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奈岐編 注釈八

8-1
状況
鼎、奈岐に助けられる。奈岐の秘密の場所(ため池)で服と身体を洗う。想いと肌を重ねる二人
時間
三十六日目・夜
場所
浜辺 ~ 森 ~ ため池
設定
伏線(大)
伏線(小)
テキスト
T24-9, 変わる奈岐 / T25-4, 変わる鼎
T20-23, 奈岐への想い / T21-18, 鼎への想い

T23-6, 奈岐への信頼 / T27-1 鼎への信頼
T16-3, 鼎のそういった知識

“同じく海水を滴らせる奈岐の表情は――とても不機嫌。

無理やり、勾玉は取り返したようなものだったし、一緒に海へ落ちるなんて真似までさせてしまった。

鼎「えーと……奈岐?」

奈岐「……すごく不機嫌だ」

表情を見て分からないのかと奈岐が頬を少し膨らませる。

私は手の中に戻ってきてくれた勾玉を再確認してから、波打ち際で佇む奈岐の手を取った。

鼎「奈岐、助けてくれてありがとう」

奈岐「そうさせたのは……鼎自身だ。あんなやり方は卑怯だ」

鼎「あはは……ても、ああでもしないと勾玉を無くしちゃうし、奈岐との関係もこじれちゃう」

眉間に寄せた奈岐が長い息を吐き出す。

奈岐「はぁ……海に落ちた時、頭を打ったのかもしれないな」

鼎「えっ……?」

そういう意味じゃないと奈岐は首を少しだけ振るう。

奈岐「鼎に勾玉は返す。盗んだことも謝る」

淡々と言い放った後、奈岐の瞳が私を見上げる。

「それから……鼎のことを信じてみようと思った。」

鼎「奈岐……?」

まばたきをする私を奈岐の双眸が見つめていた。

私のことを信じてみる……それって……。

奈岐「鼎は、あんな無茶をするぐらい奈岐を信じてくれていた」

「崖の上から生身で飛ぶなんて、悪い夢を見ているみたいだ……。 でも、現実だ。鼎は奈岐を信じて崖から飛んだ」

勾玉を奈岐が投げ捨てた時、私は迷わずに飛び降りることを選んでいた。

私を守ると言った奈岐の言葉が絶対だと信じられたから、迷うことなんて無かったんだと思う。

奈岐「鼎が信じてくれている分だけ……奈岐も同じぐらい鼎を信じないと釣り合わない」

鼎「奈岐……」

少し冷たい奈岐の手が私の手を握りかえしてくれた。

奈岐「ただ一つだけ――鼎が巫女になるなら、奈岐も巫女になる」

「鼎の一か八かに、奈岐も賭けてみる。鼎と一緒に行く」

そう告げてくれた奈岐の瞳は決意に満ちたものだったけれど、何故かすぐに視線をそらしてしまう。

鼎「奈岐……?」

奈岐「鼎は……今回みたいに、またとんでもない無茶をしでかすかもしれないし……一緒にいないと不安になる」

照れながらもはっきりと言葉にしてくれた奈岐に、私は微笑む。

鼎「奈岐……ありがと」

そして、繋いだ手を離す代わりに、水浸しの身体を抱きしめる。

奈岐「……やっぱり奈岐は頭を打ったのかもしれない」

鼎「ふふっ。それっと、すごく都合のいい場所を打ってくれたね」

奈岐「まったくだ」

苦笑しつつ答えた奈岐が私の背中に手を回す。

寄りかかるように密着して、互いの距離をゼロに近づける。

鼎「ずぶ濡れでこうするのって何だか変な感じ」

奈岐「でも、嫌じゃない」

鼎「あ、素直だ」

奈岐「だって……」

口籠った奈岐が私の腕の中でもぞもぞと動く。

鼎「だって?」

奈岐「服が濡れているから……いつもより鼎の体温を感じるし」

鼎「そうだね、私も奈岐がよく分かる」

触れ合った部分が温かくて心地良い。

体温が奈岐の存在を身体に教えてくれているようにも思えて、もっと触れていたくなる

繰り返される潮騒を耳にしながら、奈岐の後ろ髪を撫でていく。

鼎「あ、あれ……? ふ、ふわふわが無くなってるっ……」

奈岐「だって、ずぶ濡れだし……奈岐は髪の量が多いから……」

鼎「あはは、早く帰って洗った方がよさそうだね」

そう言って離れようとした時、奈岐の腕が一際強く私を抱いた。

奈岐「もう一回だけ……こうしてていい?」

消え入りそうな小声だったけれど、ちゃんと聞こえたから、私は頷いておく。

それから、もう一度、奈岐の体温を求めるように身体を寄せ合い、少し強いぐらいに抱きしめる。

「鼎……海水を流すだけなら、いい場所があるから」

鼎「いい場所?」

奈岐「うん、いい場所――奈岐のとっておき」

私に身を預けながら、奈岐は心地良さそうに言っていた。

「鼎、こっち。行こう」

身体が離れ、その代わりに再び手と手が繋がる。

そして、奈岐に誘われながら、私は浜辺を歩き始めた。

ぽたぽたと海水を滴らせながら、二人して森を進む。

いつもとは違った方角へ向かい、幾重にも重なった茂みを掻き分けていく。

そうして、ひときわ開けた場所に出ると、眩い光が私の目に飛び込んでくる。

その光が水面に反射した月明かりだと気付く。

ため池? それとも自然に出来たものだろうか?

鼎「すごい……綺麗」

夏を間近に控え、鬱蒼とした生い茂る草木を抜けた先には、水底が見えるほど澄んだ池があった。

奈岐「――奈岐のとっておきだ。 ここを知っているのは奈岐と鼎だけになる」

鼎「こんなに綺麗な場所なのに?」

奈岐「島の北側は禁足地に近い。 島で寄りつく者なんていない」

そんな北側を私と奈岐は毎晩のように出歩いていたわけだけど。

奈岐はフッと笑ってから屈むと、池の水面に手を伸ばす。

奈岐「冷たくて気持ちがいい。べたべたした海水も洗い流せる」

鼎「ホント?」

奈岐の声に誘われて私も水面に触れる。

指先が冷たさに少し驚くけれど、それ以上の心地良さがあった。

この感じ、まるで誰かさんとそっくりだ。

奈岐「……何の話だ」

鼎「あはは……」

覗かれていたのか半目で睨まれてしまう。

私は立ち上がりつつ笑顔で誤魔化しておく。

「じゃあ奈岐が先に水浴びして。その間に服を洗っておく」

奈岐「でも……」

鼎「ほら、海に落っこちたのは私のせいだし」

奈岐「いら、そうじゃなくて……その……」

頬を赤く染めた奈岐が私から顔を背ける。

奈岐「恥ずかしいから……あまり見ないでほしい」

鼎「あ、そういうことか。 うん、分かった」

そういえば、同じ部屋になってからも着替えは別だったような。

奈岐が恥ずかしがり屋なのはよく知っているし。

奈岐「じゃあ……」

と、木陰の向こうに行ってしまう。

ここからでは、茂みやら奈岐の身長の関係もあってか、僅かに揺れる髪の毛が見える程度だった。

そうして少し経った後、木の枝に奈岐の制服がかけられる。

鼎「制服、一緒に洗っておくね」

奈岐「……頼んだ」

奈岐の制服を手に取る前に自分の服も脱いでおく。

海水をたっぷりと吸ったパーカーやキャミを見ると、嫌でもこの島に来た直後のことを思い出す。

もうあれから一ヶ月と少し――。

長いようで短くて、一日一日がとても貴重な日々だった。

気が抜けないとも言うけれど、と内心で苦笑しつつ、ズボンに手をかける。

パシャッ――と小さな水音が聞こえ、奈岐が池に入っていく。

あまり見ないように言われたので、視線を明後日に向けながら、私は二人分の服を池に浸して海水を洗い落とす。

服を絞って水気を切り、近くの枝にかける。

しわになるだろうけど、ずぶ濡れで帰るよりはマシだろう。

さて。

さて、暇になった。

鼎「…………」

下着も洗ったので、全裸で佇んでいると、色んな意味で開放的な気持ちになれる。

あと何だか虚しい。

「んー。あまり、あまり見ない――か」

だから魔が差したのだと、そういうことにしておこう。

私は水面に足をそっと伸ばし、木の陰の向こうを覗く。

足場から広がっていく波紋が、もう一つの波に重なる。

その小さな波に気付いたのか――。

月明かりを受け、銀色に視える髪から雫が散った。

広がっては重なる水面の波紋、その先に私の知らない奈岐がいる。

季節外れの雪を彷彿させる白い肌が外気にさらされ、髪色もあいまってか、幻想的な光景を醸し出す。

おとぎの国で妖精でも見ているような気持ちになる。

奈岐「…………」

息を呑む音の後、僅かに驚いたような瞳が私を捉えた。

鼎「…………」

もし奈岐に見つかったら、笑って誤魔化したり、冗談を言うつもりだったけど、どうしてか言葉が出てこない。

ああ、そっか……私も奈岐の姿に息を呑んでいたんだ。

だから何も言えなくて。

奈岐「鼎……?」

奈岐が不思議そうに私の名前を読んでいた。

声を聞いてから数回まばたき――ようやく唇が動いてくれる。

鼎「えっと……つい」

ようやく口から出たのは正直な言葉だった。

こうして見られている以上、何を言ってもバレてしまうけど。

奈岐「……あまり見ない約束」

鼎「えーっと……」

半目で言われてしまい、慌てて視線を上へ向ける。

広がる夜空に瞬く星々も綺麗だけど、やっぱり私の視線は――。

奈岐「…………」

素直にも奈岐へと戻ってきてしまう。

鼎「あはは……」

奈岐「はぁ……鼎、奈岐はこの肌が嫌いなんだ。 だから人に見られたくない」

鼎「白くて綺麗なのに?」

そんな会話を以前にもしたような気がする。

あの時は確か――髪のこと。

髪も肌も嫌い。それはきっと間違いなく、鬼子に繋がる。

奈岐「こんな外見でなければ……人に肌を見られると、いつも思う」

鼎「でも、私は綺麗だって思ったよ」

奈岐「……それは鼎が島の外から来た人間だから。 この島にいる人間は鬼子の姿を恐れる」

「見鬼のことを知らなくても、みんな鬼が怖いんだ」

自分達と異なる外見、優れた知性、鬼という文字――植え付けられてきた先入観が恐怖を招く。

だけど、それは逆にも言えること。

みんなと異なる外見に生まれ、鬼と呼ばれ、一線を画される。

そして、本人には周囲の悪意が見えてしまう。

だからこそ、誰とも触れ合わず、逃げ隠れ、自身の心を守る。

そうして生きてきた奈岐と出会い、私は彼女から孤独を奪った。

それは――これからも続いていく。

鼎「ね、あまり見ないから、もっとそっちに行ってもいい?」

奈岐「……何か企んでいないか?」

鼎「何も何も」

笑顔で答えながら、頭の中で水浴びのイメージだけを紡ぐ。

こうすれば、きっと何も分からないはず。

奈岐「やれやれ……鼎も慣れてきたな」

呆れたように言うけれど、奈岐の声色はどこか嬉しそうで。

鼎「ふふんっ、こういう時のため、普段から努力してました」

私のどうでもいいような自慢にも微笑んでくれる。

でも、恥ずかしさは消えないからか、奈岐は背中を向けたまま。

鼎「わ……奈岐、真っ赤だ」

浅い水底を歩き、奈岐の側にやってくると、その肌色のせいか、分かりやすいぐらいに照れている。

奈岐「そんなこと、わざわざ言わなくていい……」

鼎「今、奈岐に触れたらダメ?」

奈岐「……そ、それは……その……」

さらに赤くなった奈岐が視線を彷徨わせた。

照れてしまって、私の魂胆を覗かなかったのは――奈岐の失敗かな、と内心でほくそ笑む。

奈岐「ちょっ……か、鼎っ……!」

返事を待たずに背中から彼女を抱きしめる。

でも、その意図はいつもと少しだけ違う。

鼎「もっと触れるね」

奈岐「っ…………」

緊張気味の吐息を肯定と考えて、奈岐の肌に手を這わす。

鼎「こういのうのはダメ?」

背中から抱きしめて、目を使えないようにして、ずるい聞き方をしていると思う。

奈岐「っ…………」

緊張気味の吐息を肯定と考えて、奈岐の肌に手を這わす。

鼎「こういうのはダメ?」

背中から抱きしめて、目を使えないようにして、ずるい聞き方をしていると思う。

でも、気持ちがそこまで奈岐を求めていたから止められない。

奈岐「……ダメ……じゃない……」

か細い声を聞いて、頬を擦り合わせて頷く。

鼎「うん、ありがとう。大好きだよ、奈岐」

気持ちを伝えながら、彼女に触れた手をゆっくりと動かす。

そうして指先を敏感な箇所へ滑らせていく。

奈岐「っ……」

そっと手の平で押し潰すようにして乳房に触れてみる。

身体と同じく愛らしいサイズに落ち着いていながらも、弾力のある感触を確かめていく。

これが奈岐の胸なんだ、と手の平の感覚から感じ取れる。

「鼎……こ、こういうこと……したことあるの?」

鼎「ん、初めて」

嘘を言っても仕方ないのでさらりと答えておく。

「だから痛かったりしたら言ってね」

奈岐「……うん」

奈岐の返事を聞いてから、指先に少し力を込める。

少しずつ中心の突起に刺激を加えていく。

すると、奈岐の身体が小刻みに振え、敏感に反応を示す。

奈岐「んっ……鼎……それ……」

鼎「平気?」

奈岐「う、うん……でも……そうされると変な感じ……」

きっと正しい反応と認識して行為を続ける。

「はぁっ……んっ……んんっ……」

奈岐が吐息を漏らすたびに、体温がさらに上がっていく。

こうして後ろから触っていると、まるで自分でしているようにも思えるけど、伝わる感覚も違えば、湧き立つ感情も違う。

愛おしい気持ちが溢れて、もっと彼女に触れたいと身体が求める。

「んっ……ぁ……かな、え……はぁ……んんっ」

胸に這わせた手と反対の指先が奈岐の下腹部へ伝っていく。

ぴくんっと驚いたように太ももが震えた時、水面に大きな波紋が広がった。

鼎「ここも平気?」

奈岐「……平気……だけど……んっ……」

鼎「だけど?」

奈岐「は、恥ずかしい……」

鼎「ぴくってしたこと? それとも触られること?」

奈岐「両方に……決まってる……い、意地悪っ……!」

鼎「ふふんっ」

さらに熱くなった奈岐の身体が気持ちを昂らせる。

もっと声を聞きたくて、もっと身体を熱くさせたくて、両手を細やかに動かしていく。

奈岐「っ……ぁ……んっ……」

震える吐息を耳元で感じながら、くすぐるように乳房を撫でる。

そして、つんっと固くなった先端を優しく摘む。

奈岐「あっ……んんっ……鼎……そ、それ……」

鼎「ん? それ?」

奈岐「うぅ……また意地悪しようとしている……」

覗かれなくても、さすがにバレてしまった。

鼎「じゃあ、こっちで意地悪してみる」

乳首を軽く摘みながら、指先で転がす。

奈岐「んっ……んんっ……はぁっ……変な感じ……」

「はぁっ……身体が熱くなるの……止まらない……」

奈岐が太ももを擦り合わせると、また水面が揺れた。

そんな仕草が艶めかしく思えて、彼女にもっとを求める。

奈岐「ひっ……あっ……んんっ、そこ……だ、ダメ……」

下腹部を撫でていた手をさらに下へ。

僅かなスリットを指先でなぞっていく。

縦筋に沿って上下にゆっくりと動きを繰り返す。

奈岐「はぁ……ぁ……ダメ……って言ってる……のに……」

鼎「信じてくれてるのが嬉しくて止められないかな」

奈岐「そういう……言い方、ずるい……んっ……あっ……」

「柔らかい秘所の感触を確かめるように、ふにふにと指を押し込む。」

自分のと同じところでも、どこか違う感覚が不思議だった。

まるで、そこに初めて触れているような感じがする。

それもそうかもしれない――性格や身体の仕組みが同じでも、私と奈岐は違う人間なのだから。

大切に思う人に触れること、その意味が胸を高鳴らせていく。

鼎「奈岐のこと、もっと知りたい」

触れれば触れるほど、奈岐との違いを埋めたい気持ちが強くなる。

もっと一緒になりたいという思いが身体を突き動かす。

奈岐「んっ……っく……はぁっ、ぁぁっ……そこ、ダメってば」

そう言われても、彼女への愛撫は止まりそうにない。

割れ目を擦ると、指先に湿り気が絡みついてくる。

くちゅっと水音が聞こえ、それが奈岐の愛液だと分かると、感じてくれているという嬉しさがこみ上げてきた。

奈岐「ひぁっ……あぅっ……は、恥ずかし、い……んあっ……!」

いやいやとするように奈岐が頭を僅かに振るう。

鼎「んっ、奈岐、くすぐったいよ」

奈岐「だ、だって……あっ……んあっ、そこ……んうぅ……」

奈岐が頭を揺すると、長い髪が身体を撫でるので、こっちの身体まで熱くなりそう。

鼎「でも、こんなにしてくれて……嬉しい」

指に絡んだ愛液の分だけ私を受け入れてくれている。

そのことが堪らなく思えて、粘液を絡ませた指先で、秘裂にある小さな突起を軽くなぞった。

奈岐「ひあっ!? あっ……くっ……ううぅっ……んっ……!」

敏感なところだから、一際甲高い声が耳元で響く。

太ももをわななかせ、崩れそうになる奈岐の身体を支えながら、そのまま刺激を続けてみる。

奈岐「はぁっ、あっ、んっ……んうぅっ……!」

何か言いたそうに奈岐が頭を振るうけれど、言葉にならず、熱い吐息と声を漏らすだけだった。

奈岐の身体が跳ねるたび、水面の波紋が大きくなっていき、小さな波を立てる。

鼎「奈岐、ここも熱くなってる」

そう囁きながら、たっぷりと愛液を絡ませた指先で、さっきよりも膨らんだ敏感な突起をなぞった。

奈岐「っあ……あっ! はぁっ……あっ……だ、ダメ……!」

「鼎……もう、立って……られなっ……ひぁっ……あっ!」

嬌声と共に崩れ落ちるようにして、奈岐が私に体重を預ける。

見た目以上に軽い彼女の身体を抱きとめながら、私はゆっくりと愛撫を継続していく。

奈岐「はぁっ、あっ、あんっ……これ以上は……ダメ……」

鼎「もう少しだけ。奈岐の可愛い声、もっと聞かせて」

奈岐「んぅ……ぁ……む、無理……そんな……意地悪……」

鼎「ふふっ、可愛い」

ちゅっとついばむようにして、火照った頬に口づけた。

そんな行為だけでも、今の奈岐には鋭い刺激になるのか、力が抜けたように膝が折れそうになる。

「わわっと――もう立ってられないね」

奈岐「んっ……だ、だって……鼎が……いっぱい触るから……」

鼎「でも、まだ触り足りないよ?」

奈岐「ううぅ……か、鼎って……すごく意地悪……」

鼎「じゃあ、奈岐はすごくエッチな感じ?」

と、ホントに意地悪を言いつつ、突起を軽く摘んだ。

奈岐「んっ、あああっ!? や、んんっ、だ、ダメ……か、鼎っ」

鼎「えっ? わ、わわっ!?」

唐突にカクッと腰が折れて奈岐の身体が崩れ落ちる。

慌てて私はそれを抱きとめるけど――。

バシャンッ――と水しぶきをあげて、尻餅をついてしまう。

鼎「いたた……奈岐、大丈夫?」

奈岐「はぁっ、はぁっ……うぅ……大丈夫じゃ……ない……」

「だって、急に……する、から……はぁ……はぁ……」

鼎「それって……急にしなかったら大丈夫?」

奈岐「う、うぅ……」

口籠った奈岐の手を引き、岸の草むらへ誘う。

鼎「ね?奈岐? おいで」

言葉にこそしなかったけど、奈岐は小さく首を動かしてくれた。

岸に上がると、奈岐の身体を草の上に横たえる。

奈岐「ホントに……続き、するの?」

鼎「うん、する」

止められないんだよ、と内心で囁きながら、再び下腹部へ手を這わせていく。

向かい合っている状態なら、きっと私の考えが伝わる。

視線を自分の指先へ、奈岐の場所に向けながら訊ねてみた。

《ね、伝わってる? 言葉に出来ないような私の気持ち》

奈岐「はぁ……んっ……鼎……すごく、熱い気持ち……」

「でも、こんな時に……視るのは……っく……無理……」

それもそうか――と思いつつ、さっきの続きを再開していく。

指に伝わって溢れてくる奈岐の愛液は止まらずに、そのままお尻まで滴っている。

それぐらいに濡れてしまっているからか、くちゅくちゅっと粘液が絡まる淫靡な水音が響いた。

奈岐「やっ……ぁ……んっ、音……立てるの……ダメ……」

恥ずかしさに耐えきれないと、奈岐が目を閉じてしまう。

鼎「でも、こうしないと指が滑らないし」

奈岐「無理に……しなくても……んっ、あっ……はぁっ……」

鼎「こんなに奈岐のアソコが熱くなってるのに?」

奈岐「っ……ぅ……もう……意地悪なこと……言わない……で」

瞳を潤ませた奈岐の懇願に、ちょっとの罪悪感と、もっといじめてしまいたいという欲求がぶつかる。

なので、ここは公平に間を取ってみることにした。

「そ、それ……公平じゃ、ない……っ……」

鼎「てへっ」

抗議の声に微笑みながら、指の動きを再開させていく。

指の腹にまとわりつかせた愛液を突起に擦りつけ、円を描くようにして愛撫する。

奈岐「ひぁ……あっ、んっ……はぁっ……んんっ……!」

抵抗や抗議を諦めたのか、奈岐は私に身を委ねて、甘い吐息を漏らし続けた。

さっきよりも大きくなった陰核は、さらなる刺激を求めるように思えて、私は指の動きを加速させていく。

奈岐「っ……はぁっ、身体が……熱く……なって……ひあっ……!」

「んんっ、あっ……鼎……鼎っ……んうっ……あぁっ……」

鼎「奈岐の声、嬉しいよ」

出来るだけ意地悪にならないように気持ちを伝える。

私を受け入れてくれて、感じてくれている奈岐の様子が嬉しい。

奈岐「はぁ……あっ、あっ……そんな風に……思われると……もっと身体が熱くなって……ひっ……ぁ……」

「だ、だめ……視て……たら……我慢できない……ぃ……」

快楽に耐え切れず、びくんっと奈岐の身体が跳ねた。

行為だけじゃなくて、気持ちでも感じてくれていることは、もっと嬉しくて――どうしても最後まで奈岐を導きたくなる。

人にするなんて初めてだから、どうすれば最後まで行かせてあげられるか、少しだけ悩む。

自分に照らし合わせてみても、やっぱり一つぐらいしか方法が思い浮かばないので。

鼎「ね、奈岐、聞くのって……意地悪になる?」

奈岐「……っ……ぅ……」

肯定とも否定とも取れない吐息だけが漏れる。

鼎「このまま続けて……最後までいけそう?」

そこまで導いてあげたいという思いが問いを口にさせた。

奈岐「でも、うぅ……最後までが……分からないから……」

鼎「一人でそこまでしたこと……ない?」

奈岐「……うん」

頷いた奈岐を見てから、私は思い浮かんでいたことを告げる。

鼎「えっと、限界って思うところまで我慢してみて」

奈岐「限界……?」

鼎「そこから、もうちょっとだけ先に踏み出す感じで……」

自分の感覚を思い出してみるけれど、上手く言葉にならない。

限界の限界を超えた感じなんだけど……ううん?

奈岐「……限界の限界?」

奈岐の不安そうな視線が私を見つめている。

鼎「分かりそう……?」

奈岐「……続き、してみてくれたら……分かるかも」

鼎「うん、じゃあ……続き、するね」

指先が少し乾いていたので、再び愛液をすくい取りからめていく。

そして、充分な滑らかさを得た指の腹で陰核への愛撫を再開する。

間隔を置いてやってきた刺激に、奈岐が艶めかしい息を吐き出す。

奈岐「はぁっ、んっ……あっ……鼎の、指……また……んうっ……!」

「あっ、んあっ、あっ……熱い……身体が熱いよ……鼎……」

断続的な呼吸を繰り返す奈岐は唇を震わせて喘ぐ。

その様子を横目に私はさらに指の動きを加速させる。

奈岐「っく……ああぁっ! はぁ、んんっ! 鼎……もうっ……!」

奈岐が限界を訴えるけど、きっとその次の次ぐらいだから、と私は指の動きを止めない。

それどころか奈岐の意図に反して、さらに刺激を強めた。

僅かに力を籠めた指先で陰核を一気に擦りあげる。

「ひあっ、ああぁっ、ダメ、ダメ、鼎っ……ダメっ……!」

「くううぅっ、んっ、はぁっ、もう……ホントに……!」

身体中に走る快楽の刺激に奈岐の背が反り返っていく。

奈岐「はぁっ、はあぁっ、あっ、んっ、ああぁ……!」

きっとあと少し――その少しを後押しするように、私は濡れた手で陰核を摘み、最期の刺激を送る。

「っ……!? あ、ああぁっ! あああああああぁっ……!」

一際大きく奈岐の身体が跳ねた時、絶頂の声があがる。

奈岐「はぁ、あぁ……っ……ぁ……はぁ……んっ……!」

止まない絶頂の刺激が身体を駆け巡り、奈岐の身体が軽い痙攣を繰り返す。

荒い息づかいが続き、波が過ぎ去るまで、奈岐の瞳が虚ろに漂っていた。

「はぁっ……ふぅ……鼎……ホントに限界の限界……だった」

長い息を吐き出した後、奈岐が恨めしげに私に視線を向ける。

鼎「あはは、これで良かった……のかな?」

奈岐「そ、それは……その……途中で……終わるよりは……」

鼎「ふふっ――じゃあ、良かったってことだね」

奈岐「うぅ……鼎は……やっぱり意地悪だ」

奈岐の半目に微笑み、汗で額に張り付いた前髪を掻き分ける。

鼎「汗いっぱいかいちゃったから、もう一度水浴びしないとね」

奈岐「……次はもう背中を向けない」

鼎「あはは……でも、それはそれで嬉しいかも」

自分でも前向きと思える言葉にさすがの奈岐も苦笑してくれた。

「ふふっ、もう少しだけ横になってから行こ」

奈岐の手を取って、頬を寄せ合う。

奈岐「……うん」

そうして、初めて肌を重ねた時間が終わりを告げる。

いつかきっと――なんて思っていたけど、今の私達に必ず明日があるとは限らないから。

この温かな時間は、とても大切で、とても幸せだった。

それはどんなに時が流れても――。

それだけは――私の中では変わらない。”
脚本
⇒秘密の場所を教えてくれることも、親しさの顕われ

⇒見鬼に対する心構えが出来ている鼎は、ある意味で奈岐と対等だと言える

⇒見鬼は核心へと至る鍵としてだけでなく、
二人の関係を描くのにも応用されているのは見事 {
7-1 伏線(大)] (3-3-2 テキスト)

⇒身体より心が先行していて、甘い言葉にも偽りが無く、言行が一致している

⇒初々しく無垢な二人が、気遣い気遣われながら互いの想いと肌を重ねていく様を見ていると、この上ない安らぎを覚える
演技
演出 ⇒重要な場面を演出するには、その場面専用の曲が大事 (4-2 / 7-1 演出)

⇒思わず息を呑むような、奈岐の神秘的な雰囲気は、自然と光の中でこそ活きる
作画
⇒ここの髪を下ろした奈岐のなんという神々しさ。最早言葉はいらない、純粋な観照だけが全て。
胸の奥がただただ満たされていく。この奈岐を見ると、魂が浄化されていくのを感じる

⇒脚本と音楽と演技と作画が一つに溶け合っている
補足
⇒西村悠一氏(脚本)、TEL-O氏(原画)、なまる氏(塗り)、他スタッフの誰が欠けても、
これ程の場面を紡ぎだす事は出来ないだろう






8-2-1
8-2-2
状況
奈岐の部屋に戻ってきた二人。
鼎、昼に起きる。結果、授業はサボり。
破棄予定の書籍やノートを机に戻す奈岐。
奈岐、巫女を目指すことを告げる為、頼継の元へ。
鼎、末来と対話
奈岐、鼎の元に戻る。経緯を話す。
頼継に覚悟を伝え、星霊石の枷を外させたという。
巫女を目指し、因習を終わらせる決意を新たに。
互いの想いと決意の証として、口づけを交わす二人
時間
三十七日目・昼 ~ 夕
三十七日目・夜
場所
寮・奈岐の部屋 ~ 寮・廊下
寮前
設定
・諏訪家は、星霊石を加工する技術を受け継いでいる
・頼継が松籟会に属すことが出来る
理由の一つでもある
伏線(大)
伏線(小)
テキスト
T24-10, 変わる奈岐 / T25-5, 変わる鼎
T20-24, 奈岐への想い / T21-19, 鼎への想い

T23-7, 奈岐への信頼 / T27-2 鼎への信頼 /
T8-10, 神狼伝説

奈岐“「もう一度……理事長に会ってくる。
あの男に一言言っておく必要がある」”

鼎「理事長って……奈岐、大丈夫なの?」

奈岐の様子がおかしくなったのは、あの人と話してからだ。

どうしてもそれが不安になる。

奈岐「前向きな回答を伝えるだけど。 それ以外に話すことはない」

鼎「…………」

少し考えた後、私はベッドから飛び出す。

鼎「私も行くよ、ダメって言っても――」

奈岐が珍しく強い調子で私を静止させる。

奈岐「色んなものから逃げていた自分を終わらせたいんだ」

「そのために、巫女を目指すことをあの男に伝えたい」

それは私と一緒に、島で続く因習を終わらせるという意志――。

鼎「でも、一人で行く必要なんて……」

奈岐「鼎、その必要があるんだ」

立ちあがった私を奈岐が真剣な眼差しで見上げる。

奈岐「奈岐はずっと独りだった。でも、今は違う。
奈岐には鼎という存在がいてくれる」

「側にいなくても、鼎がいることを、
もう独りじゃないことを、あの男に示す必要があるんだ」

「同じモノと言われたあの男にだけは、示さないといけない」

強い言葉をもって、奈岐は私にそう訴えてきていた。

それでも……頭の中で様々な不安が過ぎる。

そんな私の気持ちを知ったのか、奈岐が私の手を取った。

奈岐「鼎、奈岐を信じてくれ」

鼎「……奈岐」

奈岐「同じ鬼と呼ばれたからこそ、示す必要があるんだ」

そう言った後、奈岐は何故か私に対して不敵な笑みを浮かべる。

その意味が分からず、まばたきを繰り返していると。

奈岐「奈岐は鬼ではない――と」

「穢れの禍根を断つ神狼の眷族だ」

バサッと音を立てて、奈岐が久々に狼のマントを羽織った。

鼎「奈岐……」

そんな奈岐らしい言葉と姿を見て、不安感がやわらいでしまった。
自分に思わず吹き出してしまう。

「あはは、そうだったね。 うん、そんな奈岐なら大丈夫か」

奈岐「ああ――礼を言う、鼎」

そして奈岐はフードを被り、私に背中を向ける。

「夜には戻る。 その時に詳しく話す」

鼎「うん、待ってる」

お互いに頷き合うと、奈岐はマントを翻して部屋を出て行く。

その後ろ姿を見送った後、
私は机にあるノートの山へ視線を移す。

鼎「そうだよね、奈岐は鬼なんかじゃなくて――神狼様だったね」

破かれたノートは全てテープで繋ぎ止められ、修繕されていて、
いつものマル秘が大きく目立っていた。

それが積み重ねてきた逃避から、
因習と戦うための武器に変わった証にも見える。

ふと、この地に住んでいたと伝えられる神狼の話を思い出す。

魔を祓い、人々を災いから救ったといわれる存在――。

奈岐の見立ては間違ってなかったのかもしれない。

これから私と奈岐は神狼様と同じことを……
贄を差し出す因習を終わらせないといけないから。

鼎「…………でも」

でも、あの伝承の最後って確か……。

ううんと頭に浮かんだ考えを振り払い、着替えを探す。”

T25-6, 変わる鼎 / T1-31, 鼎の強い意志、母への想い
T10-8, 親子関係 / f3-10, 末来と鼎の関係
T2-4, 鼎の意志を尊重 / T7-6, 天然な末来

“私は手すりに寄りかかりながら、ある人の帰りを待っていた。

ケジメをつけると言った奈岐にならって……
というわけじゃないけど、私もあの人と話しておかないといけない。

学生達の姿を見送りながら、帰りを待ち続け――
ようやくロビーに現れた顔に、私は気を引き締める。

鼎「末来さんっ!」

三階から届くかどうか分からないけど、声を上げて手を振るった。

末来「――――」

ロビーに入ってきたばかりの末来さんが顔をあげ、
僅かに驚いたような表情を見せる。

でも、すぐにいつもの優しい微笑みを浮かべて、
そっちに行く、と唇の動きで伝えてくれた。

そして、末来さんが部屋の前までやってきてくれる。

その顔を見るや否や、私は頭を下げていた。

鼎「ごめんなさいっ!」

末来「……鼎?」

鼎「私、感情的になって……何も考えず、
末来さんとお母さんに酷いことを言いました」

末来「鼎……そんなことない。鼎の気持ちを無視したのは、
ボク達の方だよ。謝るのはボクだよ」

鼎「でも、末来さんとお母さんは私を守ろうとしてくれました。
そんな気持ちを無下にしちゃいけないと思います」

「だから、ごめんなさいっ」

末来「鼎……」

もう一度、頭を下げた私の髪を末来さんの手が撫でていた。

「ふふっ、鼎には悪い口癖があるね」

鼎「口癖……?」

末来「よく自分に『しないといけない』って言い聞かせている」

鼎「…………」

意識したことは無かったけど、今さっき自分が
口にしていたことぐらいは分かる。

末来「きっと……未来がいなくなってから、自分に言い聞かせて、
我慢ばかりすることが多かったんだね」

「鼎、謝るボク達の方だよ」

鼎「そんなこと……ないです。 それに謝らないで下さい」

顔を上げて、末来さんの優しげな双眸――
お母さんと瓜二つな顔を真っ直ぐに見つめる。

そして、伝えたかった言葉をしっかりと紡ぐ。

「私は自分の意志を貫くため、巫女になろうと決めました。
この島の呪縛を断ち切りたくて、巫女になるんです」

鼎「それがお母さんと末来さんが望んだ形のものになるかは、
分かりません――でも、必ず終わらせてみせます」

「だから、全部終わってから……その言葉を聞かせて下さい」

ちゃんと伝えきるつもりだったのに、どうしてか胸が痛んで、
視線がつま先へ落ちていってしまう。

「でないと、末来さんやお母さんに甘えてしまいそうで怖いです。
自分の意志でちゃんと戦わないといけないのに……」

そっと末来さんの手が私の頬に触れる。

末来「鼎、また『いけない』って自分を縛っている」

鼎「……でも」

末来「うん、分かってるよ。全部終わってから、だね」

「未来もボクも鼎に謝って、いっぱい甘えてもらわないとね」

鼎「末来さん……」

末来さんの手が頬から離れ、
代わりにクスッと微笑みを浮かべた。

末来「それとも――鼎がいっぱい甘える相手は、
もう奈岐だけになってしまった?」

そんなことを言われて、思わず吹き出してしまいそうになる。

鼎「……末来さんは何でもお見通しですね。 でも、その甘えると
お母さんに甘えるのは、少し違いますから」

末来「ふふっ、それは嬉しいね。 楽しみにしてるよ」

優しげに微笑む末来さんの姿はやっぱりお母さんと重なっていく。

「鼎、ボクの道標はきっとここまで。 あとは自分の意志を信じて、
鼎は鼎の道を行くんだ」

鼎「……はい、ありがとうございます」

頷いた私を見た後、末来さんがゆっくりと踵を返す。

末来「全部終わったら――未来と一緒に、三人でもっと話そう」

鼎「そうですね、いっぱい言いたいことはありますから」

末来「ふふっ、楽しみにしてる。 それじゃあ」

末来さんが廊下を歩き出していく。

私はその背中を見送りながら、静かに息を吐いていった。

私の意志はきっと末来さんに伝わったと思う。

あとは進むだけ――真っ直ぐ進むだけなんだ。”

T24-11, 変わる奈岐 / T20-25, 奈岐への想い
T21-20, 鼎への想い / T26-2, 奈岐の真意

“奈岐の様子を見る限り、いつものように
落ち着いていて、特に問題は
起きなかったのだろうと安心する。

ただあまり口を開こうとしなかった
ことだけが気がかりだった。

森の中、立ち止まった奈岐が空を見上げる。

月を眺めるどこか儚げな横顔。
その唇は微笑みをかたどっていた。

奈岐「困ったことに……あの男に称賛されてしまった」

鼎「えっ?」

奈岐から聞こえた意外な一言に耳を疑う。

奈岐「覚悟を伝えて、揺さぶるつもりだったけれど……
手のひらの上だったのか、動揺すらしなかった」

「代わりに、あの男は思考で……こう伝えてきた」

頼継「高遠鼎を信じて動いた
キミに賛辞を呈するよ――その覚悟を昔の僕は
持つことが出来なかった」

「この島で鬼と呼ばれる力は……
関わる人を不幸にする。 それを知ってなお、
誰かに想ってもらえるのは幸せだ」

「今の僕には、僕を信じて一緒に戦ってくれる
人がいる。 それはとてもうれしいことだ――
キミもそうだろう?」

「鬼子は、僕達は、孤独であることを強いられてきた」

「だけど、独りじゃなくなった時――
初めて自分の成すべきことが見えるんだ」

「これで、ようやく同じ舞台に立てたね。
キミの本気を楽しみにしているよ、向山奈岐」

奈岐「もちろん、その言葉の全てを
鵜呑みにするつもりは無い」

「ただ……あの男も孤独を知っていたことに安堵した」

「そして、あの男もまた孤独を脱していたことに
納得した」

「味方になるのか敵になるのか、それは分からない
けど……ようやく一つ壁を乗り越えられた気がする」

「今……少しだけ気分がいい」

フッと微笑み、奈岐が目を細める。

同じ鬼子として島に生まれたからこそ、
伝えられる言葉――私にはそう聞こえた。

立場も違えば、性別も違い、思い人も違う。

だからこその言葉なのかもしれない。でも一つだけ

鼎「成すべきことって、それは奈岐にも見えたの?」

奈岐「――そうだな、見えた」

そう呟いた奈岐の双眸が私を捉える。

「前にあの男に言われた。
奈岐は鼎をただ利用しているだけ、と」

「……正直に答える。 図星だった」

静かに奈岐が目を伏せた。そして唇が次の言葉を紡ぐ。

「鼎は私の独りを奪ってくれた。
そんなことは初めてだった。とても嬉しかった。
だからこそ、失いたくなかった」

「無意識にそうしていた自分に気付かされた。
足をすくわれた気がした。 目の前が真っ暗になった」

「そうして、自暴自棄になった」

閉じられていた奈岐の目が開き、再び私をみつめる。

「でも、奈岐は救われた」

「鼎がとんでもない無茶をして、気付かせてくれたから」

鼎「…………」

無我夢中だったけど、奈岐のことを信じて、
私は崖から飛んだ。

それが結果的に自分だけじゃなくて、
奈岐の心も救ってくれた。

奈岐「鼎、質問に答える――
奈岐の成すべきことが見えた」

「伝承の神狼がそうしたように、この命を賭してでも、
鼎の決意に従い、災厄の元を絶つ」

「これがその証にもなる」

月明かりに反射する星霊石が、
何故かいつもと違って見えた。

「理事長――諏訪頼継の家系は、
この霊石を加工する技術を受け継いできている」

「あの男が松籟会に属すことが出来ているのも、
その技術が理由の一つとして考えられる」

鼎「奈岐、星霊石に何かしたの……?」

言い様の無い不安感に苛まれ、奈岐に問いかける。

奈岐「人の巫女に扱える力、という枷を外してもらった」

鼎「えっ……それってどういう?」

奈岐「力を使うことは意識し、イメージすることと似て
いる。奈岐はそれを人より数倍も速く行うことが出来る」

「鬼子である理事長もそれがどの程度のものかを
知っている。だから、限界まで枷を外してもらった」

「鬼子が鬼子のために霊石を打った――
おそらく、この島の歴史上初のことになるだろう」

鼎「だから、奈岐の持った石がいつもと違って見えた。」

納得は出来たけど……でも。

鼎「その力、大丈夫なんだよね?」

奈岐「その証明は、明日からの茶番で見せるつもりだ」

「松籟会、そして学園の人間に――神狼の力を
見せてやろう。 そして奈岐の成すべきことを成す」

奈岐が不敵に微笑み、星霊石を胸元に戻す。
そして再び目を伏せる。

「明日を迎える前に……鼎に一つ、頼みたい」

鼎「……?」

奈岐「こっちへ来て」

奈岐の呼ぶ声に誘われ、側に歩み寄っていく。

「想いが確かなら……その証が欲しいというのは
わがままか?」

頬をうっすらと赤く染めた奈岐を見て、
その言葉の意味に気付く。

だからだろうか、自然と私の口元に笑みが零れていた。

鼎「あはは、順番が逆だったかもしれないね」

奈岐「……それもそうだ」

苦笑した後、奈岐が目を閉じる。

そして、私は彼女の肩に手をかけ、
少しだけ腰をかがめて――。

奈岐「んっ……」

そっと唇を重ね合せる。

ただそれだけの行為でも早まる鼓動が止まらない。

相手を想うこと、好きでいること、愛するということ。

誓いの口づけ、また一つ約束を交わした口づけ。

そして、二人で歩み、決意を貫くという証――。

奈岐「……んっ」

僅かな吐息に促されるように、うっすらと目を開く。

すると、目前で奈岐の瞳が僅かに揺れていた。

何か言葉をかけようとして、顔を動かそうとすると、
彼女の手がぎゅっと私の服を握る。

ああ、そっか――
私から想いを伝えるのは簡単なことだ。

彼女が見てくれているなら、
伝えたい想いを形作ればいい。

《奈岐――大好きだよ》

秘密の言葉のように頭の中で繰り返して。

目を閉じると、ついばむようにして奈岐の唇を吸った。

これからは想いを交わした証を胸に歩み出す。

名残惜しげに唇が離れる瞬間まで、
私は奈岐のことを想い続けた。

その全てが彼女に届くことを祈って――。”
脚本
5-1での頑なな鼎と、ここでの奈岐の決意が重なる。
立場が逆転しているということ

⇒二人の同棲生活もすっかり馴染んできた感がある
演技
演出
作画
補足

 


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