未来「鼎、今は魂が触れ合っている
奇跡みたいな状態なんだ」

「だから、言葉を伝えられるだけでも感謝してるんだよ」

鼎「お母さん、私は……そっちに……行きたいっ!」

声が震え、堪えても涙がこみ上げてくる。

未来「鼎は……お母さんの望みを叶えてくれたね」

鼎「お母さん……っ!」

微笑むお母さんの姿が
所々薄くなっていることに気付く。

それが光の波にさらわれそうに思えて、
私は何度も手を伸ばそうとする。

未来「鼎には……いいお母さんじゃなかったかもね。
でも、会いに来てくれて……嬉しかったよ」

「ありがとう、鼎」

鼎「お母さん……」

だだをこねるような私にお母さんは微笑むだけだった。

未来「もう時間かな。
末来の分までお別れしたかったんだけどなぁ」

鼎「…………」

未来「鼎、お母さんがいなくなったら、
我慢せずに泣くんだよ」

「鼎には頼りになるお姉さんがいるんだろう?」

鼎「……うん、分かってる」

お母さんの瞳に私が映り込む。

その優しげな眼差しが瞼に覆われると、
最後にお母さんが微笑んだ。

未来「――ばいばい、鼎」

鼎「さよなら、お母さん」

光の波が押し寄せ、視界が眩く弾け飛ぶ。

同時にお母さんを紡いでいた像が、
無数の光に流されていく。

そして、眩い世界が閉じていった。

誰かが呼ぶ声が聞こえる。

優しく肩を揺すられると、
意識がゆっくり持ち上がっていった。

鼎「…………あれ、私?」

岩に勾玉を押しつけたまま、
私は意識を失ってた……?

隣にいるヤヤがそんな私を支えるようにして、
抱きとめてくれていた。

八弥子「カナ、気がついた?」

鼎「ヤヤ……?」

八弥子「ほら、見て、ちゃんと門は閉じたよ。
ミライっちとカナのお母さんの願い通りね」

見上げると、門はしっかり閉じられていた。

これがお母さんと末来さんの望んだ結果――。

終わった。

途端に身体から力が抜け、頬に涙が伝っていた。

緊張から解放された……?

違う、いっぱい泣くようにとお母さんに言われたから。

鼎「ヤヤ、しばらく泣いててもいい?」

抱きとめてくれているヤヤに身を預けたまま、
その肩に顔を埋めた。

八弥子「うん、いいよー。ぎゅーっとしててあげる」

鼎「ありがと……」

ヤヤが私の頭を抱いてくれると、
自然と嗚咽が漏れ出す。

気付くと大声をあげて泣いていた。

戦いが終わり、落ち着いていたみんなも
私の様子に驚いて、まばたきを繰り返す。

遠山先輩が気遣ってくれたのか、私とヤヤだけを残し、
舞台の方へみんなを誘導していった。

そんなところへ学園長と葉子先生の二人が姿を見せ、
巫女候補達と無事に落ち合う。

ただその中に理事長達と奈岐の姿だけが無かった。

頼継「――おっと、まさか先回りされるなんてね。
これは驚いた」

奈岐「どこへ行くつもりだ、と言いたいところだが……
その答えは必要無い。どこへでも行けばいい」

頼継「そうさせてもらうさ、それでキミは何を聞きたい?」

奈岐「……高遠未来の件、お前は満足なのか?」

頼継「満足だよ、言葉を一つでも交わせた」

「あれは間違いなく姉さんの声だった……満足だ」

奈岐「そうか。鼎にその事を言わなくていいのか?」

頼継「必要無い情報さ。何なら、
キミが教えてやればいい」

奈岐「必要の無い情報だな――
通してやる。どこへでも消えろ」

頼継「協力感謝する! では、さらばだ、僕と同じ鬼よ!」

奈岐「うるさい、さっさと行け」

頼継「あっははは! さあ、昌次郎、どこから行こうか!
世界は広いぞー! 僕はアメリカに行きたい!」

昌次郎「フッ……頼継様がお望みであれば、
この安部昌次郎、どこへでもお供いたしましょう」

奈岐「まったく……騒々しい奴らだ」

八弥子「カナ、そのままでいいから聞いてね」

鼎「ヤヤ……?」

腕の中で私はヤヤの名前を呼ぶ。

八弥子「ヤヤね、初めて自分のことが怖くなかった。
やっと……認めてあげられた気がしたんだ」

「カナが背中を押してくれたからだよ」

ヤヤの優しい声に私は頭を振るう。

鼎「ううん……最後の最後で踏み出すのは
自分の意志だよ」

「私が背中を押したとしても、
踏み出せたのはヤヤの強さがあったからだよ」

八弥子「カナ……」

鼎「だから、胸を張って――胸」

八弥子「カナカナ、何でそこで止まるの」

鼎「だって、こうしてると……
ヤヤのおっぱい、ほっぺに当たっててさ……」

私の言葉を聞いたヤヤが声を上げて笑い出す。

八弥子「あははっ、今日は特別だー!
カナカナ、揉んでもいいよー」

鼎「ヤヤにぎゅってっしてもらいながら、いただきますっ」

ヤヤに抱きつきながら、
今という幸せを噛み締めていく。

何もかもがお母さん達の計算通りだったのかも
しれないけど、その御陰で……私もヤヤ達も救われた。

それだけじゃない。

この織戸伏に続いていた因習が終わったんだ。

もう巫女という贄の存在は必要無くなった。

これから……島も、私達も在り方を変えていくだろう。

ヤヤと抱き合いながら、
最後の巫女となったお母さん末来さんに私は約束する。

お母さん、末来さん――
私、ちゃんと幸せになるからね。”
脚本
   
演技
   
演出    
作画
   
補足
 





  後日談
状況
 
時間
三十七日 + 二週間と少し
場所
寮・八弥子の部屋
設定
 
伏線(大)
 
伏線(小)  
テキスト
“あれから二週間と少し――。

巫女を選定する必要は無くなってしまったけれど、御花会は存続し、祭りは行われることになったらしい。

ただ、それはもう誰か犠牲にしたりするようなものではない。

神楽を披露したりと……よくある祭りに落ち着く方向で今は話が進んでいる。

松籟会も人員を整備され、新たに学園長が陣頭指揮に当たることで同じ過ちを繰り返さないように――
島は大きな変化を迎えようとしていた。

そんな最中だけど、私はそれどころではなくて……。

八弥子「カナカナー、勉強もう飽きたよーっ!」

鼎「わわっ、ヤヤっ!? 急に抱きつかないっ!」

今はヤヤの部屋で一緒に猛勉強中……だった。

この瞬間までは!

目下の敵は明日に迫った期末テストだというのに……!

八弥子「だって、つい先週までヨーコ先生の課題漬けだったんだもん!」

鼎「でも、私、中間テスト散々だったしっ!」

八弥子「んー、それはカナカナが悪い」

さらっと流すように言われてしまった。

鼎「うぅ、過去の自分にそう言いたいよ……」

ため息をつきながら、試験勉強中のノートに目を落とす。

相変わらず……勉強の範囲は進んでいる。

離島、恐るべし。

鼎「あ、そういえばさ」

ペンを止めて、ふと思い浮かぶ疑問を口にする。

「ヤヤの血の力って星霊石の影響を受けてるんだよね?」

「あの変な門も閉じたし、巫女の力も必要無くなったし、
これから失われていくのかなぁ?」

八弥子「ん? 抑え込んでただけで、そうでもないよ?」

鼎「……あれ、そうなの?」

意外な答えの後、ヤヤの抱きつく力が少し強まった気がした。

八弥子「最近、戦闘以外でもいける気がしてきたんだ」

鼎「……なんか嫌な予感がする、それ」

八弥子「いつもカナカナには強引に攻められてるからねー、そろそろ」

鼎「ヤヤ……? えっと、八弥子さん?」

嫌な予感が現実になりそうな気がしたので、
腕の中から抜け出そうとするが……。

ろ、ロックされてて……抜け出せないっ……!

八弥子「カナカナ、ちょーっと凶暴になったヤヤを見てみない?」

鼎「…………八弥子さん?」

八弥子「ふふっ、それはイエスってことでいいんだねー」

鼎「わわっ、ちょっと、ヤヤ! 明日から試験――んんんっ!?」”
脚本
 
演技
 
演出  
作画
 
補足
 










頼継の喩え話 ⇒ 前振り (頼継が鼎に、最後に牙を見せるという)


(奈岐編)未来が生き残った際は、広間からの脱出にいくつか方法が考えられる。
一つは、門の周辺の岩を、超高熱で溶かした。
二つ目は、複数の星霊石の併せ技でなんとかしたか。
属性の組合せ次第では、様々な力になるだろう。
あまり深くは追求しない事にする。未来は規格外の力を持っていると思う為。


巫女の真実について、贄と礎の事だけは門を前にして鼎は知った。
しかし、穢れとなって殺され続けていた事にまでは至らなかった。
末来がそれを伝えなかったのは、奈岐編と同じく、知らないままでいて欲しかったからだろう。
自分も母親であるという事も、そこに含まれる。


頼継が鼎を犠牲に未来を助けようとしなかったのは、
鼎が複数の星霊石を扱えるようにならなかった事も関係しているのだろうか。
封印の綻び、鼎の成長、奈岐の霊石。頼継の心境の変化(?)。
⇒末来編で判るが、封印の綻びが主な理由


禰津という名字は、猫に噛まれている事から来ている……?


昌次郎の言う“恩義”とは何か?


末来「これだけの力が集中している今なら……でも、もう違う方法は取れない」
⇒封印を、礎無しで行う可能性について

末来無しで封印する場合は、以下の三つが考えられる
 A 未来解放(肉体あり)
 B 未来解放(肉体無しで、魂のみ)
 C 未来の魂は門の向こうへ


(末来・未来が共に現世に留まる可能性については、
星霊石の枷を外し、鼎が力を束ね、
封印の綻びを未来が抑え、修験者の力を結集させれば、可能かも知れない。)



  ————- ————-
状況
 
時間
   
場所
   
設定
   
伏線(大)
   
伏線(小)    
テキスト
   
脚本
   
演技
   
演出    
作画
   
補足
   








Copyright c 星彩のレゾナンス ファンサイト All Rights Reserved.